面白き 事も無き世を 面白く
住みなすものは 心なりけり

「宇宙兄弟」

2012年05月05日 | 映画
宇宙が大好きで、毎日宇宙のことばかり考えている、南波六太(ナンバ・ムッタ)と南波日々人(ナンバ・ヒビト)の兄弟。
ある夜、なんと二人はUFOを目撃する。
猛スピードで月へと飛び去って行くのを目撃した弟のヒビトは、瞳を輝かせて言う。
「俺さ、将来は宇宙飛行士になって、月に行くことにしたよ。ね、ムッちゃんは?」
突然の“宣言”に、先を越されたような雰囲気になってしまい、弟に負けるワケにはいかない兄のムッタは言葉を返す。
「お前が月に行くんなら、兄ちゃんはその先へ行くに決まってる。火星にいくよ!」
「すっげぇ!さすがムッちゃん!」
「よし、そしたらヒビト、約束だ。俺たちは二人で宇宙飛行士になるぞ。二人で一緒に宇宙に行こう!」

時は流れて西暦2025年。
子供の頃に“宣言”した通り、ヒビト(岡田将生)は宇宙飛行士となり、日本人初の月面探査メンバーに選ばれる。
一方兄のムッタは、いつしか夢を諦めてフツウに大学を卒業し、フツウに自動車メーカーのデザイン開発社員として働いていた。
しかし自分が精魂込めて進めてきた新車開発プロジェクトが、社長の鶴の一声で頓挫した挙句、あろうことか上司に頭突きをかまして会社をクビになってしまった。

全世界の注目を集め、まもなく月へと飛び立とうとして胸を張る弟に比べ、無職になってしまったムッタは、就職活動もうまくいかないまま背中を丸めて落ち込むばかり。
そんな虚しい時間を送っていたムッタのもとに、ひとつの手紙が届いた。
差出人は「宇宙航空研究開発機構」(JAXA)。
その内容はなんと、宇宙飛行士選抜試験の書類選考通過の通知だったのだ。
そもそも、そんな試験に書類を送ってなどいないムッタが訝しがっているところへ、ヒビトから電話が入る。
「忘れたのかよ、あの約束。」
子供の頃の約束をすっかり忘れてしまっている兄に内緒で、ヒビトが応募していたのだった。
ずっと約束を忘れずに、ついに夢を叶えて宇宙飛行士となった弟の思いを受けて、ムッタは諦めていた夢に向かって走り出した……!


2011年、「講談社マンガ賞」と「小学館漫画賞」をW受賞(同じ年に両賞を受賞)という史上初の快挙を達成した大ベストセラー漫画「宇宙兄弟」の映画化。
原作の存在は知っていたものの読んだことは無かったのだが、そんなことは本作の鑑賞には全く問題なし。
何の予備知識も要らず、黙ってイスに座って画面を眺めているだけで、スーッと物語の中へと入っていくことができる。
そして子供の頃、学研の「宇宙」の図鑑を眺めながら、自分が月面や土星の衛星に降り立ったり、太陽の表面に限りなく近づいたりする場面を夢想して楽しんでいたことを思い出した。


JAXAの全面協力により、普段は関係者以外誰も入ることのないエリアを取材したスタッフにより、忠実に再現された宇宙飛行士選抜試験の様子はリアリティに溢れていて興味深い。
また、アメリカ・フロリダにある、NASAの「ケネディ宇宙センター」での撮影シーンは圧巻。
「ロケット・ガーデン」という、アポロ計画時代からのロケットが立ち並ぶ前で、ムッタとヒビトが出会う場面には、まるで我が事のように胸が高鳴った。
その他にも、ムッタがヒビトの打ち上げを見ることになる旧管制塔や、ヒビトがロケット組立棟の前を歩きながらムッタと電話するシーンなど、NASAの敷地内で撮影された貴重な映像が次々登場する。
機密事項が多く、常にロケット打ち上げを控えるNASAにおいて、日本映画の撮影が許可されるというのは極めて異例で画期的なことであり、粘り強く交渉を続けたスタッフの熱意を受けて描かれたのだから、感動的な場面になるのも当然というもの。

