ぐらのにっき

主に趣味のことを好き勝手に書き綴っています。「指輪物語」とトールキンの著作に関してはネタバレの配慮を一切していません。

Errantry

2005年10月18日 | 指輪物語&トールキン
先日、いつもHoMEシリーズ読書などで楽しませていただいているえるさんのふむ道、小道、数多くでとても面白いお話を教えていただきました。
ビルボがエルロンドの館で、アラゴルンに手伝ってもらって作ったエアレンディルの詩がありますが、最初の案ではここで「トム・ボンパディルの冒険」(「農夫ジャイルズの冒険-トールキン小品集」に収録)に出てくるErrantry(放題「さすらいの騎士」)という詩が使われていたそうなんです。
実際に「トム・ボンパディルの冒険」に収録されているものとはまた少し違うようなのですが。えるさんによれば、「トム・ボンパディルの冒険」の詩の方が完成版のようだということです。
まさかあんな能天気?な詩が裂け谷で読まれていたとは・・・(笑)いや、その時は、まだ裂け谷までホビット庄気分?が残されていたということかもしれません。
「トム・ボンパディルの冒険」には、ちょうど「指輪」本編の序章と同じように、トールキン自身による序文がついていて、ここに収録されている詩が赤表紙本に書きとめられていたものだ、なんて書いてあって面白いです。自分で作った詩なのに、由来を考証して書いてたりして(笑)
その中でこのErrantryという詩は、ピルボ作だとされていて、裂け谷でビルボが読んだエアレンディルの詩は、この詩の形式に無理やりエアレンディルの物語をはめ込んだものだ、なんて書いてありました。要するに、トールキン自身もErrantryを基にしてあのエアレンディルの詩を作った、ということなのでしょう。
ただし、Earendil is a marinerで始まる詩自体は、「J.R.R.トールキン~或る伝記」によれば、「ホビット」が世に出るはるか以前から考えられていたそうなので、もともとエアレンディルの詩から発展したErrantryが、またエアレンディルの物語を語る詩に直されたということになるわけで、なかなか面白いなあと思いました。
ちなみに「トム・ボンパディルの冒険」の序文によると、このErrantryのように最後まで行くとまた最初に戻る形式の詩は、ホビットが愛してやまない形式で、「聴衆が音を上げるまで繰り返された」と書いてありますが、実はHoMEによるとインクリングスでやっていた遊びなんだそうです(笑)
トールキンやルイス始めオックスフォードの先生たちがホビットに擬えられているのかと思うとなんだかおかしいですね(笑)

さてこのErrantryという詩、英文で読んでもさっぱり意味がわからないし(汗)邦訳を読んでも意味不明で、なかなかとっつきにくい感じもするのですが、私はとても好きなんです。
というのは、実はドナルド・スワン作曲のThe Road Goes Ever onに入っている曲を聴いてからなんですが。
「指輪」に出てくる詩に曲をつけたものばかりの中でちょっと異色なErrantryですが、ドナルド・スワン氏によると、「道は続く」というテーマに繋がっているのだとか。(って大分前に読んだのでちょっとあやふやですが(汗))
というわけで、最後の部分にThe Road Goes Ever onと同じメロディが使われていたりして、面白かったりもします。
でも何より、とても素敵な曲なんですよ。
詩の持つ早口な感じもしっかり出していつつ、詩の内容につれて曲調が変化して、自然と詩の中の物語?の内容がメロディとともに感じられるんです。最初はおどけた感じ、蝶への求愛?の場面はロマンチックに、戦争の場面は勇ましく、という感じで。
そして、戦争を経て、ふと気がつくと一人ぼっちで、故郷にでも帰ろうか・・・というあたりが、静かなピアノの和音とともに台詞になっているのがまたとても雰囲気が出てるんですよね。さすがミュージカルレビューを作ってた人だけあるなあと。
そして、忘れていた使命を思い出して、また元気なメロディになって、後奏のピアノは、原詩のように、最初に戻ろうと思えば戻れるような感じになっているのがまた良いです(笑)
そうやって曲にあわせて詩を読んでいると、(実は今のところ邦訳しか持ってないのですが・・・)言葉で描かれている情景の美しさが意識されるようになりました。
この詩に限らず、メロディが付くと詩ってとっつきやすくなりますよね。食べ易くなるというか(笑)メロディがあると、難しそうな言葉もするっと覚えられてしまったりして。
というわけで、ドナルド・スワン氏やトールキン・アンサンブルのおかげで、トールキンの詩のことが随分好きになったと思います。
話が逸れたような気がしますが(汗)そんな訳でErrantryの秘密???を知ったおかげで、また少しこの詩が好きになったような気がします。
コメント
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