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イスラエルのスタートアップが「中国より日本」と考える理由

2020年03月16日 19時11分41秒 | ニュース

イスラエルのスタートアップが「中国より日本」と考える理由 

 2020/03/16 15:15  
© PRESIDENT Online ※写真はイメージです 
日本とイスラエルが急接近している。イスラエル企業の経営に携わった経験を持つ平戸慎太郎氏は「イスラエルのスタートアップは中国企業より日本企業に魅力を感じている」という。その理由とは――。
※本稿は、平戸慎太郎『ネクストシリコンバレー』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「シリコンバレーよりテルアビブ」日本企業がイスラエルに熱視線
欧米やアジアの諸国に比べて、どうしても日本人から「縁遠い」国だったイスラエルだが、その「距離」は今後、ぐっと近くなりそうだ。
世耕弘成経済産業相(当時)は2019年の年明け早々、イスラエルに飛んだ。
テルアビブでネタニヤフ首相と会談し、ITを使った医療分野で日本とイスラエルの企業の開発協力などを促していくという覚書を結んだ。協力の枠組みがこれまでのサイバーセキュリティーから拡大。両国間の連携がさらに強まる見込みだ。
さらに2019年5月には、イスラエルの航空会社エルアル・イスラエル航空が、成田空港とテルアビブのベングリオン空港を結ぶ初の直行便を2020年3月から週3便就航させると発表した。これまでは乗り継ぎで16時間以上かかった所要時間が、直行便で11~12時間30分ほどになり、大幅に短縮される。
直行便が運航される背景には、急速な需要の拡大がある。直近4年間でイスラエルに進出、または投資した日本の企業は80社を超え、その投資額は120倍に成長(2017年で約1300億円)。2018年の日本からイスラエルへの訪問者は、2016年比で65%増の約2万人に達した。また、イスラエルから日本に訪れる人も4万人を超えた。まさに切望されての直行便である。
こうしたことから、2020年はイスラエルと日本で観光やビジネスにおける関係がより強固になる年として期待が高まっている。
2016年から高まる、スタートアップとの協業
日本企業がイスラエルに着目し始めたのはおそらく2016年頃だろう。
私が企業買収のためイスラエルを初めて訪れた2014年には現地で日本人に遭遇することはほとんどなかった。だがその2年後くらいから徐々に様子が変わってきたように思える。
これは日本の大手企業が他社や大学、地方自治体といった「外部」の技術やアイデアを自社の開発に生かす「オープンイノベーション」を掲げて動き始めたことがきっかけとなった。2016年頃から社内に「新規事業室」や「オープンイノベーション室」を作る会社が増え始めたのだ。同時期には大手だけでなく、中堅企業も事業会社が自己資金でファンドを組成してベンチャー企業に出資や支援を行う「コーポレートベンチャーキャピタル」(CVC)の設立も相次いだ。
いまやEVやビッグデータの活用など、業界の勢力図を塗り替えるような新しい技術やサービスが次々と生まれ、大企業でも生き残るのは容易ではない。こうした厳しい競争を勝ち抜くためには大手企業同士だけでなく、スタートアップとの協業が欠かせなくなっている。
「アイデアのみ」にカネを出せない日本企業
オープンイノベーションの動きが本格的に始まって危機感を覚えた日本の企業は、まずスタートアップの聖地と言われる米シリコンバレーに目を向けた。
ただ、シリコンバレーにおいて優良なスタートアップとの関係作りは一筋縄ではいかない。なにせ、シリコンバレーには世界的な企業やベンチャーキャピタルが集まっているのである。すでにインナーサークルが出来上がっていて、多くの日本企業は出遅れ感が否めなかった。
このため、何百人もの社員を現地に置いて、何年も地盤を創ってきた企業を除けば、シリコンバレーに日本の企業が進出したところで一朝一夕に関係を作るのはかなり難しいといえる。
シリコンバレーは、世界中から人やカネが集中しているだけに、スタートアップへの投資金額が右肩上がりに増え続けてきた。いまや、商品やサービスが具体化していない「アイデアだけしかない」企業も、平気で5億~10億円規模を調達することが珍しくない。
いくらオープンイノベーションが必要だからといっても、いきなりアイデアのみの企業に億円単位で投資できる日本企業はほとんどないだろう。
加えてシリコンバレーは自国に大きなマーケットがあるため、海外、中でも遠く離れたアジアへの優先度はそれほど高くない。そんなシリコンバレーで日本企業が存在感を発揮するのは困難だ。
そんな中、シリコンバレーでの投資が思うように進まない日本企業が、次に目を付けた地域の一つがイスラエルだった。
田辺三菱製薬やオリックスが巨額買収
2016年の終わり頃からイスラエルに着目するようになった日本企業だが、2017年以降はそれまでの単なる視察ではなく、出資や協業に向けた提携に至るケースが増えてきた。
