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■楢原武正展 大地/開墾(2月4日で終了)

2007年02月08日 00時45分17秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 筆者が楢原さんの個展を最初に見たのは1996年か97年のこと。
 会場に運び込まれたモノの量にまず圧倒された。
 そして、それらのモノがすべて、釘を並べて打ったり、針金をぐるぐると巻きつけたりといった、作者の行為の痕跡が刻印されたものであることに、また驚愕した。 
 つまり、筆者が楢原さんのインスタレーションから受ける感動というのは、つづめていえば
1.物量から受ける感動
2.日々の行為のたゆみない集積から受ける感動
の二つだったのだ。

 今回の個展を見て
「ああ、楢原さんにとっての、ひとつの時代が終わったな」
という感慨を抱いた。
 会場には、1.の感動につながる要素、つまり、床にうず高く積み上げられたモノの集積が、なかったのだ。
 そのかわり、くぎがびっしり打たれた柱13本が規則的に壁に立てかけられてならび、廃材や針金などを丸めた球体11個が、宇宙の模型のように、床にころがっていた。
 とくにくぎがみっしりと表面に埋め込まれた柱がすごい。いったい何千本のさびついたくぎが附着しているのだろう。

 物量で勝負する時代(年代)が終わり、楢原芸術は、「かたち」への指向を、とりもどし始めた。日々の行為は、きちんとした形態に収斂しはじめたのだ。

 若々しい楢原さんも60代なかば。
 そろそろ物量に頼るかたちでの展示はむつかしくなってきていたのでは、と思う。そして、これまでの何十年の積み重ねを、なんらかの「かたち」に仕上げて、まとめてみたくなってきたのではないかと推察するのだ。
 それは、むりのないことだろう。

 その裏返しといってもいいかもしれないが、壁に掛けられた大小の作品(タブロー、というのは、そぐわないかもしれないが)は、なんと46点もあった。
 初期の絵画を展示した個展を別にして、これほど壁掛け型の作品が多かった展覧会は、記憶にない。

 筆者は写真でしか知らないが、1980-90年代には、球体の立体などを制作していたようだ。
 ということは、楢原さんもかつての作風に回帰しつつある、ということなのかもしれない。

2006年の「北の彫刻展」
■2006年の個展
■04年の個展(画像なし、以下同じ)
■03年の北海道立体表現展
■02年のグループ展「安堵感」
■01年の個展

1月30日(火)-2月4日(日)10:00-19:00(最終日-16:00)
ギャラリー大通美術館(中央区大通西5、大五ビル 地図B


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