本当に書きたいのは、展覧会の紹介というよりは、グループ展にかこつけて別の話題なのですが、まずは作品について。
「グルッペ空」は初の開催。アートスペース201の一室に、16人が絵画の小品を、残る2人が工芸(銅板レリーフ、陶オブジェ)を、それぞれ出品しています。
冒頭の画像、右端は原田富弥さんのスケッチ「佃島 船桟橋」。
道内外の風景を鮮烈な色彩で描く原田さんですが、東京の風景は珍しいです。もっとも、佃島も近年は急速に都市化が進み、かつてのような漁村の面影を残す場所は、この絵に描いたところぐらいしか残っていないとのことです。
左端は植野徳子さん「白い街並」。
ジャクソン・ポロックばりに、絵の具をドリッピングした作品。
筆者の目には、雨の日に自動車やバスのガラス窓ごしに見た街路のように映りました。どこか悲しげな街並みの風景です。
(もっとも、ご本人に言うと、そういうつもりはなかったらしく、「なるほど、おもしろい見方で、感性豊かですねえ」とかえって感心されてしまいました)
奥の床の上に置かれているのが堀江隆司さん「群」。
5本の塔がにょきにょきと生えています。
堀江さんの作品を見たのは10年ぶりです。いまも夕張にお住まいとのことです。
左側の2点は豊岡猛さんの絵で、左は「百花繚乱(北大雪)」。
豊岡さんは、いつもはジャズバンドの演奏風景を描いており、オーソドックスな風景画というのは意外でした。
ほかに出品者は、日下康夫、加我幸子、岸巖、瀬川裕子、中村香都子、綿谷憲昭の各氏ら。
一方、皆響展は、道新ぎゃらりーで開かれています。
木村節子、亀島ヒサ子、小林広勝、土門和子、内藤雅悟、細川久美子の6氏が油彩、革、染色和紙を出品しています。
今年も目を引くのが亀島さんの革工芸。「赤い大地より アボリジニ幻想」は大きなインスタレーションで、丸めた革の筒などが会場に並んでいます。
土門さんの油彩は甘く鮮やかな色調が特色です。
さて「グルッペ空」の案内状を見たときから、大洋会関係者が多いなあと思っていたのですが、会場で原田さんに聞いたところ、大洋会道支部展は今年1月に開いた第44回展を最後に幕を閉じることにしたとのこと。
高齢化などに伴い、100号大の絵を出品する人が年を追うごとに減っていたのは明らかでした。
日下さんや原田さんが大洋会メンバーを中心に声をかけてあらたに始めたのがこのグループだとのこと。
「小さいのなら出せるよ、と言ってくれる人もいるんですよ」
と原田さんは話します。
「皆響展」は、現展(現代美術家協会)のOB有志が数年前に始めたグループ展です。
現展は、現代美術とは関係のない団体公募展で、道支部は、後志管内余市町の画家村上豊さん(挿絵画家とは同姓同名の別人)を中心に毎年札幌時計台ギャラリーで支部展を開いていました。
この二つの事例は、団体公募展の地方支部がたどるひとつの道を、示していると思います。
団体公募展が分裂と結成を重ねてその数を増やしたのは昭和に入ってからの現象ですし、100号大の絵が主流になったのは戦後になってからです。
100号大の絵は、公共施設がどんどん増えていく時代には需要があったかもしれませんが、冷静にみると、わたしたちの日常生活でそれほど出番があるとは思われません。暮らしの場面に登場するには、大きすぎます。描く側も飾る側も、小さい絵のほうが身近ではないでしょうか。
日本の経済成長とともに増えてきた団体公募展は今後、出品者数も作品サイズもダウンサイジングすることで、生き残りをはかっていく時代なのかもしれません。
2017年3月23日(木)~28日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後4時)
アートスペース201(中央区南2西1 山口中央ビル5階)
2017年3月23日(木)~28日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(中央区北1西3 北海道新聞本社北一条館 DO-BOX)
