皇太子さまは13日、デンマークを15日から訪問するのを前に東京・元赤坂の東宮御所で記者会見に臨み、天皇陛下から引き継ぐ象徴としての務めなどについて語られた。一問一答は以下の通り。

 −−デンマークを訪問するに当たり、抱負をお聞かせください。デンマーク王室は日本の皇室ともゆかりの深い国です。ご自身の思い出や、天皇、皇后両陛下から聞いている話があったらご紹介ください。また、雅子さまは同行を見送られましたが、その理由と現在のご体調、今後の外国訪問の見通しについてお聞かせください

 「このたびデンマーク国政府からご招待いただき、日デンマーク外交関係樹立150周年名誉総裁として、同国を訪問できますことを大変うれしく思っております。ご招待に対して心から感謝致します。私にとりまして、デンマークへの訪問は平成16年にフレデリック皇太子殿下のご結婚式に参列するために同国を訪れて以来ですので、13年ぶりになります。今回の訪問は日デンマーク外交関係樹立150周年という記念すべき年に行われます。両国の間には1867年に修好通商航海条約が締結されて以降、さまざまな分野で幅広い交流が行われてきました。そして150周年となる本年は、1年を通じてさらに多くの交流行事がすでに実施され、あるいは今後実施される予定とうかがっております」

 「私自身も今年2月、国立西洋美術館において開催された『スケーエン デンマークの芸術家村展』に雅子とともに出席致しました。そこでは当時、訪日中だったボック文化協会大臣をはじめ、多くの関係者が一堂に集い、150周年を祝う姿がとても印象的です。そしてまた、今まであまり知ることのなかったデンマークの画家の作品を多く鑑賞することができました。これまでのところ、この展覧会を含め、両国における記念事業は、いずれも順調に行われてきているとうかがっており、今回の訪問中、デンマークで行われるさまざまな記念事業に出席することを楽しみにしております」

 「デンマークについては平成16年の訪問前の会見のときも、社会福祉の先進国で国際的な人道支援にも積極的、女性の社会進出が目覚ましいといった点を挙げましたが、その印象は13年を経た今日でも大きく変わってはおりません。同国では引き続き、子供や高齢者、障害者などの社会的弱者に配慮した福祉政策、女性が社会で活躍しやすい環境づくり、地球温暖化対策といった環境保全面での先進的取り組みなど、国際社会が抱える諸課題に対処するために既存の考え方や決まり事に縛られることなく、良いと思えば積極的に取り組んで、変えるべきことは躊躇(ちゅうちょ)なく変えることによって、革新的な取り組みを進めており、国際社会にとって参考となる点は非常に多いと承知しております」

 「また、デンマークは童話作家のアンデルセンをはじめ、文学や学術、音楽といった面で著名な方を輩出している国としても有名です。アンデルセンの童話には幼少のころから親しんでおりましたが、音楽の分野では昭和56年にマルグレーテ2世女王陛下およびヘンリック王配殿下が国賓として訪日された折の答礼晩餐(ばんさん)会において、カール・ニールセンの曲が演奏され、とても印象的な曲であると感じたことを思い出します。また、昨年、NHK交響楽団の演奏会で、同じニールセンの交響曲第5番を聞いたのもデンマークとのご縁を感じます」

 「このような背景のもと、今回のデンマーク訪問において、特に私が関心を払っていきたい点についてお話ししたいと思います。まず今回の訪問を通じて、わが国とデンマークの間に培われてきた交流の歴史に思いをはせたいと思います。両国間では長きにわたり、王室と皇室の間、両国の政府、国民の間で幅広い交流が行われてきました。その中には1957年2月、和歌山県日ノ御埼沖で炎上していた徳島県の木材運搬船『高砂丸』の日本人船員の命を救おうとして、自らの尊い命を落としたデンマーク貨物船『エレン・マスーク号』のヨハネス・クヌッセン機関長の勇敢な行動をたたえるために、毎年、日ノ御埼で2月に行われている慰霊献花式もあります」