更には、アポロ11号の乗組員として、アームストロングに次いで月面を踏んだ、宇宙開発史にその名を刻む英雄であるバズ・オルドリンが、本人役で登場してくるのも見どころのひとつ。
とても宇宙飛行士とは思えない堂々たる演技で宇宙への夢を語る姿は、実際に月面を歩いてきた男ならではの説得力を持って感動的。
ヒビトが日本人で初めて月面着陸のクルーになる、また兄弟で宇宙飛行士になるという、ある意味非常に気宇壮大な物語がリアリティを持って胸に迫ってくるのは、こうした数々の“ホンモノ”を使った撮影の賜物だ。


主題歌には、イギリスのロックバンド、コールドプレイの「ウォーターフォール〜一粒の涙は滝のごとく」が使われているが、彼らが映画に楽曲を提供するのは初めてだとか。
ファンであったという森監督が、ダメ元で出したオファーに、曲の持つ世界観と映画が描く世界とがマッチしているとして快諾したというだけあって、作品の余韻を更に心地よいものにしている。


日本人初の兄弟宇宙飛行士を目指すヒビトとムッタの熱い兄弟愛と、夢に向かってリスタートを切ってひた走るムッタの熱い情熱と、そして「兄弟で宇宙飛行士」という夢に期待を膨らませる周囲の熱い眼差しが織りなす、心温まるストーリー展開に、最後までスクリーンから目が離せない、一級の娯楽作品!


宇宙兄弟
2012年/日本  監督:森義隆
出演:小栗旬、岡田将生、麻生久美子、濱田岳、新井浩文、井上芳雄、塩見三省、堤真一
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

お得情報。

2012年05月04日 | ニュースから
妻が年下であるほどお得な加給年金 ただし申請忘れると大損(NEWSポストセブン) - goo ニュース


昨今流行りの「年の差婚」の世帯は、絶対に忘れないようにしておかないともったいない話。
「年金官僚たちはわざと制度を複雑怪奇に設計することで、国民が制度のメリットを享受しにくくし、もらい忘れを誘発して、集めた保険料を掠め取ろうとする」というのは、けだし名言。
年金官僚に限らず、官僚というものはそういう生き物だろう。
申請や申告が必要なものは、その作業を面倒で分かりにくいものにしておき、更に周知徹底などせずに放置しておけば、誰も利用しないまま、血税を浮かせることができる。
いかにして“一般市民”から血税を絞りとり、掠め取って甘い汁をすするだけすするかに日夜血道をあげるのも仕事のひとつに成り下がっていると思うのは、自分だけではあるまい。
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

「劇場版SPEC〜天〜」

2012年05月03日 | 映画
通常の捜査では解決できない特殊な事件を専門に扱う「警視庁公安部公安第五課未詳事件特別対策係」。
通称“未詳(ミショウ)”と呼ばれるこの部署に所属する特別捜査官の当麻紗綾(戸田恵梨香)と瀬文焚流(加瀬亮)のもとに入った「ミイラ死体殺人事件」の情報。
先に遺体で発見された同僚刑事も、同じようにミイラ化していた。
真相を追って捜査を進めるにつれて現れる数々の謎。
「シンプルプラン」と呼ばれるプロジェクトは何か?
「ファティマ第3の予言」とは?
謎が謎を呼び、更にまた謎を呼びながら、当麻の左手がうずきはじめる……


人間の脳の大部分は使われずに“眠っている”と言われている。
しかし、通常は“眠っている”部分が活性化すると、人間の叡智が及ばないような特殊な能力が使えるようになるという。
そんな「超能力」(=SPEC)を持つ人間(=スペックホルダー)のうち、何%かが自らのスペックを悪用しているとすれば、真相を明らかにできないまま「未詳事件」として未解決の事件が発生するのは必定。
原因や殺害方法その他、事件の全容が明らかにならない「未解決事件」は、もしかすると悪意をもった超能力者の仕業なのかもしれない(多少マジで)。

常軌を逸した難事件を解決するためには、常人をはるかにしのぐIQを誇り、決して常識にとらわれることのない当麻は適任。
そして彼女の相棒を務められるのは、これも常人を超えた体力を持つ瀬文が適任。
互いに“キレキャラ”として激しく罵り合いながらも、抜群のコンビネーションを発揮する当麻と瀬文の二人による“バディもの”でもある「SPEC」の劇場版は、物語の流れである「起承転結」の「転」にあたるシリーズのクライマックスとなるラストに向けた前段。
テレビドラマのシリーズと特別編の「翔」を見ていなくても、本作は独立して楽しむことができる。
とはいえ、やはりこれまでのシリーズについて、ある程度知識がある方がより楽しく観ることができるので、「SPEC」シリーズをこれまでご覧になったことの無い方は、ぜひパンフレットを購入しておくことをお勧めする。
なんとパンフレットにはテレビシリーズにおける各回と、特番である「翔」の、全てのあらすじが載っている。
上映の前にあらかじめ購入しておき、あらすじ部分を事前に読んでおけば、劇場版の面白さが際立つというものだ。
ただし本作のあらすじは読まずにご覧になることをお勧めする。


