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■第6回サッポロ未来展 (3月24日まで)

2007年03月24日 00時01分50秒 | 展覧会の紹介-複数ジャンル
 40歳以下の、道内在住もしくは、首都圏在住で道内ゆかりの美術家による大規模なグループ展。
 2002年の第1回以降、展覧会の内容の面で、着実に進歩・改善を進めていると思います。

 今回は、金沢方面から招待作家4人を迎え、活性化を図っています。
 展覧会の初日の前日には、道立近代美術館でパネルディスカッションもひらいたそうです。
 さらに、はじめて北海道新聞社が主催に名を連ねました。

 このような一連の動きを、前市立小樽美術館長で美術評論家の吉田豪介さんは、図録に寄せた一文の中で「さらに攻勢に転じた」と形容しています。
 ちなみに、この「未来へ-いいスタートが切れた」と題された文章は、じつによくまとまったもので(といまさら筆者ごときが言うのもなんなんですけど)、「過不足なく」とか「簡にして要を得た」ということばは、かような文章にこそふさわしいのではないかと思いました。

 というわけなので、この文章に、筆者がなにかを付け加えるものもないぐらいなのですが、よかった作品について手短に紹介しておきましょう。

 冒頭の画像で、いちばん目立っているのは、堀一浩さん(金沢)「引力」です。100号を3枚連ねてあり、迫力十分です。
 人間の、おどろおどろしいデフォルメは、独立美術に特徴的な画風といえるかもしれません。
 顔の表情から、キング・クリムゾンのアルバムジャケットを思い出してしまいました。
 奥の壁に、谷地元麗子さん(江別)の「泡々」が見えます。裸婦1人と猫17匹のあでやかな共演です。
 そうか、谷地元さんは、「北の日本画展」を休んでこちらにかけましたね。
 手前の彫刻は、佐藤正和さんの作品です。ユーモアが持ち味ではないでしょうか。

         
 サッポロ美術展の代表をつとめる波田浩司さん(独立展会友、全道展会友)の「羽の舞う日」です。
 ことしはVOCA展にも選抜され、出品しています。
 某紙には「飛躍が見られない」などと書かれていましたが、まあ、大きなお世話でしょう。良い絵だと思います。人物の体勢もすこしずつ変化しているようです。なにより、背景の白い都市から、札幌を連想させる要素が皆無になったことは、この連作の始まったころとくらべ、きわだった変化でしょう。

         
 こちらも金沢組で、大泉佳広さんの作品。
 形状それ自体に、力がみなぎっています。
 右の「KAZENOSHOUCHI」は、ブロッコリーのような木を積んだトラックが、竜巻の手前の踏切で止まっているというのが、なんとなくおもしろいです。
 図録のプロフィルには「独立美術協会準会員」とあるのですが、そんな肩書がいつからできたのか、筆者は知りませんでした。

         
 佐藤仁敬さんは人物を描いたら剛速球ど真ん中のたいへんな実力派なのですが、今回はがらりと画風が変わり、とても今ふうの軽いタッチになりました。
 まあ、今回も、やっぱりたいへんウマイ絵なのですが。
 佐藤さんは独立展の会友。
 招待作家4人のうち3人が独立(あとの1人の北本さんが国展準会員)のせいか、独立展関係者がめだつ展覧会になっています。 

            
 これは、渡辺元佳さんのつくったチンパンジーの彫刻です。
 
 3階は、なんといってもG室のどんづまりにある青木美歌さんのガラス作品がすばらしいです。
 ライティングもうまいのですが、造形それ自体もすてきです。
 じつは、この会場に来る前に、道立近代美術館で日本のガラスアート展を見て、現代ガラス芸術は、「繊細」とか「透明」といったいかにもガラスらしい特徴から逸脱しようとする動きが全体的にとても強いように感じたのですが、青木さんは、反対に、「繊細」「透明」といった「ガラスらしさ」をあくまで追求しているように思えました。
 これは、ネタバレになるとつまらないので、会期が終わるまで、写真は出しません。ぜひ、会場に足を運んでもらいたいと思います。


(会期が終わったので写真をアップしました)