「グルッペ空」は初の開催。アートスペース201の一室に、16人が絵画の小品を、残る2人が工芸(銅板レリーフ、陶オブジェ)を、それぞれ出品しています。
冒頭の画像、右端は原田富弥さんのスケッチ「佃島 船桟橋」。
道内外の風景を鮮烈な色彩で描く原田さんですが、東京の風景は珍しいです。もっとも、佃島も近年は急速に都市化が進み、かつてのような漁村の面影を残す場所は、この絵に描いたところぐらいしか残っていないとのことです。
左端は植野徳子さん「白い街並」。
ジャクソン・ポロックばりに、絵の具をドリッピングした作品。
筆者の目には、雨の日に自動車やバスのガラス窓ごしに見た街路のように映りました。どこか悲しげな街並みの風景です。
(もっとも、ご本人に言うと、そういうつもりはなかったらしく、「なるほど、おもしろい見方で、感性豊かですねえ」とかえって感心されてしまいました)
奥の床の上に置かれているのが堀江隆司さん「群」。
5本の塔がにょきにょきと生えています。
堀江さんの作品を見たのは10年ぶりです。いまも夕張にお住まいとのことです。
左側の2点は豊岡猛さんの絵で、左は「百花繚乱(北大雪)」。
豊岡さんは、いつもはジャズバンドの演奏風景を描いており、オーソドックスな風景画というのは意外でした。
ほかに出品者は、日下康夫、加我幸子、岸巖、瀬川裕子、中村香都子、綿谷憲昭の各氏ら。
一方、皆響展は、道新ぎゃらりーで開かれています。
木村節子、亀島ヒサ子、小林広勝、土門和子、内藤雅悟、細川久美子の6氏が油彩、革、染色和紙を出品しています。
今年も目を引くのが亀島さんの革工芸。「赤い大地より アボリジニ幻想」は大きなインスタレーションで、丸めた革の筒などが会場に並んでいます。
土門さんの油彩は甘く鮮やかな色調が特色です。
さて「グルッペ空」の案内状を見たときから、大洋会関係者が多いなあと思っていたのですが、会場で原田さんに聞いたところ、大洋会道支部展は今年1月に開いた第44回展を最後に幕を閉じることにしたとのこと。
高齢化などに伴い、100号大の絵を出品する人が年を追うごとに減っていたのは明らかでした。
日下さんや原田さんが大洋会メンバーを中心に声をかけてあらたに始めたのがこのグループだとのこと。
「小さいのなら出せるよ、と言ってくれる人もいるんですよ」
と原田さんは話します。
「皆響展」は、現展(現代美術家協会)のOB有志が数年前に始めたグループ展です。
現展は、現代美術とは関係のない団体公募展で、道支部は、後志管内余市町の画家村上豊さん(挿絵画家とは同姓同名の別人)を中心に毎年札幌時計台ギャラリーで支部展を開いていました。
この二つの事例は、団体公募展の地方支部がたどるひとつの道を、示していると思います。
団体公募展が分裂と結成を重ねてその数を増やしたのは昭和に入ってからの現象ですし、100号大の絵が主流になったのは戦後になってからです。
100号大の絵は、公共施設がどんどん増えていく時代には需要があったかもしれませんが、冷静にみると、わたしたちの日常生活でそれほど出番があるとは思われません。暮らしの場面に登場するには、大きすぎます。描く側も飾る側も、小さい絵のほうが身近ではないでしょうか。
日本の経済成長とともに増えてきた団体公募展は今後、出品者数も作品サイズもダウンサイジングすることで、生き残りをはかっていく時代なのかもしれません。
2017年3月23日(木)~28日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後4時)
アートスペース201(中央区南2西1 山口中央ビル5階)
2017年3月23日(木)~28日(火)午前10時~午後7時(最終日~午後5時)
道新ぎゃらりー(中央区北1西3 北海道新聞本社北一条館 DO-BOX)