超能力を持つがゆえの悲哀を切なく描いた名作「七瀬ふたたび」のテイストを漂わせつつも、イマドキなキャラクターを縦横無尽に配して「堤ワールド」を炸裂させた、SF刑事ドラマ。
(と言っても「ロボット刑事K」ではないので念のため)


劇場版SPEC〜天〜
2012年/日本  監督:堤幸彦
出演:戸田恵梨香、加瀬亮、伊藤淳史、栗山千明、三浦貴大
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

「アポロ18」

2012年05月02日 | 映画
1961年に始まり、1969年には人類を初めて月面に送り込んだ「アポロ計画」は、1972年のアポロ17号による月面着陸を最後に、突如中止された。
ところが、それから40年を経た今、インターネットの片隅で、ある映像が発見された。
そこに映し出されていたのは、アポロ17号で終了したとされていた「アポロ計画」に18号が存在して月面着陸を果たしていたということだけでなく、決して表に出ることのなかった月世界の真実だったのである!


NASAが極秘裏に進めたこの「最後のアポロ計画」は、軍事目的によるものだった。
月へと送り込まれた3人の宇宙飛行士に与えられたミッションは、当時のソ連を監視するための“装置”を月面に設置すること。
比較的簡単なミッションに取りかかったとき、月面に自分達以外の「足あと」を発見する。
なぜ、こんなところに足あとがあるのか…?
その謎を追った彼らは、明らかにアメリカのそれとはことなる月面探査機を発見して愕然とする。
なんと、月面着陸を達成したのはアメリカだけとされていたが、実はソ連も成功していたのだ。

世界に誇るべき偉業を達成したはずのソ連が、なぜこの事実を公表していないのか。
そしてNASAはその情報をつかんでいたと思われるのに、アポロ18号の乗組員達には隠されていたのはなぜか。
彼らが記録した映像には、軍事目的は表向きのもので、真の目的が存在していたことを物語っていた。
そこには、人類の想像を絶する、衝撃の事実が隠されていたのだ……!


アメリカの威信をかけた世紀のプロジェクトであった「アポロ計画」が、なぜ突如中止となったのか。
表向きは予算の都合によるものとされたが、その裏には隠された真実があるとして様々な「都市伝説」も生まれているが、その憶測に対するひとつの回答を描いたサスペンス・ドキュメンタリー。


アポロ18
2011年/アメリカ=カナダ  監督:ゴンサーロ・ロペス=ギャレゴ
出演:ウォーレン・クリスティー、ロイド・オーウェン、ライアン・ロビンス
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

「アーティスト」

2012年05月01日 | 映画
1927年のハリウッド。
銀幕の大スター、ジョージ・ヴァレンティン(ジャン・デュジャルダン)は、共演した愛犬と共に、新作の舞台挨拶で満員の観衆から拍手喝采を浴びていた。
劇場前は熱狂的なファンが押し寄せて大混乱。
そんな中でマスコミの取材を受けていると、ひしめき合う群衆からはじき出されるように出てきた一人の若い女性から、ヒップで突き飛ばされる。
怒るどころか微笑んで優しく振る舞うジョージに感激した女性は、あろうことか大スターのほほにキス!
その瞬間をとらえた写真が、翌朝の新聞でトップを飾った。

大スターと一緒に新聞のトップを飾った彼女の名前はペピー・ミラー(ベレニス・ベジョ)。
ハリウッド・スターを目指す彼女は、自分が大々的に載った新聞を手に、映画会社のキノグラフ社へとやってきた。
関係者に新聞を見せて売り込みをかけてみるものの効果はなかったが、持ち前の弾けるような明るい笑顔とキュートなステップを披露すると、ジョージ主演の新作映画にエキストラとして採用される。