大型買収が目立つようになったのはこの頃からだ。2017年には田辺三菱製薬が米ナスダック市場に上場していたニューロダーム(Neuro Derm)を11億ドル(約1200億円)で買収した。同社はパーキンソン病治療薬を開発しているバイオベンチャーである。欧米での発売を計画しており、海外事業の拡大を狙う田辺三菱が目をつけた。
同じく2017年にオリックスが約6億2700万ドル(約710億円)を投じて株式の22.1%を取得した米ネバダ州の地熱発電会社オーマット・テクノロジーズ(Ormat Technologies)も実はイスラエル発の企業だ。
地熱発電設備の開発・製造だけでなく、自ら地熱発電事業まで手掛ける世界唯一の企業だという。1965年創業の同社は、ニューヨーク証券取引所だけでなく、テルアビブ証券取引所、フランクフルト証券取引所にも上場している。
そのほかにも、味の素が同年、ヒノマン(Hinoman)に1500万ドル(約17億円)を出資した。ヒノマンは高たんぱくで体内消化・吸収効率に優れた栄養価値の高い水草の一種「マンカイ」(Mankai)を手掛けるが、味の素はその素材の独占販売権を得た。
このほか、シリコンバレーと同様、イスラエルでも存在感を発揮しているソフトバンクグループのソフトバンンク・ビジョン・ファンドは、イスラエル生まれの不動産仲介会社コンパス(Compass)に4億5000万ドル(約490億円)を投じた。コンパスは不動産の営業向け業務支援システムを手掛けており、不動産テック企業の一角として世界中の注目を集めている。
オリンパスも2018年、泌尿器系疾患向け医療機器の製造・販売を手掛けるメディ・テート(Medi‐Tate)に出資している。
2017年以降、日本企業が出資や提携をした企業は医療、フードテック、エネルギー、医療機器と多岐にわたる。
イスラエルは「アジアの窓口」として日本に魅力
私はジャコーレを2017年に設立して以降、イスラエルのスタートアップと日本企業の「橋渡し役」をしてきた。そんな中で感じたのは、2016年以降、多くの日本企業がイスラエルを訪れているが、特に強い危機感を抱き、積極的に協業相手を模索しているのが製造業であることだ。
製造業は主に2つの課題によってオープンイノベーションの必要に迫られている。1つ目は少子高齢化による働き手不足。特に工場などの製造現場における人不足は深刻で、これまでと同じように人の手で精密な部品を作ったり、技術を伝達したりするのは難しくなっている。
そのため、彼らは製造や検査などの工程をAI(人工知能)で代替するロボティクス技術を貪欲に探し求めている。
もう1つの課題は産業構造の変化だ。EVに切り替われば不要な自動車部品が出てくるように、デジタル化によって産業自体がなくなるという危機感は強い。
自動車業界では完成車だけでなく、部品メーカーなどがこぞってイスラエルのAIやビッグデータに関する技術を取り入れようとしている。
「旅行」「不動産」「金融」も期待を寄せる
製造業以外にも、旅行会社など内需産業の中にも、人口減少や新しい技術の出現で市場が縮小したり、プレーヤーが一変したりするという強い危機感を抱く企業は少なくない。
例えば、国内が主戦場の不動産は今後、仲介件数の減少は避けられない。そのため、大手のデベロッパーの一部は、不動産情報を売買するような新しい市場を使ったり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの新しい技術を取り入れることを検討している。
激しい競争にさらされている金融も、同様にイスラエルの技術に大きな期待を寄せる。
銀行はこれまで、平均寿命などの一般的な情報をもとに、借り入れ時の利率などを決めてきた。だが、今後ビッグデータの解析や活用が進めば、個人の健康管理状態やライフスタイルに合わせて利率を変えることもできるようになるだろう。
保険や銀行などの金融企業はイスラエルのスタートアップが持つこうした技術への関心を高めている。
こうした背景から、2018年の日本企業によるイスラエル企業の買収件数は22件と、10年前に比べて3~4倍に増えた。
「中国より日本」の裏事情
日本ではイスラエルへの関心が高まっているが、そのイスラエルのスタートアップは日本企業をどう評価しているのか。シリコンバレーでは残念ながらスタートアップにとっての協業相手として決して優先度が高いとは言えない日本企業だが、イスラエルでは少し事情が異なる。
もちろん「一筋縄でいかない」のは確かだが、いくつかの理由によってイスラエルのスタートアップにとって日本企業は魅力的に映る。
まず、イスラエルは人口が850万人しかいないため、自国だけでビジネスを展開しようというスタートアップはほとんどない。最初から世界市場を目指している彼らの眼には、1億2600万人という人口を抱える日本は魅力的な市場に見える。
また、アジアへの窓口としても日本は重視されている。アジアの大国である中国は経済成長率や人口から見れば期待を寄せる市場だろう。欧州には中国をアジア進出への足掛かりにしようと考える企業は多い。
