五里霧中

★ マンガなどの感想 ★

◆ 今月のナポレオン

2017年12月06日 | ◆[不定期] ヤングキング・アワーズ

ヤングキングアワーズ 2018年1月号より

 今月の『僕らはみんな河合荘』感想はこちら
 今月の『蒼き鋼のアルペジオ』感想はこちら
 
 
 
 

以下、ネタばれあります。 (未読の方はご注意ください)

 
 
 
 
 

●ナポレオン -覇道進撃- (長谷川哲也 先生)

 

 ロシア遠征つづき・・・

 ヴィテプスクにて、いったん止まらざるを得ない大陸軍。
 補給は届かず、食料は尽き、街は焼かれて何もない状態で、危機的状況です。

 そんな中、ベルティエから告げられた「悪いニュース2つ」。
 1つは、ロシアとトルコの和平。 

 これにより、ロシア軍は祖国防衛に総力を注ぐことが出来るようになり、
 ナポレオンが懸念するように、名将クトゥーゾフも戻ってくるわけで、
 大陸軍としては厄介極まりないことに・・・

 もう1つは、スウェーデン王太子のベルナドットに裏切りの動きがあるとのことで、
 遠征の危険度が上がりっぱなしとなっています。

 

 

 

 「引き返すべきか」

 さすがにそんな状況では、これ以上進むのは危険だとナポレオンも理解していて、
 引き返すべきかと思案するほど。

 しかし、なんとかロシア皇帝アレクサンドルと、もう1度同盟を結びたいこともあり、
 ナポレオンもだいぶ悩んでいる様子で、読者的にはここで引き返しておくべきと
 考えてしまいますけど、人間なかなかそう上手くはいかないもの。

 そこへ、ウディノ負傷の情報がもたらされ、ますます混迷の中へ・・・と思いきや、
 ウディノに代わり指揮を執ったサン・シール将軍によって、敵を撃破という朗報が!

 「久々にいいニュースだ」と語り、ニヤリとするナポレオン。
 このことが、ロシアからの撤退を取りやめることにつながったのだとしたら、
 運命の皮肉とでもいうべきものを感じずにはいられませんね。

 

 

 

 サン・シール将軍。

 ナポレオンを嫌いながらも、“上官”である彼には従う軍人の鑑のような人物。
 それでいて軍人を軽蔑し、芸術家をめざしていたというから、面白い所です。

 「願望と才能は別モノ」と評するナポレオン。
 軍人としては優秀なのに、芸術家になりたかった男への評価としては妥当ながらも、
 残酷な言葉でもありますね。

 ナポレオンはサン・シールを「ただの道具」と認識し、使いこなそうとしている様子。
 それでも、しくじれば躊躇なく処分すると考えているあたり、サン・シールがナポレオンを
 嫌うのと同様に、ナポレオンも彼を嫌っているということなのでしょう。

 そうした緊張関係にありつつも、軍人としてはプロフェッショナルな2人が、
 互いに協力し合うような形になっているのは、愉快でさえあります。
 同じくナポレオンを嫌うベルナドットとは違いますね。

  

 

 

 進軍!

 サン・シールの勝利により、北の脅威は消えたと判断したナポレオン。
 そのまま進軍を命じることに・・・

 スモレンスクで合流するであろうバルクライとバグラチオンを、
 後方から急襲すると述べていますが、この機動は「ナポレオン傑作のひとつ」と
 考えられているとのことで、彼の軍才が衰えていないことを感じさせますね。

 しかし「成功すれば遠征は終わったかもしれない」なんて説明が、
 何とも歯がゆい先行きを予感させてくれて、ニクイ所(^^;

 行軍する兵士たちの中から脱落者が出て、置いて行かれる描写から、
 いかに過酷な進軍であったかを察せられます。

 

 

 

 兵士たちの戦い。

 スモレンスク南で起きた戦闘にて、「俺はもう何人殺したんだろう」と考えつつ、
 戦いに挑む兵士・ルカは、当初のノンキな雰囲気もなく、兵士になっている顔つき。

 銃撃ではなく、近接戦闘で敵兵を倒し、その際に感じる手応えにひるむも、
 「すぐ済むから!」「早く死ねっ」なんて言いながら、トドメを刺している姿が必死で、
 まさに兵士としての戦いといった趣を感じずにいられません。

 さらに至近距離での撃ち合いも、死が間近にあることを思わせる場面であり、
 生と死は紙一重だと思わせますが、ルカくんが意外な“幸運”によって助かったのは
 面白い所でした。

 そして、燃えるスモレンスクの街。
 逃げ惑う民衆と、広がる火の手が、地獄絵図ともいえる風景であったものの、
 その光景を目にしたジュノーが興奮したり、兵士たちが見とれていたのは、人の業か。

 ルカくんも「これが戦争でしか見られないもの・・・」と驚愕しながら目を離せず、
 それに対してビクトルさんの語った言葉が、全てを言い表す感嘆の形容詞だったことも、
 その業の深さを見せつけられるようで、胸に響きましたよ。

 などなど、ロシア遠征も続行中で、ギリギリの状態ながらも、いまだ大陸軍優勢。
 このままロシア領内を進んでゆき、彼らはどこへ行きつくのか?
 地獄絵図に感動してしまう業を秘かに自覚しながら・・・今後も楽しみです!

 

◆ ヤングキングアワーズ 感想

 


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