憧れの大スターとの再会と夢のような共演に感激のペピーは、撮影終了後にジョージの楽屋を訪ねた。
ジョージは、「女優を目指すのなら、目立つ特徴がないと」と、アイライナーで彼女の唇の上に、小さなほくろを描く。
その日を境にして、ペピーの快進撃が始まった。
ダンサー、メイド、名前のある役と、順調にステップアップしていくペピーは、遂に映画ヒロインにまで駆け上る。

1929年。
トーキー映画が登場すると、キノグラフ社はいち早くこれを作品の中心に据えることにする。
しかしジョージは、音声の出る試作フィルムを見て一笑に付すと、「サイレント映画こそ芸術だ」と主張、社長(ジョン・グッドマン)と決別すると、自ら監督兼プロデューサーとして、サイレント映画の製作に取りかかった。
大スターを失ったキノグラフ社だったが、ニュー・ヒロインとしてペピーを主演に据えたトーキー映画を製作。
そしてジョージの新作とペピーの新作とは、期せずして同じ日に公開されることになる。

連日観客が列をなして押し寄せる大ヒットとなったペピーの作品に対して、ジョージの新作は惨憺たる興行成績となった。
莫大な自己資金をつぎ込んだ映画が大コケしたジョージは、失意のどん底に沈んで心を閉ざして妻にも愛想を尽かされ、家を放り出される。
一方ペピーは、トーキー時代の新たなスターとして出演作が次々にヒットし、絶大な人気を得るまでになっていく。
過去の栄光に固執して苦悩するジョージの人気は、凋落の一途をたどった。
折からの世界大恐慌による不況の嵐が吹き荒れる中、生活にも困るようになって自暴自棄となったジョージに、変わらぬ愛情を抱いていたペピーは、救いの手を差しのべようとして…


第84回アカデミー賞において、作品賞、主演男優賞、監督賞など5部門を受賞した話題作。
サイレント映画が作品賞を受賞するのは、第1回アカデミー賞以来83年ぶり。
CGによるリアリティあふれる特撮映像や、3Dによるド派手な映像が幅を利かせる昨今、サイレントのモノクロ作品がアカデミーを制覇したことは、進化した撮影技術への依存に対するハリウッドの自省の念の表れか、単なる“映画人”たちのノスタルジーの賜物か。
そんなことを考えてしまうのは己の根性の曲がり方が相当なものである証拠だろう。
それはともかくとして、豊かな表情や動きによる感情表現や、細かい小道具の使い方などの、サイレントならではの細やかな演出方法は、音や撮影技術に頼らずとも良い作品が創り出せることを改めて証明するものと言える。
またジョージとペピーを演じた主演の二人が、サイレント時代のスターそのものといった風情で、当時の雰囲気を見事に表しているのも、本作の妙味となっている。

映画がサイレントからトーキーへと移行していく時期のハリウッドを舞台にした、大スターと新進女優のラブ・ストーリーといえば「雨に唄えば」を思い出すが、全く趣を異にした新たなキャラクター設定に、イマドキのテイストがうまくアレンジされている。
大スターとなったペピーに対して、彼女の自分への思いを素直に受け入れられずにジョージは自暴自棄となるが、そんな彼にペピーが「ごめんなさい」と自分に否があると詫びるペピー。
ジョージの高慢とさえ言えるプライドを、決して傷つけることなく大きな母性で包み込む姿は菩薩の如し。
過去の栄光にしがみついて離れられない情けない中年男が、一途に自分に対する愛情を持ち続けている元気溌剌の若い女性に癒され、励まされる姿に、昨今流行りの「歳の差婚」成立の一端を見た思いがした。
いくつになっても男はガキのような精神構造を持ち続けていて、いくつであっても女性は大らかな母性を持っているもの。
「愛があれば歳の差なんて」という言葉の持つ意味のひとつがここにある(と思う)。


なお、本作は全面的に“サイレント”で作られた作品だと思っていたのだが、実は一部で自然に音声が入っていて驚いた。
しかしそれが実に効果的な演出になっていて、より感動を深めてくれるところがまた憎い。

今観ることが新鮮なサイレント映画の手法で情感豊かに描いた。オーソドックスなラブ・ストーリーの秀作。


アーティスト
2011年/フランス  監督:ミシェル・アザナヴィシウス
出演:ジャン・デュジャルダン、ベレニス・ベジョ、ジョン・グッドマン、ジェームズ・クロムウェル、ペネロープ・アン・ミラー、ミッシー・パイル、ベス・グラント、ジョエル・マーレイ、マルコム・マクダウェル、エド・ローター、ケン・ダビティアン
コメント (0) |  トラックバック (1) | 

「シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム」

2012年04月23日 | 映画
ヨーロッパ各地で爆破事件が相次いだ。
天才的な頭脳を持つ名探偵シャーロック・ホームズ(ロバート・ダウニーJr.)は調査を進める中で、結婚式を翌日に控えた相棒のワトソン(ジュード・ロウ)を連れてとあるクラブを訪れる。
そこでホームズは、捜査のヒントを求めてジプシーの占い師シム(ノオミ・ラパス)のもとを訪ねるが、そこには暗殺者の影が潜んでいた。

翌日挙式を上げたワトソンは、新妻と共に出発した新婚旅行の列車で何者かに襲われる。
敵の攻撃を想定していたホームズによって助けられたワトソンは、モリアーティ教授(ジャレッド・ハリス)が自分達夫妻の命も狙っていることを知り、ホームズ、シムと共に教授の陰謀に立ち向かう……


ガイ・リッチー監督、ロバート・ダウニーJr.主演の「シャーロック・ホームズ」シリーズ第二弾。
前作をスケールアップし、全ヨーロッパを巻き込んでの壮大な陰謀に、相棒のワトソンと共に立ち向かうホームズの姿を描く。
これまた前作よりも激しさを増したド派手なアクションが展開するだけでなく、原作でおなじみのホームズの永遠のライバルであるモリアーティ教授が登場し、ホームズに負けず劣らずの鮮やかなスタントを見せる。
もはや原作の探偵小説の面影はどこへやら、ドキドキワクワクの冒険小説に生まれ変わっている。
しかしながら、シャーロック・ホームズというキャラクターだけを借りて好き放題作りました!というだけではない。
オマージュとして原作のセリフをそのまま使っている部分もあるところは、小説のファンには注目してほしいポイントである。

本作ではもう一点、配役にも注目。
ハリウッドリメイクが評判となっている「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」で主人公のリスベットを演じたノオミ・ラパスが、エキゾチックなジプシーの占い師役で登場しているところ。
「ミレニアム」とはうってかわってジプシーの中心人物として、大声を張りあげながらの大活躍がカッコイイ!
ミラ・ジョヴォビッチの向こうを張るアクション女優として、更なる活躍を期待したい。


とは言いながらも、今回のホームズの“変装”場面は、あまりにも原作のキャラからかけ離れ過ぎてはいまいか!?
どちらかといえば、いしいひさいちの描くホームズのキャラに近く、映画で言えば「ピンク・パンサー」オリジナル・シリーズにおけるクルーゾー警部の“弟子”ケイトーが独り立ちしたような…ま、オモロイねんけどね(笑)

アイアンマンと双璧をなすキャラクターとしてシャーロック・ホームズを得たロバート・ダウニーJr.。
正に、勧進帳の弁慶と石川五右衛門を当たり役とする歌舞伎役者の如き充実ぶり(…ヘタな例えやな)を見せる彼の、八面六臂の大活躍が楽しい、痛快娯楽活劇の王道を行くアトラクション・ムービー。


シャーロック・ホームズ シャドウ ゲーム
2011年/アメリカ  監督:ガイ・リッチー
出演:ロバート・ダウニーJr.、ジュード・ロウ、ノオミ・ラパス、ジャレッド・ハリス、エディ・マーサン、レイチェル・マクアダムス、スティーヴン・フライ、ジェラルディン・ジェイムズ、ケリー・ライリー、ファティマ・アドウム、ジル・ルルーシュ
コメント (0) |  トラックバック (1) | 

「トロール・ハンター」

2012年04月20日 | 映画
ノルウェーのヴォルダ大学の学生3人組が、とある地方で問題になっている熊の密猟についての取材中に、密猟者の疑いを持たれている不審な男・ハンスと出会う。
周囲の話によると、男は昼間は行動せずにキャンピングカーで過ごし、夜になるとどこへともなく出かけて行っては明け方まで帰ってこないという。
学生たちは直撃インタビューを試みるも頑なに拒否されたため、夜を待って尾行することにした。