だが、習近平国家主席と米トランプ大統領は2018年以降、貿易戦争を繰り広げている。そうした状況下にいて、米国と密接な関係にあるイスラエルは最先端の技術を中国には提供しにくい。このため、「アジアの窓口」として中国ではなく日本を選ぼうと考えるイスラエル企業は少なくないのだ。
しかも、自動車や電機など、日本の大企業と組めば、アジアどころか一気に世界中でビジネスを拡大するチャンスもある。
“真逆”だからこそ協業相手として向く
ただ、イスラエルのスタートアップにも弱点がある。それは「圧倒的なスピード感」だ。これは大きな強みでもあるのだが、一方で「雑になる」という弱みにもなる。商品やサービスのリリース当初に、「質」が低くなりがちになるのだ。
イスラエルのスタートアップは、品質を担保せずにとりあえず世の中に出すという考え方が強いため、不具合や故障、サーバーのダウンというトラブルは日常茶飯事。そもそも、彼らは1つのサービスや商品の品質をじっくりと時間をかけて高めていくということを苦手としているところもある。
日本企業は何度も試験を繰り返し、少しずつ品質を高めて作り込んでいくことを得意としている。加えてカスタマーサポートなど、顧客満足度の向上に影響するアフターフォローにも定評がある。
こうしたことから、イスラエル企業にとって日本企業は、自分たちの弱点をカバーできる存在としても認識されている。
イスラエル企業と日本企業は、得意な点と不得意な点が“真逆”であることが、協業の最大のメリットなのだ。
そんな日本企業の緻密さや慎重さを敬遠するイスラエル企業もある。丁寧にPoC(実証実験)をする日本企業は、その姿勢を評価される一方で、警戒感を抱かれる。その理由は、「技術を盗まれるのではないか」というものだ。
「一向に商品化に結びつかない」
商品やサービスを持たないスタートアップにとって、技術は唯一の財産だ。イスラエルのスタートアップは日本企業とPoCを繰り返すうちに、技術だけを盗まれることを恐れているのである。
彼らが日本企業に対して特にこうした警戒感を強く抱く背景には、両者の事業展開のスピードにおける違いがあるからだ。
日本企業は慎重を期すため、長期にわたりPoCを繰り返しがちだ。何度も実験を繰り返したにもかかわらず、一向に実際のサービス提供や商品化に結びつかなければ「PoCだけして技術を盗まれた」という疑念を持たれても仕方がないだろう。
実際、イスラエルでは徐々にこうした日本企業に対する悪評が立ちつつあるだけに注意が必要だ。
時間軸の違いはPoC以外でも見られる。多くの日本企業は守秘義務契約を結ぶために2カ月程度の時間がかかる。対して、アメリカの企業は2週間ほどで守秘義務契約を結べる。
日本企業は守秘義務契約を結ぶために、本社で何回も稟議しなければならないなど、仕組み上、ある程度時間がかかるのは致し方ない面もあるだろう。だが、イスラエルのスタートアップは日本企業の習慣や仕組みをあまり知らないので、こうした「スピード感のなさ」にいら立つことが多い。
日本企業はリスクを取ることを嫌うな
イスラエルは最先端の技術を持ったスタートアップが少なくないが、日本の企業は欧米の企業やVCなどと比べて、シードやアーリーと呼ばれる初期段階のスタートアップに対する出資については二の足を踏むケースが多い。
例えば、アーバン・エアロノーティクス(Urban Aeronautics)という会社は、「空飛ぶ車」を開発している。
この空飛ぶ車は大きなドローンのようなイメージで、ほぼ垂直に飛び上がるため、離発着のためのスペースが小さくて済む。そのため、利用する場所を選ばないというメリットがある。
現時点で700kgほどの貨物を載せることができ、すでに無人では250回ほど試験的に飛行している。
今後は被災地など、人がなかなか行けない場所に物資を運ぶなどの活用を検討していくという。
アーバン・エアロノーティクスは、将来的には有人で飛行し、空飛ぶタクシーとして使用することを目指している。実現すれば利用シーンは一気に拡大する。こうした可能性に着目して、ドイツの大手自動車関連企業は同社に出資をしている。
日本企業はこのようなエッジが利いた企業に出資をためらう傾向がある。世界中のVCや企業がイスラエルに注目する中で、日本企業がリスクを取ることを嫌えば、有望なスタートアップとの協業する機会はどうしても減ってしまう。この点について、日本企業は真剣に考える必要がある。
---------- 平戸 慎太郎(ひらと・しんたろう) ジャコーレCEO ニューヨーク州弁護士。1999年に慶應義塾大学法学部卒業後、NTTに入社。主に海外通信事業の戦略策定や契約交渉業務に専従。その後シカゴ大学ロースクールを経て、SidleyAustin法律事務所とGEに勤務。2011年楽天入社。国際部新規事業長、デジタルコンテンツカンパニーのCCO、およびViberのジェネラルカウンセルを務める。2017年7月、イスラエル企業と日本企業をつなぐコンサルティングサービスを提供するジャコーレを設立。 ----------


