大和郡山市の郡山城跡西側にある「そば楽」は一見、普通の一軒家だ。初めて行くと、ちょっと分かりづらい。元銀行員の奥田守さん(75)が定年退職後の16年前、自宅を改装して開業した。昨年には「ミシュランガイド奈良」で「お勧めの店」にも選ばれた。

 「奥田」と表札のある門を通って、玄関ののれんをくぐる。靴を脱いで上がると、12畳の応接間を改装し、畳敷きにした「店内」に着く。

 全国からえりすぐったソバの実を取り寄せ、石臼を使って自分で製粉する。薬味の大根やネギも自家製だ。

 ログイン前の続き奥田さんは55歳のころ、全国各地のそば打ち体験へ出かけるようになった。定年後の趣味になれば、という思いだった。だが、「水加減ひとつ間違えたら大失敗」。そんな難しさにのめり込み、数年かけて満足できるそばを打てるようになった。

 2001年に定年退職。2人の息子が巣立った自宅を半年かけて改装した。裏庭に厨房(ちゅうぼう)を増築し、開業した。妻の敏世(としよ)さん(70)も後押ししてくれた。「趣味が高じたものなので、もうけようと思わなかった。だから自宅で始めた」。店名は、そばを楽しもうと付けた。

 1日限定30~40食。看板メニューは、そばがきやそばみそが付く「ざるそばセット」(1500円)だ。開業時から値上げをしていない。口コミで評判になり、5年ほど前からは売り切れる日も出るようになった。

 でもこのころ、奥田さんは腰を痛めた。閉店も覚悟したが、長男の壮亮さん(45)が営業マンを辞め、店を手伝うようになった。「おやじががんばって人に知られる店にしたのだから」。そば打ちは父に習った。

 昨年は開店から15年の節目だった。ミシュランガイドでお勧めの店に選ばれ、奥田さんは「がんばってきたご褒美かな」。

 銀行員として37年働いた。もう少しで、その半分になる。「第二の人生はやりがいがある。ここまであっというまに過ぎた。銀行員時代よりも成功したかも」。細く、長く、続けていくつもりだ。

 店は大和郡山市南郡山町465の13。午前11時~午後3時、月・火曜休み(祝日は営業)。駐車場あり。電話予約(0743・53・1057)がお勧め