その夜、動き出したハンスを追って森の奥深くへと侵入した学生たちは、不気味な音と謎の閃光を目撃する。
何が起きているのか分からないまま、木々の間にぽっかりと広がった広場にいた彼らの元に突如ハンスが現れて叫んだ。
「トロール!」
なんとハンスが夜な夜な追っていたのは、古来よりノルウェーの森に住むと言われている妖精・トロールだったのだ!
そして彼を追って、身の丈3mはあろうかという頭が3つもある巨大なトロールが、暗闇から姿を現す。
ハンスはトロールをおびき寄せると、彼の車に据え付けられた大きなライトを点灯し、強烈な光を浴びせかけた。
一瞬にして石となって固まったトロール。

おとぎ話でしかないと思っていた伝説の生物を目の当たりにして、興奮する学生たち。
実はハンスは熊の密猟者などではなく、ノルウェー王国の政府機関であるトロール保安機関(TSS)に雇われたトロール・ハンターだったのである。
彼の任務は、テリトリーから抜けだして民家に近づくトロールを抹殺し、トロールの存在を世間から隠し続ける事だった。
しかしトロール・ハンターの仕事は、命を落とす可能性と常に隣り合わせの危険を伴うにも関わらず、深夜手当はもちろん特殊な勤務についての手当もなく、世間に隠れて任務を遂行する孤独な業務。
現状に嫌気がさしていたハンスは、学生たちのドキュメンタリー製作に協力し、ついにトロールの実態がカメラに収められることになった…


熊の密猟事件を取材に来た大学生たちが、偶然トロール・ハンターに遭遇し、トロールの撮影に成功したドキュメンタリー。
トロールはムーミンのモデルであり、ジブリアニメの超人気キャラクターであるトトロのモデルでもあると聞いていたので、何となく愛らしい妖精というイメージがあった。
しかし本作に登場する醜悪な姿に、そのイメージは完全に覆されてしまった。
北欧のおとぎ話に登場し、民芸品のキャラクターとしても人々に親しまれているトロールが、凶暴で知能も低い巨大なモンスターだとは知らなかった。

迫力あるトロールの姿を捉えた驚愕の映像だけでなく、その存在を隠そうとする政府関係者の不審な行動に何やら陰謀めいたニオイが漂い、興味を惹かれる。
大学生たちの取材チームの姿は、かつて日本で一世を風靡した故・川口浩氏の冒険を彷彿とさせる。
そう書くとまるで本作はフェイクのように思われるかもしれないが、真実は、ご自身の目で確かめていただくのがよろしいかと……


トロール・ハンター
2010年/ノルウェー  監督:アンドレ・オブレダル
出演:オットー・イェスペルセン、グレン・エルランド・トスタード、ヨハンナ・モールク
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

「バトルシップ」

2012年04月16日 | 映画
宇宙から未知の物体が地球へと迫っていた。
一直線に地球を目指して飛来したかと思うと、大気圏突入前に分散、そのうちのひとつが人工衛星に激突して大破し、大気中で燃え尽きることなく香港に落下して、街を破壊した。
他の物体は、ハワイの真珠湾南方240kmの地点に落下、海中へと沈んでいった。

ハワイのオアフ島沖。
世界14ヶ国から、“海の精鋭”2万人が集結していた。
アメリカ海軍主催の環太平洋合同演習(RIMPAC)に参加する、各国海軍と日本の海上自衛隊における、選りすぐりのメンバーである。
いよいよ演習が始まるその時、はるか沖合の海上に、得体の知れない巨大な物体が出現した。
現場に近いアメリカ海軍のサンプソン、ジョン・ポール・ジョーンズ、そして海上自衛隊のみょうこうの3隻の艦船に対して、演習の総司令官を務めるシェーン提督(リーアム・ニーソン)は調査を命じる。

その頃、アメリカ国防総省では、宇宙から飛来した謎の物体を解明するための緊急会議が招集されていた。
そこで明らかにされたのは、地球から遥か宇宙の彼方にあるグリース太陽系の惑星に向けて、友好を図るために発した電波信号に対する反応として飛来したものだということだった。
しかし、飛来した物体が何なのか、また何を目的としているのかは不明だった。

ハワイ沖に出現した謎の物体を調べるべく、ジョン・ポール・ジョーンズに乗船していた戦略行動士官のアレックス・ホッパー(テイラー・キッチュ)は部下と共にボートに乗り込み、接近を試みていた。
海中からそびえる謎の物体に飛び乗ったアレックスが、更に詳しく調べようと手を触れたと同時に、突如海中から巨大な宇宙船が出現する。
そして強力なエネルギー波を放射して広大なバリアを作り上げ、3隻はその中に閉じ込められてしまった。
バリアの外と連絡が取れなくなった3隻。
謎の宇宙船は3隻の艦船のみならず、ハワイ本土の基地や街への攻撃を開始する。

他の艦船や戦闘機の援護も一切望めない孤立無援状態の中、人類の存亡を賭けた死闘が始まった!