イスラエルのスタートアップが「中国より日本」と考える理由

2020年03月16日 19時11分41秒 | ニュース

イスラエルのスタートアップが「中国より日本」と考える理由 

 2020/03/16 15:15  
© PRESIDENT Online ※写真はイメージです 
日本とイスラエルが急接近している。イスラエル企業の経営に携わった経験を持つ平戸慎太郎氏は「イスラエルのスタートアップは中国企業より日本企業に魅力を感じている」という。その理由とは――。
※本稿は、平戸慎太郎『ネクストシリコンバレー』(日経BP)の一部を再編集したものです。
「シリコンバレーよりテルアビブ」日本企業がイスラエルに熱視線
欧米やアジアの諸国に比べて、どうしても日本人から「縁遠い」国だったイスラエルだが、その「距離」は今後、ぐっと近くなりそうだ。
世耕弘成経済産業相(当時)は2019年の年明け早々、イスラエルに飛んだ。
テルアビブでネタニヤフ首相と会談し、ITを使った医療分野で日本とイスラエルの企業の開発協力などを促していくという覚書を結んだ。協力の枠組みがこれまでのサイバーセキュリティーから拡大。両国間の連携がさらに強まる見込みだ。
さらに2019年5月には、イスラエルの航空会社エルアル・イスラエル航空が、成田空港とテルアビブのベングリオン空港を結ぶ初の直行便を2020年3月から週3便就航させると発表した。これまでは乗り継ぎで16時間以上かかった所要時間が、直行便で11~12時間30分ほどになり、大幅に短縮される。
直行便が運航される背景には、急速な需要の拡大がある。直近4年間でイスラエルに進出、または投資した日本の企業は80社を超え、その投資額は120倍に成長(2017年で約1300億円)。2018年の日本からイスラエルへの訪問者は、2016年比で65%増の約2万人に達した。また、イスラエルから日本に訪れる人も4万人を超えた。まさに切望されての直行便である。
こうしたことから、2020年はイスラエルと日本で観光やビジネスにおける関係がより強固になる年として期待が高まっている。
2016年から高まる、スタートアップとの協業
日本企業がイスラエルに着目し始めたのはおそらく2016年頃だろう。
私が企業買収のためイスラエルを初めて訪れた2014年には現地で日本人に遭遇することはほとんどなかった。だがその2年後くらいから徐々に様子が変わってきたように思える。
これは日本の大手企業が他社や大学、地方自治体といった「外部」の技術やアイデアを自社の開発に生かす「オープンイノベーション」を掲げて動き始めたことがきっかけとなった。2016年頃から社内に「新規事業室」や「オープンイノベーション室」を作る会社が増え始めたのだ。同時期には大手だけでなく、中堅企業も事業会社が自己資金でファンドを組成してベンチャー企業に出資や支援を行う「コーポレートベンチャーキャピタル」(CVC)の設立も相次いだ。
いまやEVやビッグデータの活用など、業界の勢力図を塗り替えるような新しい技術やサービスが次々と生まれ、大企業でも生き残るのは容易ではない。こうした厳しい競争を勝ち抜くためには大手企業同士だけでなく、スタートアップとの協業が欠かせなくなっている。
「アイデアのみ」にカネを出せない日本企業
オープンイノベーションの動きが本格的に始まって危機感を覚えた日本の企業は、まずスタートアップの聖地と言われる米シリコンバレーに目を向けた。
ただ、シリコンバレーにおいて優良なスタートアップとの関係作りは一筋縄ではいかない。なにせ、シリコンバレーには世界的な企業やベンチャーキャピタルが集まっているのである。すでにインナーサークルが出来上がっていて、多くの日本企業は出遅れ感が否めなかった。