 出品作は次のとおり。かっこ内は生年、出身地、現在の順
久津間律子(73年・江別)「刻刻」
菊地博江 (84年・小樽→多摩美大在籍)「あいまい」「ゆらぐ」
藤井康子 (81年・稚内→東京学芸大大学院)「Pass Wind」「Eternal Time」
渡辺和弘 (75年・札幌、札教大卒)「月光の跡」「翠凛」
北本真隆 (78年・石川県→金沢美術工芸大大学院在籍)「A human being」(同題2点)「Face」
京岡英樹 (73年・奈良県→金沢美術工芸大大学院→金沢)「君ノ命ハ僕達ノ命」「私達ハ生キル 私達ハ殖エル」
波田浩司 (71年・江別→札教大→札幌)「羽の舞う日」(同題2点)
大泉佳広 (73年・三重→金沢美術工芸大大学院在籍)「TATSUMAKI」「KAZENOSOUCHI」

谷地元麗子(80年・江別、札教大卒)「泡沫(うたかた)」「泡々」
佐藤正和 (73年・函館→東京藝大→茨城県取手市)「ふんころがしの燈籠」「Goliathus cosics」
長屋麻衣子(83年・網走管内斜里町→多摩美大在籍)「わらべうた」
佐藤仁敬 (80年・滝川→金沢美術工芸大→札幌)「innocence」
水野智吉 (69年・函館→上越教育大→小樽)「裸婦」
堀一浩  (69年・富山県→金沢美術工芸大大学院→金城大短大助教授)「引力」
佐直麻里子(87年・函館→金沢美術工芸大在籍)
宮地明人 (77年・岩見沢→武蔵野美大在籍)「off」

戸山麻子 (67年・東京→札幌)「音が聞こえますか? I」「音が聞こえますか? II」
明円光  (85年・滝川→武蔵野美大在籍)「untitled」
平野可奈子(85年・後志管内倶知安町→多摩美大在籍)「鼓動」「やすらぎ」「生」「天と地を結ぶ一つ目」
三浦卓也 (78年・函館→多摩美大→スペイン→東京)「La Casa」「Dos Puertas」

齋藤麗  (78年・日高管内浦河町→多摩美大→同大講師)「untitled」「dots」「週刊少年ジャンプ3月19日号」「月刊コロコロコミック3月号」「りぼん4月号」
秋元美穂 (83年・函館)「POHAKU I」「POHAKU II」「POHAKU III」
こうの紫 (81年・札幌→女子美大→東京)「生の音色」
稲實愛子 (85年・札幌→多摩美大在籍)「海底」「誘幻」「息吹」
小林愛美 (84年・釧路→女子美大在籍)「Nobody knows」「濁音」
田中怜文 (78年・旭川→東京)「正午」
片山実季 (84年・苫小牧→女子美大在籍)「祈り」「野島岬灯台」
河野健  (73年・同→札幌)「motherleaf」
西山直樹 (81年・上川管内東神楽町→京都造形芸術大在籍)「記憶 ~触り~」
宮澤佑輔 (85年・札幌→多摩美大在籍)「once again」「Survival game」
村山之都 (69年・旭川→武蔵野美大助手)「サウスイースト」
竹居田圭子(71年・東京→札教大→空知管内南幌町)「この場所で生きていくということ」
高村葉子 (83年・士別→武蔵野美大在籍)「place」「通過」

渡辺元佳 (81年・伊達→武蔵野美大→東京)「chimp」
風間真悟 (79年・上川管内東川町→武蔵野美大大学院在籍)「Blue sky Project」
青木美歌 (81年・東京→札幌)「間に」


3月19日(月)-24日(土)10:00-18:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

第5回
第3回
第2回
第1回

06年の佐藤仁敬個展
(以上、画像なし)


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3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (SH)
2007-03-24 00:29:07
ヤナイさん、こんばんは。

いろいろ興味深い作品がありましたが、青木美歌さんのガラス作品は本当に素晴らしかったのではないでしょうか。
展示室の一番奥の、さらに暗幕の奥にありましたが、まさかあれを見ないで帰る人のいないことを願っています。
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生態的連鎖・・ (パセリ)
2007-03-24 08:20:46
堀一浩さんの『引力』。
たしかに迫力ありました。
喰ったり喰われたり、そしてお互い依存している。
つい、地球上の生き物世界のことを連想してしまいました。
横長の大作、壁画のようですね。
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Unknown (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2007-03-25 11:31:31
青木さんの作品の写真、アップしました。

テーブルの下側にも、植物の根のようにガラスが垂れ下がっていて、床にも、しずくみたいにこぼれ落ちていましたね。
とても繊細なんだけど、手工芸的、お稽古事的な細かさとはぜんぜん違うのが、すごいです。
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