ハワイ沖に出現したエイリアンの侵略部隊と“世界連合艦隊”との壮絶なバトルを、ド迫力のスケールで描く本作は、数々のヒット作を映画史に刻んできたユニバーサル映画が、100周年を記念して送り出すアニバーサリー大作。
近年、エイリアンの侵略に対して死闘を繰り広げる米軍、という作品が増えているが、全て陸上での闘いだった。
本作ではその舞台を海上へと移し更に米軍のみならず日本の自衛隊も加わるという、これまでに無い斬新なシチュエーションが新鮮だ。


圧倒的な武力の前に人類は為すすべが無い…というわけではなく、艦砲射撃でも対抗できるところがミソ。
そのあたりは「世界侵略:ロサンゼルス決戦」と同様であるが、地上に降り立ったエイリアンとの白兵戦がメインとなった「世界侵略…」と異なり、互いの“シップ”同士による砲撃戦が中心。
轟音と間断なく飛び交う砲弾、そして全速力で航行する艦船が、スクリーン上に迫力満点の激しい動きとスピード感を作り出し、クライマックスから息つく間もなくラストまでイッキに連れて行かれるテンポは圧巻!

何より、少年時代に海軍マニアの父親に連れられて「海軍博物館」に通いつめたというピーター・バーグ監督が、全身全霊を込めて創り上げたという海上での戦闘シーンは秀逸!
特に海軍マニアとしての真髄を発揮するのが、戦艦ミズーリの描き方。
3隻の駆逐艦、イージス艦だけでは歯が立たず、博物館として係留されている老艦船を引っ張り出してくるクライマックスは絶品!
かつて「ウォーターライン・シリーズ」で戦艦や空母のプラモデルに熱中した自分は、思わず「くぅ〜っ」と川平慈英になってしまった。
見事な手腕で老艦を操る老兵たちが、内田裕也も真っ青になる正に本場のロック魂で「ロケンロール」と叫びながら生き生きと戦艦を操る姿を通して、「これが本当の『バトルシップ』だ」とイケイケで叫ぶ監督の声が聞こえてくるようだ。


しかし本作は、ただハイテンションなだけではない。
日米が力を合わせて敵に反撃を挑む舞台となるのは、かつて日本がアメリカに対して宣戦布告の火蓋を切った真珠湾。
米海軍の栄光の象徴ともいえる戦艦ミズーリに海上自衛隊の隊員たちが乗り込み、米軍兵士たちと共に闘いを挑んでいく場面は感慨深い。

家族愛、青年の成長、絆の大切さ・力強さを描くストレートなヒューマンドラマに、高齢社会を象徴する老いて益々盛んな老兵の大活躍を織り込みながら、イッキにラストまで観客を引っ張っていくアトラクション・ムービー。
ミリタリー・マニアも納得の海上戦闘シーンの迫力は、劇場の大スクリーンでこそ、その醍醐味が味わえるというもの。

ハリウッドの名門ならではの、アップテンポでノリノリな、アトラクションムービーの王道を行く娯楽スペクタクル巨編。

バトルシップ
2012年/アメリカ  監督:ピーター・バーグ
出演:テイラー・キッチュ、ブルックリン・デッカー、アレキサンダー・スカルスガルド、リアーナ、浅野忠信、リーアム・ニーソン
コメント (0) |  トラックバック (1) | 

マクギー逝去

2012年04月12日 | よもやま
まる子の祖父・友蔵や神様の声、青野武さん死去(読売新聞) - goo ニュース


高校の頃、テレビでやっていた「超人ハルク」で、主人公の秘密を追いかけるいやらしい〜新聞記者・マクギーの声で強烈な印象を持ったのが最初に彼を認識したときだった。
その後、気付けばいろんな作品に出演していることを知ったのだが、どうしてもマクギーのいやらしい声の印象が強く残り続けていた。

