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Shelley, "Arethusa"

パーシー・B・シェリー (1792-1822)
「アレトゥーサ」

1.
アレトゥーサは立ちあがった、
雷に打たれたような
エピラス山脈の雪のベッドから。
雲から、とがったところばかりの
岩の崖から、彼女は立ちあがった、
輝く泉の水を引きつれて。
そして彼女は、岩を飛びこえておりてきた、
虹色の髪で、
川の水のなかを流れて。
下までつづく渓谷は、彼女の足に踏まれて
緑に包まれた。
そんな渓谷が、日に照らされた西の海までつづいていた。
すべるように、はねるように、
彼女は来た、眠りのような
静かなささやき声でずっと歌いながら。
大地は彼女に恋をしたかのようで、
空も彼女にほほえみかけた、
海に向かってゆっくり進むアレトゥーサに。

2.
大胆なアルペイオスは、
冷たい氷河の上に立ち、
三つ又の矛(ほこ)を山に打ちこんだ。
岩のあいだに
裂け目が開き、痙攣して
エリュマントス山が山ごとふるえた。
すると、封印を解かれた
黒い南風が、
音もなく雪をふらせる壺の後ろから流れはじめた。
さらに、地震と雷が、
地中の泉を閉じこめていた
氷の鉄格子をバラバラに壊した。
そして・・・・・・ひげと髪を水になびかせ、
川の神アルペイオスが流れはじめた。
はやく、強く、広い川のなかに。
彼は追いかけ、つかまえようとする、
足の速いアレトゥーサを。
彼女の母、海の神ドーリスのところまで逃げていくこのニンフを。

3.
「助けて! 連れていって!
海深くわたしを隠して!
もう髪をつかまれそうなの!」
海の神はこの願いを聞き、大きな音をたて、
震え、ゆすり、
海の底深くまで道をつくった。
水のなか、
大地の白い娘は
日の光の筋のように逃げた。
後ろには
彼女の波、
黒い川アルペイオスと交わっていない波をなびかせて。
エメラルド色の海のなか、
暗くにごったしみのように、
彼はアレトゥーサのあとをすごい勢いで追う。
それはまるで、ワシが
ハトを追って滅ぼすときのよう、
雲と風の流れのなかで。

4.
海のなかの樹木の下、
海の神々が
真珠で飾られた玉座に座っているところを--
サンゴの森、
転げまわる波のあいだ、
はかりしれない価値のある、山積みの宝石の上を--
うす暗い光が
流れる水のなかに
織りなす色とりどりの網のあいだを--
ほら穴の下、
陰になった波が
まるで夜の森のような緑色をしているところを--
サメより速く、
黒いメカジキより速く、
海の泡の下を通り、
山の崖の
裂け目を通ってのぼり--
ふたりはドーリスの故郷に向かっていった。

5.
そして今、ふたりの泉から、
エンナの山のあいだ、
〈朝〉がひなたぼっこをする、とある谷にあるふたりの泉から、
一度離れ離れになりつつも
ふたたび心が通うようになった友だち同士のように、
彼らはいっしょに、絶えず流れ出ている。
太陽とともに彼らは飛び出す、
崖のように立っているベッドから、
丘の坂にあるほら穴から。
真昼になると、彼らは流れる、
森を通って、
アスフォデルの咲く草地を通って。
夜には眠る、
ゆれる海の下深くで、
オルテュギアの岸の下で。
まるで死んだ者たちの魂が、
澄みわたる青空の上で横になり、
もう生きていないのに愛しあうときのように。

* * *

Percy Bysshe Shelley
"Arethusa"

1.
Arethusa arose
From her couch of snows
In the Acroceraunian mountains,―
From cloud and from crag,
With many a jag, _5
Shepherding her bright fountains.
She leapt down the rocks,
With her rainbow locks
Streaming among the streams;―
Her steps paved with green _10
The downward ravine
Which slopes to the western gleams;
And gliding and springing
She went, ever singing,
In murmurs as soft as sleep; _15
The Earth seemed to love her,
And Heaven smiled above her,
As she lingered towards the deep.

2.
Then Alpheus bold,
On his glacier cold, _20
With his trident the mountains strook;
And opened a chasm
In the rocks―with the spasm
All Erymanthus shook.
And the black south wind _25
It unsealed behind
The urns of the silent snow,
And earthquake and thunder
Did rend in sunder
The bars of the springs below. _30
And the beard and the hair
Of the River-god were
Seen through the torrent's sweep,
As he followed the light
Of the fleet nymph's flight _35
To the brink of the Dorian deep.

3.
'Oh, save me! Oh, guide me!
And bid the deep hide me,
For he grasps me now by the hair!'
The loud Ocean heard, _40
To its blue depth stirred,
And divided at her prayer;
And under the water
The Earth's white daughter
Fled like a sunny beam; _45
Behind her descended
Her billows, unblended
With the brackish Dorian stream:―
Like a gloomy stain
On the emerald main _50
Alpheus rushed behind,―
As an eagle pursuing
A dove to its ruin
Down the streams of the cloudy wind.

4.
Under the bowers _55
Where the Ocean Powers
Sit on their pearled thrones;
Through the coral woods
Of the weltering floods,
Over heaps of unvalued stones; _60
Through the dim beams
Which amid the streams
Weave a network of coloured light;
And under the caves,
Where the shadowy waves _65
Are as green as the forest's night:―
Outspeeding the shark,
And the sword-fish dark,
Under the Ocean's foam,
And up through the rifts _70
Of the mountain clifts
They passed to their Dorian home.

5.
And now from their fountains
In Enna's mountains,
Down one vale where the morning basks, _75
Like friends once parted
Grown single-hearted,
They ply their watery tasks.
At sunrise they leap
From their cradles steep _80
In the cave of the shelving hill;
At noontide they flow
Through the woods below
And the meadows of asphodel;
And at night they sleep _85
In the rocking deep
Beneath the Ortygian shore;―
Like spirits that lie
In the azure sky
When they love but live no more. _90

* * *

死後出版された作品。ギリシャ神話を(想像上の)自然現象に重ねる。

神話の基本的なエピソードは割とそういうもの。空を旅する
アポロンとか、西風の神ゼピュロスと花のニンフのクロリス
(ローマ神話ではフローラ)のエピソードとか。

* * *

Arethusa
ギリシャ神話に出てくる泉のニンフ。

Alpheus
川の神。

* * *

(授業の課題用なので、解説などは2月以降に。)

* * *

英語テクストは、The Complete Poetical Works of
Percy Bysshe Shelley, vol. 2 (1914) から。
http://www.gutenberg.org/ebooks/4798

* * *

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