このため、何百人もの社員を現地に置いて、何年も地盤を創ってきた企業を除けば、シリコンバレーに日本の企業が進出したところで一朝一夕に関係を作るのはかなり難しいといえる。
シリコンバレーは、世界中から人やカネが集中しているだけに、スタートアップへの投資金額が右肩上がりに増え続けてきた。いまや、商品やサービスが具体化していない「アイデアだけしかない」企業も、平気で5億~10億円規模を調達することが珍しくない。
いくらオープンイノベーションが必要だからといっても、いきなりアイデアのみの企業に億円単位で投資できる日本企業はほとんどないだろう。
加えてシリコンバレーは自国に大きなマーケットがあるため、海外、中でも遠く離れたアジアへの優先度はそれほど高くない。そんなシリコンバレーで日本企業が存在感を発揮するのは困難だ。
そんな中、シリコンバレーでの投資が思うように進まない日本企業が、次に目を付けた地域の一つがイスラエルだった。
田辺三菱製薬やオリックスが巨額買収
2016年の終わり頃からイスラエルに着目するようになった日本企業だが、2017年以降はそれまでの単なる視察ではなく、出資や協業に向けた提携に至るケースが増えてきた。
大型買収が目立つようになったのはこの頃からだ。2017年には田辺三菱製薬が米ナスダック市場に上場していたニューロダーム(Neuro Derm)を11億ドル(約1200億円)で買収した。同社はパーキンソン病治療薬を開発しているバイオベンチャーである。欧米での発売を計画しており、海外事業の拡大を狙う田辺三菱が目をつけた。
同じく2017年にオリックスが約6億2700万ドル(約710億円)を投じて株式の22.1%を取得した米ネバダ州の地熱発電会社オーマット・テクノロジーズ(Ormat Technologies)も実はイスラエル発の企業だ。
地熱発電設備の開発・製造だけでなく、自ら地熱発電事業まで手掛ける世界唯一の企業だという。1965年創業の同社は、ニューヨーク証券取引所だけでなく、テルアビブ証券取引所、フランクフルト証券取引所にも上場している。
そのほかにも、味の素が同年、ヒノマン(Hinoman)に1500万ドル(約17億円)を出資した。ヒノマンは高たんぱくで体内消化・吸収効率に優れた栄養価値の高い水草の一種「マンカイ」(Mankai)を手掛けるが、味の素はその素材の独占販売権を得た。
このほか、シリコンバレーと同様、イスラエルでも存在感を発揮しているソフトバンクグループのソフトバンンク・ビジョン・ファンドは、イスラエル生まれの不動産仲介会社コンパス(Compass)に4億5000万ドル(約490億円)を投じた。コンパスは不動産の営業向け業務支援システムを手掛けており、不動産テック企業の一角として世界中の注目を集めている。
オリンパスも2018年、泌尿器系疾患向け医療機器の製造・販売を手掛けるメディ・テート(Medi‐Tate)に出資している。
2017年以降、日本企業が出資や提携をした企業は医療、フードテック、エネルギー、医療機器と多岐にわたる。
イスラエルは「アジアの窓口」として日本に魅力
私はジャコーレを2017年に設立して以降、イスラエルのスタートアップと日本企業の「橋渡し役」をしてきた。そんな中で感じたのは、2016年以降、多くの日本企業がイスラエルを訪れているが、特に強い危機感を抱き、積極的に協業相手を模索しているのが製造業であることだ。
製造業は主に2つの課題によってオープンイノベーションの必要に迫られている。1つ目は少子高齢化による働き手不足。特に工場などの製造現場における人不足は深刻で、これまでと同じように人の手で精密な部品を作ったり、技術を伝達したりするのは難しくなっている。