 「また、今回訪問するオーデンセ市と千葉県の船橋市は1989年に姉妹都市提携に調印し、その後、船橋市にはオーデンセ市の協力を得て整備された船橋アンデルセン公園が開園し、週末になると家族連れでにぎわっていると聞いています。さらに今回、視察予定の王室における日本展では、両国の王室と皇室の親密なつながりを示すさまざまな展示物を見ることができるとうかがい、楽しみにしています。また、在留邦人や日本にゆかりのあるデンマーク人といった方から両国の交流の歴史と現在の状況について、いろいろとお話をうかがえればと思っています」

 「第2に、この1年を通じて両国でさまざまな記念事業が開催されますが、それらを契機として、今後、両国間の交流と友好親善がさらに深まることを期待しております。特に今回の訪問では、三分一博志(さんぶいち・ひろし)氏の建築展や日本から学ぶというデザイン展を視察する予定のほか、同じく視察先のアンデルセン博物館が現在計画している改修では、日本人の建築家、隈研吾(くま・けんご)氏が設計に携わっているとうかがっています」

 「このように文化、芸術分野をはじめとして、日本とデンマークがお互いに影響を与えながら、その質を高めてきたことを改めて認識するとともに、今後の交流と友好親善の促進に貢献できればと思っています。また、東日本大震災の直後、フレデリック皇太子殿下が宮城県の東松島市を訪問されたことをきっかけとして、両国の市民の間で温かい交流が続いていると承知しています。今回の訪問により、そうした交流によって生まれた両国間の絆がさらに強固なものになるように、そして両国民間の交流が一層進むよう期待しております」

 「第3に、先ほどもお話ししたようにデンマークは少子高齢化や子供の貧困といった社会問題、地球温暖化といった環境問題について、先進的な取り組みを講じており、わが国も参考にできることが多いのではないかと思います。社会福祉の面では、今回、国民高等学校を訪問する予定ですが、そこではデンマークの福祉政策を勉強している日本人も来られるそうです。また、持続可能な開発という点に関しては、今回、洋上風力発電のための機材を製造する工場を視察しますが、日本の企業との協働で行われているとのことで、まさしくデンマークと日本との協働作業の実例といえるかと思います。今回の訪問を通じて、こうした両国の特徴を生かし合った取り組みを今後さらに促進していくための一つのきっかけとなればと期待しております」

 「なお、私が個人的に関心のある水問題に関しては、デンマークはいわゆるバイキングの時代からの伝統的な海運国であり、今回、視察を予定している海運博物館において、デンマークの海運国としての隆盛の歴史に触れることを楽しみにしています」

 「デンマーク王室との関係については、これまで行われてきた数多くの皇族、王族の往来を通じて、とても親密な関係が構築されていると思います。天皇、皇后両陛下には、平成10年に国賓としてデンマークをご訪問になったほか、皇太子、皇太子妃でいらっしゃった昭和60年にも同国をご訪問になっており、その際の訪問先のことや、お会いになった人々の優しさ、心温まるおもてなしなどについて、折に触れて両陛下よりうかがっております」

 「私自身もフレデリック皇太子殿下との間では、東宮御所で雅子とともにお昼をご一緒した平成9年以降、これまで何度もお会いし、親交を深めることができました。フレデリック皇太子殿下は、とても明るく気さくな方です。平成16年のご結婚式にうかがって以降は、平成17年の愛知万博や平成25年のオランダ国王陛下のご即位式の折に当たり、メアリー妃殿下とご一緒にお会いし、最近では平成27年3月に東宮御所に両殿下で晩餐にいらっしゃっていただいております。今回、マルグレーテ2世女王陛下やフレデリック皇太子同妃両殿下に再会できることをとても楽しみにしております」

 「また、東日本大震災の折、両陛下にはご自身の工芸作品をチャリティーに出され、その売り上げをご寄付いただいたほか、フレデリック皇太子殿下もデンマーク企業からの義援金を集めていただきました。女王陛下をはじめ、デンマーク王室の方々が震災の被災地に心を寄せていただいていることに対し、この場をお借りして改めてお礼を申し上げます」