もう75歳だったとは。
昔からよく知っている名優たる声優さんも次々に亡くなっていく今日この頃。
残念ではあるがいたしかたなく…

合掌
コメント (0) |  トラックバック (0) | 

「311」

2012年04月11日 | 映画
東日本大震災発生から15日後の2011年3月26日。
映画監督・作家の森達也、映像ジャーナリスト・綿井健陽、映画監督・松林要樹、映画プロデューサー・安岡卓治の4人が、放射線検知器を搭載した車で被災地へと向かう。

福島第一原発から150km地点で線量計のスイッチを入れると、あっという間に東京の数十倍の値を記録。
50km圏の三春町に宿を取った4人は、旅館で会った双葉郡出身の25歳男性に話を聞く。
彼は、津波と地震だけなら既に復興は始まっていると言い、原発事故の影響を語る一方で、東京電力のお陰で町は発展したと語った。

翌日、一行は浪江町方面へと向かい、屋内退避勧告の出ている20〜30km圏内の町で見つけた集会所の様子を窺うが、人の気配はない。
集会所から車に引き返す際、放射能防護用衣類の着脱でパニック状態を起こし、また衣類を脱ぐ際にはドアを開け放したために車内の線量も急激に上昇して、車内は不安に包まれる。
曖昧な取材姿勢と不十分な装備を自覚した4人は、福島の取材を断念して津波の被災地へと向かう。

陸前高田市で消防隊員に行方不明者捜索について話を聞き、大船渡市、仙台市市街地と、余震の続く中を取材して回る4人。
石巻市の大川小学校では、自力で我が子の遺体を捜す母親たちの口から、被災者の現実が語られる。
更に取材を続けるうちに遺体発見の現場に立ち会うことになり、その模様を撮影していると、遺族の一人から角材を投げつけられた…


震災発生直後、現地へと向かう4人は妙にハイテンションで、物見遊山に出かけるような雰囲気さえ漂わせている。
車内の線量計の数値がみるみる上昇しても、はしゃいでいるようにしか見えない。
不謹慎とさえ言える4人の言動だが、福島における放射能汚染の厳しい現実を目の当たりにし、津波被害地の凄惨な状況を目撃するにつれ、表情は険しく硬くなっていく。
そして大川小学校の遺体捜索現場で、発見された遺体にカメラを向けた際に遺族と衝突するに至って、ようやく彼らは自分たちの行動に目的を見出し、伝えるべきことを得て、ドキュメンタリストとしての本分を取り戻したのではないだろうか。
被災者へのインタビューや、遺族との話し合いの際に見せる森達也のこわばった表情が、彼らの自省の念を物語っているように思えた。


4人の姿に、阪神淡路大震災の際に、会社の営業拠点に支援に行ったときの自分を思い出した。
確かに自宅も大きく揺れ、神戸方面のすさまじい映像を報道映像で目にしていたとはいえ、どこか他人ごと、
別世界のことのような感覚だったことは否めない。
そして震災翌日、鉄道は寸断されて使えないため、大阪港から船に乗り込んで現地に向かい、神戸ハーバーランドに降り立ったときに受けた衝撃は忘れられない。

本作における4人は、悲しいかな、これが人間の真の姿というもの。
我が身に降りかからなければ、本当の思いは分からない。
しかしそのことを冷静に認識することで、不必要な過剰な哀れみを排除して、被災した人々の心に寄り添うことができるのではないだろうか。
4人の姿を指差して不快に思うのではなく、冷静に自分に置き換えて観るべきである。


大川小学校で、我が子が津波に飲み込まれてしまった母親たちの言葉が胸に突き刺さる。
マスメディアは「悲しい」「辛い」などの言葉を求めてくるが、悲しいとか辛いなどというレベルはとっくに超えている、現実問題として重機が欲しいということを伝えてくれと頼んでも、「それはうまくお伝えできません」と言って取り上げてくれない。
マスコミの在り方に一石を投じる言葉であるが、そのマスコミに民衆は何を求めているのかを表しているのではないだろうか。
またこの言葉は、被災地と被災しなかった地域との温度差を、端的かつ先鋭的に言い表している。


数ある東日本大震災に関するドキュメンタリーの中でも異彩を放つ一品。


311
2011年/日本  共同監督:森達也、綿井健陽、松林要樹、安岡卓治
コメント (0) |  トラックバック (0) |