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■第43回白日会北海道支部展 (6月6日まで)

2009年06月03日 23時50分35秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 1924年(大正13年)創立という歴史の古い、日展系の団体公募展。
 美術雑誌などで見ると、国立新美術館でひらかれている本展では、ハイパーリアリズム系の若手がたくさん進出してきているようですが、道内では、2006年の支部展に中原宣孝さんが出品したのを最後に、一昨年、昨年と、穏健な写実の静物や風景、人物画がすべてという年が続いていました。
 昨年の支部展は、時計台ギャラリーのA室だけでしたが、ことしはC室も使用して、小品を展示しています。A室の大作は、今年の本展で発表済みの作品が多いとのことで、これは、支部展のあと手直しして東京へ搬入する春陽展道支部などとは順序が逆ですね。

 ことしは、白日展らしい新顔が登場しました。
 道展でも活躍中の若手、岸本春代さん(後志管内喜茂別町)です。
 「午後」は、ひざをたてて床の上にすわっている(いわゆる「体育座り」)若い女性を横向きに描いた人物画で、以前ライオンなどの動物で発揮していた高い伎倆を、ここでも存分に見せています。
 女性は緑色のスカートを身につけており、昨年のグループ展で発表した作品とおなじモデルのよう。壁には白い布が貼られ、床にも白い布が敷かれており、なんだか写真の撮影会のような雰囲気もあります。床の布のしわの克明な描写が、この絵のもうひとつの見どころといえそうです。

 大正生まれの両ベテランはことしも健筆をふるっています。
 1914年(大正3年)生まれの平野俊昌さん「光を装う」は、窓際にたたずむウエディングドレス姿の若い女性がモデル。
 床の青が目立っていますが、ここ数年の作品の中では、白と薄茶色が多い、落ち着いた色調だと思います。
 20年(大正9年)生まれの川村正男さんは「トッカリショ岬」のほうが筆者の好み。遠景の海の中に、緑色のタッチが続き、海面の表情をうまくやわらげています。

 南里葉子さんの絵が、ちょっと気になります。
 リアルさ、という観点からすれば、1990年代後半に支部長を務めておられたころのほうが、端正な絵を描いていたと記憶しています。
 近年の静物画は、筆先に震えのようなものがあるようで、画面もわずかに振動しているようなおもむきがあります。
 ただし、絵の味-というポイントからすれば、近年の作品のほうが良いといえるかもしれません。
 題材などは、花やコーヒーミルといったごく平凡なものですが、それがかえって、見る側の審美眼を試しているような気がして、足早に絵の前を立ち去れないのです。


 出品作は次のとおり。特に記していない作品は油彩。
川村正男(札幌) 「残雪の樽前山」F80 「トッカリショ岬」F30
高橋芳夫(札幌) 「忍路湾夕映」F60 「トラブルドール」F4=2点とも水彩
南里葉子(札幌) 「春陽のカサブランカ」F80 「ヴァイオリン」F20
平野俊昌(札幌) 「光を装う」F80 「ほうづき」P20
小堀清純(札幌) 「魚板のある静物」F80 「塔のある風景(スペイン)」P20=いずれも水彩
中矢勝善(札幌) 「初冬」F100 「冬の道(厚田村)」F20
芳賀文明(美幌) 「近郊初春」 F120
小川 智(札幌) 「出抜き小路のプチショップ(小樽)」F100 「四季彩の丘から(美瑛)」F30
中西尭昭(清水) 「十勝野薫風」F100
松信元一(札幌) 「オアシス」P20 「薫風」P10
関 建治(恵庭) 「早春の陽射し」F100 「初夏の陽射し」F20
中村富志男(清水)「オンネトーブルー」F100 「閉ざされた道を歩む」S20
小林義晃(札幌) 「コンサート・ホールにて」F100 「五月の朝(神威岬)」F10=水彩 「リラの花」F8
岡本英子(札幌) 「輪廻」F60 「涼」F60
岸本春代(喜茂別)「午後」F100
堂畑時雄(札幌)  「息子とのひとこま(ギリシャにて)」F60 「北の大樹と朝の光」F20=いずれも水彩
※賛助出品 神山晃一(東京)「シルバーポット」P100 「葡萄と梨」F6 「柿」F4


2009年6月1日(月)-6日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)

□白日会 http://www.interq.or.jp/manager/hakujitu/

第42回白日会北海道支部展(2008年)
第41回
第40回
第37回(7月19日の項)
第35回
 =以上画像なし

4つの世界の物語(2008年6月、岸本さんが出品)


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