そのため、彼らは製造や検査などの工程をAI(人工知能)で代替するロボティクス技術を貪欲に探し求めている。
もう1つの課題は産業構造の変化だ。EVに切り替われば不要な自動車部品が出てくるように、デジタル化によって産業自体がなくなるという危機感は強い。
自動車業界では完成車だけでなく、部品メーカーなどがこぞってイスラエルのAIやビッグデータに関する技術を取り入れようとしている。
「旅行」「不動産」「金融」も期待を寄せる
製造業以外にも、旅行会社など内需産業の中にも、人口減少や新しい技術の出現で市場が縮小したり、プレーヤーが一変したりするという強い危機感を抱く企業は少なくない。
例えば、国内が主戦場の不動産は今後、仲介件数の減少は避けられない。そのため、大手のデベロッパーの一部は、不動産情報を売買するような新しい市場を使ったり、VR(仮想現実)やAR(拡張現実)などの新しい技術を取り入れることを検討している。
激しい競争にさらされている金融も、同様にイスラエルの技術に大きな期待を寄せる。
銀行はこれまで、平均寿命などの一般的な情報をもとに、借り入れ時の利率などを決めてきた。だが、今後ビッグデータの解析や活用が進めば、個人の健康管理状態やライフスタイルに合わせて利率を変えることもできるようになるだろう。
保険や銀行などの金融企業はイスラエルのスタートアップが持つこうした技術への関心を高めている。
こうした背景から、2018年の日本企業によるイスラエル企業の買収件数は22件と、10年前に比べて3~4倍に増えた。
「中国より日本」の裏事情
日本ではイスラエルへの関心が高まっているが、そのイスラエルのスタートアップは日本企業をどう評価しているのか。シリコンバレーでは残念ながらスタートアップにとっての協業相手として決して優先度が高いとは言えない日本企業だが、イスラエルでは少し事情が異なる。
もちろん「一筋縄でいかない」のは確かだが、いくつかの理由によってイスラエルのスタートアップにとって日本企業は魅力的に映る。
まず、イスラエルは人口が850万人しかいないため、自国だけでビジネスを展開しようというスタートアップはほとんどない。最初から世界市場を目指している彼らの眼には、1億2600万人という人口を抱える日本は魅力的な市場に見える。
また、アジアへの窓口としても日本は重視されている。アジアの大国である中国は経済成長率や人口から見れば期待を寄せる市場だろう。欧州には中国をアジア進出への足掛かりにしようと考える企業は多い。
だが、習近平国家主席と米トランプ大統領は2018年以降、貿易戦争を繰り広げている。そうした状況下にいて、米国と密接な関係にあるイスラエルは最先端の技術を中国には提供しにくい。このため、「アジアの窓口」として中国ではなく日本を選ぼうと考えるイスラエル企業は少なくないのだ。
しかも、自動車や電機など、日本の大企業と組めば、アジアどころか一気に世界中でビジネスを拡大するチャンスもある。
“真逆”だからこそ協業相手として向く
ただ、イスラエルのスタートアップにも弱点がある。それは「圧倒的なスピード感」だ。これは大きな強みでもあるのだが、一方で「雑になる」という弱みにもなる。商品やサービスのリリース当初に、「質」が低くなりがちになるのだ。
イスラエルのスタートアップは、品質を担保せずにとりあえず世の中に出すという考え方が強いため、不具合や故障、サーバーのダウンというトラブルは日常茶飯事。そもそも、彼らは1つのサービスや商品の品質をじっくりと時間をかけて高めていくということを苦手としているところもある。
日本企業は何度も試験を繰り返し、少しずつ品質を高めて作り込んでいくことを得意としている。加えてカスタマーサポートなど、顧客満足度の向上に影響するアフターフォローにも定評がある。