 「また、雅子も今回、デンマーク政府よりご招待いただいたことを大変ありがたく思っており、できれば訪問したいという気持ちでおりましたが、訪問中の諸行事や現地での移動を含む日程、今回の訪問の前後における国内での諸行事等を総合的に勘案した結果、今回は私一人で訪問することになりました。雅子はフレデリック皇太子殿下、メアリー妃殿下とも親しくさせていただき、楽しい思い出も多くありますので、今回おうかがいできないことを大変残念に思っております。雅子はこれまでも申し上げている通り、治療を続ける中で、体調に気をつけながら努力と工夫を重ね、公私にわたってできる限りの務めを果たそうとしておりますが、依然として体調に波もありますので、外国訪問を含め、活動の場がすぐに広がるわけではありません。従って今後の外国訪問の見通しについて、現時点でお答えすることは難しいと思います」

 −−天皇陛下の譲位を実現する特例法が成立したことの感想をお聞かせください。今後、両陛下が果たされてきた国際親善をどう受け継ぐか、また、戦没者慰霊のための外国訪問を行う考えはお持ちでしょうか。皇族の人数が減る中、雅子さまとは皇室の国際親善のあり方について、どのような話をされていますか

 「特例法という皇室の制度面の事項については、私が言及することは控えたいと思います」

 「国際親善のための外国訪問については、訪問先の国とわが国との相互理解と友好親善を増進する上でも、とても良い機会であり、皇室の役割の一つとして極めて重要であると考えます。両陛下は外国訪問に当たり、相手国とわが国との歴史を心にとどめられ、将来を見据えて両国間の相互理解と友好親善をどのように促進していくのが良いかということを常に深くお考えになりながら、ご訪問先での諸行事に臨んでいると思います。こうした両陛下のなさりようを拝見して参りましたので、私としても両陛下の気持ちを大切にして、国際親善に努めていきたいと思っております。4月のマレーシア訪問においても、両陛下の3度にわたるご訪問と、その間に培われたマレーシア王室およびマレーシア国民との親近感を基礎として、同国の人々、特に若い世代の人々との交流に努めてまいりました」

 「戦没者追悼のための外国訪問については、両陛下には日本人か外国人かを問わず、先の大戦において不幸にして犠牲になられた方に対し、心を込めて慰霊をなされたいとのお気持ちを大切になさり、これまでさまざまな国をご訪問になってこられたものと受け止めております。私としても、こうした両陛下のお気持ちに思いを致しながら、これからの外国訪問に真摯(しんし)に取り組んでいきたいと思います。こうした皇室の国際親善のあり方については、日ごろから雅子とも話をしてきておりますし、今後もいろいろな機会を捉えて話し合っていきたいと思います」

 −−天皇陛下のご譲位について、また、陛下が全身全霊で取り組まれてきた象徴天皇の役割を引き継ぐことについて、どのように受け止められていますか

 「今年2月の私の誕生日の記者会見にあたっても述べましたとおり、陛下が昨年8月のお言葉の中で、全身全霊をもって象徴の務めを果たしていくことが難しくなるのではないかと、お案じになられたことについて、とても心を揺さぶられましたが、同時に陛下のお気持ちについては十分お察し申し上げており、陛下のお考えを真摯に重く受け止めております。また、象徴天皇の役割については、陛下は長年にわたり、象徴天皇としてのお務めを果たされる中で、お仕事の一つ一つを心から大切にして取り組まれながら、そのあるべき姿について真摯に模索してこられました。そうした陛下のお気持ちを十分に踏まえ、また、歴代の天皇のなさりようも心にとどめながら、これまで陛下より引き継がせていただいた公務も含め、それぞれの務めに全身全霊で取り組んでまいりたいと思います」

 −−両陛下のなさってきた戦没者慰霊について、両陛下のお気持ちに思いを致して、真摯に取り組んでいきたいとおっしゃいましたが、やはりそうした機会があれば慰霊という形での外国ご訪問もなさっていきたいとお考えでしょうか

 「そのことについては、今の立場で申し上げることは差し控えたいと思います。ただ、陛下が今お話ししたような思いで、本当に心からの気持ちを示されながら、慰霊をなさっているお姿は大変感慨深くいつも拝見しております」