北海道美術ネット別館

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■油展2007 (12月23日まで)

2007年12月22日 23時10分22秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 道教大で油彩を学ぶ学生・大学院生による、毎年恒例の「油展(ゆてん)」。
 正式名称は
油展2007 北海道教育大学札幌校芸術文化課程美術コース油彩研究室・岩見沢校芸術課程美術コース油彩第一研究室展です。
 学生の展覧会ではありますが、意欲的で、絵画とは何かを考えさせるような作品が多く、毎年たのしみにしています。
 いまは、道教大の芸術課程が札幌から岩見沢に移転する途中の時期にあたっており、2カ所のキャンバスの学生による展覧会は、準備などいろいろたいへんだったと思います。おつかれさまです。

 笠見康大(院2年)「つぶれる風景」
 笠見さんはここ数年、強い光を見たあとに網膜の裏に見える図形のようなかたちを、ピンクと青で表現した絵を制作しています。印象に刻まれる抽象画です。

 松尾道行(同)「supersaturation」
 筆者は以前の、マンガみたいな作品が好きでした。最近は雲や空をモティーフにしていますが、手慣れてくるにつれて、「不定のものを描く」という初発の衝動みたいなものが、見る人に伝わりにくくなっているような気がしないでもありません。

 西田卓司(院1年)「Old Glory」
 以前、ご本人に
「西田さんの絵を見ると思い出すのはジャスパー・ジョーンズとかラウシェンバーグだ」
と話したら、好きなのはウォーホルとかポップアート、大竹伸朗…という答えが返ってきたのですが、今回のを見ると
「やっぱりジャスパー・ジョーンズじゃん」
といいたくなりますね。
 カラーテープを切り貼りして制作したとおぼしき、巨大な米国旗が床に置いてあります。テープというところがミソで、ジャスパー・ジョーンズの作品にみられる筆跡はとうぜんありません。ここらへんをどう解釈したらよいか…。

 つづいて4年生。

 鵜沼範考「S×D×R」
 道展にはわりと写実的な絵を出している鵜沼さんですが、今回は、コンパネを人間のかたちに切り抜いた平面3点を出品しています。つまり、3人のシルエット(輪郭)が、壁に貼ってあるというわけで、それぞれの顔や衣服などは描かれず、かわりに抽象的な線や色斑が全面を覆っています。
 右端の人物はどうやらギターを持っているようなので、この3人はロックバンドかなにかでしょう。そうすると題は「sex,drag,rock'n roll」の頭文字ですね。

 坂本健一「口論を観る」
 昨年の7月展や、ことし2月にコンチネンタルギャラリーでひらかれたグループ展「曇天模様」では、表情のない人物群像を出品していた坂本さん。今回の作品は、秋の郊外の住宅地とおぼしき街路で、1台の乗用車を10人ほどの若者が取り囲んでいるという図柄で、いくらか色合いが豊かになりました。
 そのうちひとりはケータイで写真を撮っています。接触事故かなにかの現場なのでしょうか。ケータイにくわえ、人物の表情に精気がいちじるしくとぼしいのも、非常に現代的だと思います。とてもユニークな具象画の描き手だといえるでしょう。

 玉川桜「ながい散歩」「すーぱーうちゅう」
 玉川さんも「曇天模様」の出品者。あえて子どもの絵に退行したかのような絵柄に、テクニック至上の一部の現代絵画に対する批評性を感じました。うまい人です。

 3年生では、先だっての「FIX! MIX! MAX! アワード」でも渋い抽象画で入選をはたした中里麻沙子さんが、おなじく茶系をメーンにした「生まれた日の風景」を出品しています。
 こういう題がつくと、まだ統合された視覚を持たない赤ん坊が初めて見た木のような、初々しい世界のように思えてきます。
 村山聡さん「無題」は、素材に「パネル、綿布、岩彩」とあります。日本画の絵の具をにじませて描いた風景画です。美しい一方でモティーフによってはやや手工芸的な印象を与えかねない手法ですが、都市の川を中心にした風景は、現代写真のようなリアリティを感じさせます。 


07年12月18日(火)-23日(日)10:00-18:00(最終日-17:00)
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下1階 地図C)

05年


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