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■米原眞司「planet」 (4月29日まで)

2007年04月28日 07時39分28秒 | 展覧会の紹介-工芸、クラフト
 米原さんは1961年東京都生まれ、江別在住のガラス工芸作家。
 ドイツ・デュッセルドルフ美術館をはじめ国内外の美術館、コレクションに作品が収蔵されるとともに、2004年度には美術館(江別市セラミックアートセンター)で個展がひらかれるなど、道内を代表するガラス作家として高い評価を受けています。
 発表も、道外が多く、札幌でまとまった数が見られる機会は少ないので、この週末に時間のある方はぜひどうぞ。
 食器や花瓶ではない純粋な美術作品だけで個展がひらけるのは、道内ではこの人ぐらいでしょう(生活雑器だからだめ、といっているわけではもちろんありません)。

 冒頭の画像は、西2丁目通りから撮影したもの。
 このように、台座を用いず、米原さん独特の球体が、ごろごろとビルの床に転がっているのです。
 ビルの中に惑星系が出現したかのようです。でも、立ったりしゃがんだり、周囲をぐるぐる回って光の入り方を見ているうちに、うっかりけっ飛ばしそうで、ちょっとコワイ。

 米原さんといえば、このタイプの作品がすぐ思い浮かぶのですが、今回は、これまであまり見たことのない技法による作品が何点もあって、ちょっとびっくり。
 「火炎」など、従来の球体が、絵で言えば、支持体と絵の具がはっきりわかれていたとすれば、「ムーンボール」など、案内状はがきに載っていた作品は、ベースとなる球と色の着いた部分とが一体化しているのです。

 どういうことだろうと思って、STV興発のウェブサイトを見たら、くわしい解説がありました。
 写真も豊富で、はっきりいってこのエントリが無意味なくらい充実した内容です。
 下のほうにリンクを貼っておいたので、ご覧ください。
 それによると、従来の作品の作りかたは、つぎのとおりです。  
この作品は炉から取り出した約1000℃のガラスを吹いて球体を創る過程で予めオーブンで約500℃に熱せられた不透明の色を積層したアイスキャンディー状の棒をガラス球体に捲き付け融着、球体に仕上げてゆく。エミール・ガレの開発した溶着技術を発展させた手法と理解して間違いない。

 それにたいして、新タイプはつぎのような製法ということです。

炉から取り出した高温のガラスで制作途中の球体に同じ透明色の直径7mm程度のスティックを千本程度植え付けスティック同士が連結してブリッジを構成したり絡んだりと面白い表情を創る。
いずれにしても、柔らかくかつ固まり易いガラスを絶えず回転させながら仕上げる工程は知的でかつ格闘技のような体力勝負のような厳しさを伴う。

 こんな重たそうな球体を吹きガラスの手法でつくるのだから、かなりの体力が必要だろうなあと思います。

 これはあくまで筆者の単純な感想なのですが、従来の作品がつよいパワーを感じさせるものだとすると、あたらしい種類の作品は、寒色が多いためかシャープな印象を受けました。ただ、じっくり見ていくと、表面のマティエールが変化に富んでいて、やはり内包する力のようなものが伝わってきます。
(米原さんの作品は「ガラス彫刻」なのだけれど、語ろうとすると、絵画の語彙がつい多くなってしまいます)

 出品作はつぎのとおり。
2007年「ムーンボール 1」「ムーンボール 2」「ムーンボール 紫」「プラネット(紫1)」「プラネット(紫2)」「プラネット(黄1)」「プラネット(黄2)」「プラネット(青)」
 06年「ムーンボール 3」
 05年「パワーボール」「スパイラル(白)」
 04年「スパイラル(白)」(同題2点) 「スパイラル(アンバー)」「スパイラル(緑)」「火炎」「古代」「吉兆8」
 03年「渦巻(モレウ)」
 

07年4月9日(月)-29日(日)9:00-18:00(土・日曜-16:00)、会期中無休
STV北2条ビルエントランスアート(中央区北2西2 地図A

05年、江別市セラミックアートセンターでの個展(画像なし)


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