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SCAN DO SCAN ギャラリートーク(3) 伊藤隆介

2007年11月03日 21時30分50秒 | 展覧会の紹介-現代美術
(ギャラリートークのつづき。司会は札幌芸術の森美術館学芸員の吉崎元章さん=以下Y=です) 

 Y「まず、会場入り口にある『版』シリーズについて聞かせてください」

 伊藤=以下I=「よく、難解だといわれます。僕らは映画館で映画を見て、おなじものをDVDでも見る。それはおなじ映画だけど、物体としては違う。違う例だと、僕らはモナリザを見たことがないとしても、それ(の図像)は知っている。映画でも絵画でも、その物が映画であり絵画なのか、それとも描かれているものが大切なのか…。そういう問題意識から、フィルムによるコラージュを作って平面にしています。また、その横でながしているチャカチャカした映像は、フィルムの上にコラージュを重ねて感光させています。密着焼きといわれるものです」

 Y「2階の3点は、フィルムへのオマージュを込めているのかな、という気がします。一つめは『現象としての映像』シリーズというか、レコードプレイヤーや馬のフィギュアがあって、映像があって…」

 I「映像とは光を使った作品なんです。ただ、モニターの前で影絵をやるより、ストーリーがあったほうが面白いだろうと言うことで、いろいろやっているにすぎない。ただ、実は人間がいなくても映像ってあるんですよ。虹、しんきろうなどです。だから、子どもがおもちゃをいろいろいたずらしているうちに、偶然映画が発見される可能性はあるだろうと考えたんです。ただ、ぱらぱらマンガは偶然発明できても、DVDやデジタルカメラを発見することって絶対できないですよね」

 Y「回っているものはシャッターの役割を果たしているんですね。馬の絵だし、マイブリッジの連続写真が意識されているようです」

 I「そのマイブリッジは隠し味みたいなものです」

 Y「あと、おもちゃの列車が走ってましたよね。線路の周りをフィルムが取り囲んで、列車に乗せたカメラが撮った映像が、壁に大きく映し出されていて…。作品のタイトルは『列車の到着』です」

 I「映画を発明したリュミエール兄弟のことをふまえています。『列車の到着』は最初の映画で、それを見た人は驚いてスクリーンの前から逃げたと伝えられています。ぼくの中では、映画の中身はこれからも生きていくけれど、フィルムはそもそももうほとんど作っていないですから。フィルムや写真や透かすなどすれば見ることができますが、DVDやデジカメはそのものを見ても見ることはできない。映写機自体はなくなっていくだろうけど、物としての映像を生き返らせることはできないか、という思いがあったんです。線路を取り囲んでいるフィルムは昭和30ー40年代の野球の中継です。ジャイアンツ戦みたいですね」

 Y「日用品を組み合わせて実際に映写機を作っているのがおもしろい」

 I「先人の撮った物が大量に残っているんです。ほとんど二束三文、産業廃棄物なんですが、骨董屋に行くと8ミリフィルムがあったりする。昭和20年代の家族の様子とか、七五三の晴れ着を着たシーンとか…。それらは、わざわざ(デジタル化して)残していくようなもんじゃない。だから、いずれ見られなくなる。そのとき、映写機のためのギアも残らないでしょうから、家庭でむりやり作り出すだろう、と」

 Y「年代設定は」

 I「見てないんだけど、たしかキムタクが出ている映画があるんですよ。それに出てくる年号です」

(以下、別項につづきます)


07年10月16日(火)-12月16日(日)11:00-19:00、月曜休み
札幌宮の森美術館(中央区宮の森2の11-2-1) http://miyanomori-art.jp/

一般300円、高大生200円、中学生以下無料


FIX! MIX! MAX! 現代アートのフロントライン(06年11月)
06年の個展(札幌芸術の森美術館)
Interaction ドイツ展帰国展(06年1月)
04年の個展「Japanese Style」
伊藤隆介映像個展(03年)
伊藤隆介展(03年)
ビデオレター sapporo映像短信(03年)
アジアプリントアドベンチャー2003
ぼくらのヒーロー&ヒロイン展(02年)
northern elements (02年)
札幌の美術2002


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