大都市圏で近年、宗派や国籍を問わずに遺骨を受け入れるビル型納骨堂の建設が相次いでいる。寺院関係者によると、遺骨の出し入れをコンピューターで自動制御し、数千規模の遺骨を収容できる納骨堂は全国に約60カ所あり、うち半数は東京都に集中する。利便性が高い都市部にあるほか、檀家(だんか)にならなくてもいい手軽さから支持されているが、運営する宗教法人に課税する動きもみられる。

 自動搬送式の納骨堂には参拝ブースがある。タッチパネルにICカードをかざすと、「○○家」などと刻まれた銘板付きの納骨箱が、立体駐車場のような収蔵庫から運ばれ、ブースの墓石にはめこまれる仕組み。花や焼香は用意されているのが一般的で、屋外の墓とは違って草むしりなどの手入れをする必要はない。

 金沢市に本院がある曹洞宗「伝燈院」は4年前、東京メトロ・赤坂見附駅近くの一等地で自動搬送式の「赤坂浄苑」(港区)の運営を始めた。約3800基分を納骨でき、価格は1基150万円(年間管理料1万8000円)。仏壇仏具販売大手の「はせがわ」(福岡市)に販売や営業を委託し、既に約1500基が売れた。

 ビルの2、3階に参拝ブースが計12カ所あり、平日なら午後9時まで利用できる。今年5月下旬、父親の墓参りで赤坂浄苑を訪れた埼玉県内の男性(60)は「普通の霊園の墓より割安だし、妻との買い物ついでに手ぶらで寄れる気軽さもうれしい」と話した。

 東京に限らず、愛知や福岡などでもビル型納骨堂が建てられている。大阪府内では今年4月、初めて自動搬送式の納骨堂(4階建て、1780基)が吹田市内に誕生した。真言宗「常光円満寺」が運営し、価格は1基68万〜88万円(年間管理料1万円)。3カ月半で約200基の契約が成立した。

 自動搬送式が登場する以前から、区分けされた棚に遺骨を入れるロッカー式の納骨堂は多数ある。地方の墓守がいなくなり、墓じまいして都市部の納骨堂に改葬するケースが多いため、今後も利用者が増えるとみられる。【山崎征克、近藤大介】

 ◇「ビジネス」判断 課税も

 東京都は2015年3月、伝燈院に対し、固定資産税と都市計画税計約400万円の課税を通知した。5階建てのビルのうち、参拝所や納骨堂に使う2〜4階部分が主な課税対象になった。宗派を制限せずに遺骨を受け入れていることや、販売委託する会社にビルのスペースを提供して手数料を払っていることなどを考慮し、都はこうした運営方法が宗教行為に当たらないと判断した。

 地方税法は宗教法人が宗教目的に使う不動産を非課税とすると規定。伝燈院側は課税取り消しを求めて提訴したが、昨年5月の東京地裁判決は都の主張を全面的に認めて訴えを退けた。寺院関係者によると、ビル型納骨堂を運営する他の宗教法人も同様に課税されているケースがあるという。伝燈院の角田賢隆副住職(37)は「他宗派の方も受け入れ広く布教するのは宗教行為だと思うが、『ビジネス』と判断されれば仕方ない」と話した。

 ◇分け隔てない救済、妥当

 北海道大大学院の桜井義秀教授(宗教社会学)の話 さまざまな事情の人々を分け隔てなく救済するのが宗教のはずだ。少子高齢化で檀家制度が崩れつつある中、寺院側が時代のニーズに合わせて都市部に納骨堂を建てるのは自然な流れと言える。宗派を問わず遺骨を受け入れる施設に課税する東京都の判断には疑問を感じる。

 ◇販売、宗教行為といえず

 寺院経営に詳しい慶応大の中島隆信教授(応用経済学)の話 同じ仏教でも各宗派で本来、弔い方などが異なる。宗派を制限せず遺骨を受け入れるのは納骨堂の契約を多く成立させるためとしか言えず、ビジネス行為と考えられる。料金を設定する販売という面からも宗教行為と考えにくく、今回の東京都の課税は妥当だ。