こうしたことから、イスラエル企業にとって日本企業は、自分たちの弱点をカバーできる存在としても認識されている。
イスラエル企業と日本企業は、得意な点と不得意な点が“真逆”であることが、協業の最大のメリットなのだ。
そんな日本企業の緻密さや慎重さを敬遠するイスラエル企業もある。丁寧にPoC(実証実験)をする日本企業は、その姿勢を評価される一方で、警戒感を抱かれる。その理由は、「技術を盗まれるのではないか」というものだ。
「一向に商品化に結びつかない」
商品やサービスを持たないスタートアップにとって、技術は唯一の財産だ。イスラエルのスタートアップは日本企業とPoCを繰り返すうちに、技術だけを盗まれることを恐れているのである。
彼らが日本企業に対して特にこうした警戒感を強く抱く背景には、両者の事業展開のスピードにおける違いがあるからだ。
日本企業は慎重を期すため、長期にわたりPoCを繰り返しがちだ。何度も実験を繰り返したにもかかわらず、一向に実際のサービス提供や商品化に結びつかなければ「PoCだけして技術を盗まれた」という疑念を持たれても仕方がないだろう。
実際、イスラエルでは徐々にこうした日本企業に対する悪評が立ちつつあるだけに注意が必要だ。
時間軸の違いはPoC以外でも見られる。多くの日本企業は守秘義務契約を結ぶために2カ月程度の時間がかかる。対して、アメリカの企業は2週間ほどで守秘義務契約を結べる。
日本企業は守秘義務契約を結ぶために、本社で何回も稟議しなければならないなど、仕組み上、ある程度時間がかかるのは致し方ない面もあるだろう。だが、イスラエルのスタートアップは日本企業の習慣や仕組みをあまり知らないので、こうした「スピード感のなさ」にいら立つことが多い。
日本企業はリスクを取ることを嫌うな
イスラエルは最先端の技術を持ったスタートアップが少なくないが、日本の企業は欧米の企業やVCなどと比べて、シードやアーリーと呼ばれる初期段階のスタートアップに対する出資については二の足を踏むケースが多い。
例えば、アーバン・エアロノーティクス(Urban Aeronautics)という会社は、「空飛ぶ車」を開発している。
この空飛ぶ車は大きなドローンのようなイメージで、ほぼ垂直に飛び上がるため、離発着のためのスペースが小さくて済む。そのため、利用する場所を選ばないというメリットがある。
現時点で700kgほどの貨物を載せることができ、すでに無人では250回ほど試験的に飛行している。
今後は被災地など、人がなかなか行けない場所に物資を運ぶなどの活用を検討していくという。
アーバン・エアロノーティクスは、将来的には有人で飛行し、空飛ぶタクシーとして使用することを目指している。実現すれば利用シーンは一気に拡大する。こうした可能性に着目して、ドイツの大手自動車関連企業は同社に出資をしている。
日本企業はこのようなエッジが利いた企業に出資をためらう傾向がある。世界中のVCや企業がイスラエルに注目する中で、日本企業がリスクを取ることを嫌えば、有望なスタートアップとの協業する機会はどうしても減ってしまう。この点について、日本企業は真剣に考える必要がある。
---------- 平戸 慎太郎(ひらと・しんたろう) ジャコーレCEO ニューヨーク州弁護士。1999年に慶應義塾大学法学部卒業後、NTTに入社。主に海外通信事業の戦略策定や契約交渉業務に専従。その後シカゴ大学ロースクールを経て、SidleyAustin法律事務所とGEに勤務。2011年楽天入社。国際部新規事業長、デジタルコンテンツカンパニーのCCO、およびViberのジェネラルカウンセルを務める。2017年7月、イスラエル企業と日本企業をつなぐコンサルティングサービスを提供するジャコーレを設立。 ----------


