北京の大気汚染が深刻になっている。
国と国がどんなに「壁」を作っても、空気はそんなことお構いなし!どこへでも流れていく。
地元・福岡をはじめ、大陸に近い西日本では、これからの季節、間違いなく微粒有害物質が飛んでくる。
この汚染は、主に東南の方へ広がると思われるが、北京より北の瀋陽でも、昨日は「黄色注意報」が出た。
しかし、天気予報を見ると、「霾」(mai)注意報。
「霧」とか「霞」なら分かるが、「霾」って、何だ? 「あめかんむり」の下は「たぬき=狸」みたいな字だし。
日本の漢字辞書には「大風が土砂を空に巻き上げて降らせ暗くなること」とある。
中国語の辞書でも「土煙」と書いてあったが、気象用語の意味は「もや」
「もや」じゃないだろ、絶対に!北京から飛んできた汚染物質も混ざっているだろう。
中国で暮らしていて、たまに日本に帰ると、潮風の香りとともに流れてくる空気の良さに感動する。
私が住んでいる所は街なかの方だが、それでも瀋陽よりはずっと呼吸しやすい。
空気が吸えるありがたさを痛感する。
しかし、瀋陽も昔に比べると、ずいぶん空気がきれいになったと思う。
重工業都市である瀋陽には多くの工場があるが、工場を郊外に移し、市街地に緑を増やし、少しでも空気をきれいにしようと努力してきた。
(工場をどこに移しても、地球上の煙は変わらないのだが、そのことは置いといて...)
さらに、昔は、冬に使う暖房の石炭のすすで、外に出ると、コートが薄汚れることもあった。
その時代に比べると、今はそういうことも無くなった。
でも、その分、車の数は格段に増えた。ビルの建設ラッシュによる粉塵もハンパ無い。
電気とガソリン混合のハイブリッドバスも時々見かけるが、焼け石に水。
結果、空気がきれいになったとは言いがたい状況だ。
推定人口700万人の瀋陽でもこんな状況なのだから、2000万人が住む北京の大気汚染が深刻になるのも当然。
これから中国全土の13億人、いや世界中の人が「近代的な物質文化」を求めて、エネルギーを消費したら、どうなるか?
そんなことは、今さら言うことでも無い。
冬でも夏でも快適な部屋に住み、どこへ行くにも車に乗り、レンジでチンの生活をしている私たちが被害を受けるのは仕方が無い。
しかし、こういう時、真っ先に犠牲になるのは、そんな暮らしと関係ない質素な生活をしている人たちではないかと思うと胸が痛む。
一昨年の東日本大震災で、放射性物質の拡散が中国でも心配された。
その時、私は「放射能も確かに心配だが、すぐに人体に害を与える物が中国まで届くとは考えにくい。それより、この汚い排気ガスを吸ってる方がよっぽど体に悪い」と皮肉ったことがあるが、残念なことに、それが目に見えるレベルまで来てしまった。
そして、今度は確実に、この有害物質が日本に届く。
でも、こういうことがあった時、単純に「日本の放射能が悪い」「中国の有害物質が悪い」と考えないで欲しい。
中国国内にも原子力発電所があり、いつでも危険と隣り合わせなわけだし、日本だって、60年代には公害問題で、同じように東京の街がスモッグで覆われたこともある。
「お隣りさん」の兄弟どうし、面倒なことも色々あるけど、こういう時こそ、日本もかつての経験を活かして、協力して欲しいなと思う。
「人助け」は巡りめぐって、必ず自分のところへ返ってくると信じている。
ちなみに、今日の瀋陽の「PM2.5」指数は230。重度汚染警報が出ている。
窓から見える隣りの建物の屋根も、数日前降った雪で白く覆われていたのが、黒くなってしまった。
今日は気温も4度と暖かいし、デパートにでも行こうかと思っていたが、日を改めることにした。
室内の方がいくらか安全だろうと思うが、中国の建物はだいたい気密性が低く、どこからでも隙間風が吹き込む。
だから、出窓なんかすぐに真っ黒。
これは東北の黒土のせいもあると思うけど、本当に日本とは比べ物にならないくらい真っ黒なのである。
家の中にも空気清浄機を置いた方がいいかもしれないが、そういうことだけは無関心だからな~、うちの相方。
大気汚染に限らず、水も土も食べ物も、何でもかんでも化学物質まみれの中で生きていかなければならない現代。
抗生物質でも死なない新種のウイルスのように、どんな環境にも適応して生き残った人類だけが、新時代の人類なのかもしれない。
毎日たばこを吸っても長生きする人もいれば、健康オタクでも早死にする人もいる。
最低限の注意ははらうが、それなりに毎日楽しく生きていくのが、心身ともに健康につながるのかもしれない...と、私は覚悟を決めている。