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小樽芸術村グランドオープン。似鳥美術館は国内外近代の名画・木彫を多数展示

2017年09月10日 11時20分23秒 | 情報・おしらせ
 予告したとおり「小樽芸術村」が2017年9月1日、3館体制で正式にオープンしました。

 昨年7月、一足さきに開館したステンドグラス館については、開館直後にリポートの記事を書きました。おかげさまで1年たったいまも多くのアクセスを集めています(gooブログの「芸術」カテゴリで、ほぼ毎日5位以内に入っています)。

 今年8月1日に、旧三井銀行小樽支店が再整備され、1927年(昭和2年)建築当時の貴重な姿を復元しました。
 そして今月、旧拓銀小樽支店が「似鳥美術館」としてオープンしたのです。



1) 旧三井銀行小樽支店は建築クラスタ必見

 旧三井銀行小樽支店の外観です。

 小樽は明治末から昭和初期にかけて北海道経済の中心として栄えました。
 各銀行が頑丈な支店を建設しました。
 戦時経済の進行とともに北海道経済の中心は小樽から札幌に移り、その結果、銀行の支店も札幌へと移っていきました。

 三井銀行は、都銀では最後まで粘りましたが、2000年に撤退しました。
 筆者は「さくら銀行小樽支店」として営業していた当時、前を通った記憶があります。向かって右側に、ATMコーナーが、建物とは別にありました(もちろん現存しない)。

 建物は、昭和初期の銀行建築の豪華さがよくわかります。

 最初は、美術館にしようという構想もあったのに、建物自体がすばらしいので、それを見せようという方針になったのも、理解できます。
 建築クラスタは必見でしょう。
 家具やカーテンなどもオーダーメイドというから驚きです。
 建設がもう少し遅かったら、金融恐慌の影響で、ここまで堅牢かつ立派な建物にはならなかったのではないでしょうか。

 蛍光灯などは取り外し、止まったままだった時計は地元小樽の職人が修繕して、息を吹き返しました。


 2階の会議室です。
 こんなところで会議を開いたら、気分あがるだろうなあ。モノクロのハリウッド映画に出てきそうだなあ。

 地下には貸金庫もありました。
 結露を防ぐために、金庫のまわりを回廊が取り囲んでいる構造が面白い。

 ここは絵画などは飾っていませんが(ただ、当時の錦絵が1点残っていた)、プロジェクションマッピングを天井に定期的に流しているようです。
 天井の模様を生かした、美しい展開です。
(画像は下のほう)


2) 似鳥美術館は近代美術の大物がそろう

 旧三井銀行の東隣(札幌寄り)にあるのが似鳥美術館です。
 冒頭画像が外観です。
 他の2施設と異なり、ここは撮影禁止です。

 1階でチケットを購入し、エレベーターで4階まで昇ります。そこから3階、2階、地下の順路に沿って、見ていきます。
 東京都美術館など、東京では多いパターンですね。



 4階は近代の日本画。
 加山又造が4点もあります。ほか、横山大観による「冨士」(1920年)、富岡鉄斎、下村観山、片岡球子、美人画の上村松園や伊東深水、鏑木清方、村上華岳、古典に材を得た小林古径、川端龍子、戦後に活躍した高山辰雄や平山郁夫と、そうそうたる顔ぶれです。
 片岡球子は「天人峡」など5点。

 個人的にうれしかったのは川合玉堂が3点あったこと。
 「緑陰水車」「雪響」「鵜飼」で、いずれも小さく描かれている人物が、風景とちょうどよく調和していて、旧来の絵空事の山水画とは違う境地で、見ていて心があらわれるようです。
 もうひとつは東山魁夷。
「明け行く山湖」「爽明」など、青や緑の諧調が深く美しいです。


 3階は岸田劉生をはじめとする洋画。
 こちらも黒田清輝、岡田三郎助、梅原龍三郎、荻須高徳、小磯良平、中川一政、柳原義達(これは彫刻)と豪華メンバー。
 フランス陣営はルノワール(ただしサムホール並みの小品)、ユトリロ、ヴラマンク、ビュッフェ。

 ほか図録にはありませんが、藤田嗣治、山下清、絹谷幸二も並んでいました。とくに山下清は7点で、最多です。


 2階は吹き抜けがあるため、展示室は小さめです。
 先日、三岸好太郎美術館に展示された「二菩薩釈迦十大弟子」など棟方志功コーナーと、高村光雲などの木彫コーナー。
 後者が、今回見た中で、個人的にはいちばん感動しました。
 「聖観世音菩薩像」「木彫魚藍観世音」など、衣服のドレープも、人体のこなしも実にスムーズで調和がとれています。
 元の金庫室のような奥まった部屋にありますので、見逃さないでほしいと思います。

 地下は、以前「アール・ヌーヴォー館」にあった、ドームやガレなどのガラスを移設してきました。
 100点をはるかに超える器や明かりなどが並んで、これも見事な眺めです。





 最後、ステンドグラス館を再訪しました。
 燭台など付け加わったものもあるようですが、基本的には昨年見たときと変わっていません。



3) アクセスや入場料

 入場料は
3館共通 一般1900円、学生1400円
似鳥美術館 一般1300円、学生千円
ステンドグラス美術館 一般700円、学生500円
旧三井銀行小樽支店 一般700円、学生500円
※中学生以下無料 ※ミュージアムショップは入場無料 ※障害者手帳をお持ちの方とその介護者1人 無料

 つまり、ふたつ見るなら、3館共通券を買ったほうがお得です。

 音声ガイドは無料。
 似鳥美術館の図録は千円(税込み)と安いです。
 テキストの大半を道立近代美術館の学芸員が執筆しています。

 ミュージアムショップが充実しているのも特色として挙げられます。
 以前、アール・ヌーヴォー館だった部屋はまるごと物販コーナーになっていました。
 似鳥美術館はオリジナルのガラスの置物(タコがかわいい)も多く、それ以外にニトリのグラスもたくさん並んでいます。こちらはニトリなので400円ぐらいとか、やたらと安いです。
 欲をいえば、似鳥美術館の図録は、他の2施設には置いていないのが残念。スペースは十分なので、図録などは共通して置いてほしいと思います。

 気になる駐車場ですが、似鳥美術館の西側にコインパーキング十数台分があり、3館共通券で2時間、1館の券で1時間無料になります。

 JR小樽駅からは約870メートル、歩いて10分ほどです。
 市立小樽美術館からだと約160メートル、歩いて2、3分と、はしごには絶好の近さです。



4) 一度は見ておきたい

 小樽は札幌から近いし、近代美術が充実しているので、一度は見ておきたいです。この内容なら1900円は高くないと思います。
 ゆっくり見ると、3館あわせて1時間半から2時間はかかります。

 実は事前に告知されていた「東海道五十三次」などが展示されていません。
 いまの展示は、岸田劉生推しということ以外には、教科書的な陳列で、個性はあまり感じません。
 今後、展示がえの余地はありそうです。ユニークな視点による企画展を開くことが、リピーターを増やすことにつながるでしょうから、期待したいところです。

 小樽は観光都市で、アジア各国からやってくるお客さんも多いです。
 日本美術のPRのためにも、多言語表示のいっそうの充実に努めてほしいと思います。



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