ビル・ゲイツ氏、マイクロソフト取締役を退任

2020年03月14日 07時10分08秒 | ニュース

ビル・ゲイツ氏、マイクロソフト取締役を退任 
 
2020/3/14 6:22 (2020/3/14 6:55更新)

 

【シリコンバレー=佐藤浩実】米マイクロソフトは13日、創業者のビル・ゲイツ氏(64)が同社の取締役を退任したと発表した。自ら設立した財団で取り組んでいる気候変動や教育、公衆衛生に関わる慈善事業に専念するため。サティア・ナデラ最高経営責任者(CEO)らへの「テクノロジーアドバイザー」の役割のみを続ける。
 
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ビル・ゲイツ氏(2019年1月撮影)=ロイター
ゲイツ氏は1975年に友人のポール・アレン氏とマイクロソフトを創業し、パソコン用基本ソフト(OS)「ウィンドウズ」で一時代を築いた。2000年までマイクロソフトの最高経営責任者(CEO)を、14年まで取締役会長を務めた。
一方で2000年には妻のメリンダ氏とともに、環境問題や新興国の病気など社会課題を扱うビル&メリンダ・ゲイツ財団を設立。財団活動の比重を高めるため、08年以降はマイクロソフトの仕事は「非常勤」にしていた。今回取締役も辞めることで、慈善事業にすべてを費やす。ゲイツ氏は著名投資家ウォーレン・バフェット氏率いる米投資会社バークシャー・ハサウェイの取締役も退任する。
ゲイツ財団は影響力を強めている。最近も2月に新型コロナウイルス対策に最大1億ドル(約108億円)を拠出すると発表したばかりだ。


3月12日は『サイフの日』。意外と知らないサイフの歴史

2020年03月12日 14時15分40秒 | ニュース

3月12日は『サイフの日』。意外と知らないサイフの歴史

 

2020年03月11日

3月12日は『サイフの日』。意外と知らないサイフの歴史
3月12日はサイフの日です。サイフはお金を持ち運ぶために使われるものですが、実はサイフの誕生は、私たち人間がお金を使いはじめてから長い年月が経ってからのことなんだそうです。
今回は、私たちの生活の身近にあるサイフの歴史を紐解いていきます。
最初の硬貨の登場は紀元前7世紀?

最初の硬貨の登場は紀元前7世紀?

当然のことですが、サイフとはお金を持ち運ぶために使うものです。サイフの歴史を語る上で、お金の歴史は切っても切り離せないでしょう。まずは、お金の歴史から順に追ってみたいと思います。

お金が登場するまで、人々は物々交換をすることで欲しいモノを手に入れていました。しかし、物々交換には問題点があります。自分が持っているモノを相手が欲しがるとは限らないことです。これでは、欲しいモノを欲しい時に手に入れることができません。そこで人々は、比較的価値が下がりにくい塩や貝、布などを、お金の代わりとして使うようになりました。これを『物品交換』と言います。その後、金・銀・銅などの金属が物品交換に使われるようになりました。
ちなみに、世界最古の金貨と呼ばれているエレクトロン貨は、紀元前7世紀頃のリディア王国(現トルコ西部)で生まれた貨幣です。いびつではありますが、丸い金のプレートにライオンの刻印がされたエレクトロン貨は、私たちが普段目にする硬貨に通ずるものがあります。

紙幣の誕生とともに登場するサイフ

紙幣とともに生まれた長財布

紙幣とともに生まれた長財布

少し話は変わりますが、みなさんは『巾着切(きんちゃくきり)』という言葉をご存知でしょうか?巾着切とは、スリのことを指します。サイフが登場するまで人々は、巾着袋に硬貨を入れて持ち運んでいました。スリにもいろいろな手法がありますが、腰につけた巾着の紐を切るなどして金銭を奪うといった犯罪が起こっていたようです。これではおちおち買い物もできないですね。

そんな時代を経て、ついにサイフのもととなるものが登場します。
サイフが生まれるきっかけとなったのは、紙幣の流通でした。17世紀頃、ヨーロッパを中心に紙幣が使われるようになると、それを入れるためのケースが登場します。それが今のサイフの起源となったのです。そのケースは、紙幣を折りたたまずに収納するもので、今の長財布の起源となっているそうです。お金の登場とともにサイフが生まれたわけではなかったのは意外ですよね。

がま口は西洋生まれ?

がま口は西洋生まれ

がま口は西洋生まれ

お金を持ち運ぶ道具として誕生したサイフは、今ではファッション雑貨のひとつとして私たちの生活に根付いています。今では様々なデザインのものがありますが、その中でもレトロな雰囲気が漂う『がま口』は根強い人気を誇っています。

日本生まれと思われがちながま口ですが、実はがま口は、明治時代に西洋から日本にやってきました。日本にがま口を伝えたといわれる山城屋和助は、兵器の輸入のためにヨーロッパやアメリカを巡っている際、当時フランスで流行していたがま口の鞄やサイフを日本に持ち帰ります。それを真似して日本で売り出したことから、日本のがま口の歴史が始まったのです。当時のがま口は口金に真鍮が使われており、一部の富裕層のみが使うとても高価なものでした。しかしその後、安価な溝輪金の口金が登場したことで、一般の人々にがま口が広まっていったのです。日本でがま口が使われ始めたのは、案外最近のことだったんですね。