通訳者の勉強机

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「EUがあなたの学校にやってくる」

2009年05月09日 | 通訳日記
今日、5月9日はヨーロッパ・デーと言いEU(欧州連合)創設の基となる出来事を記念する日だそうです。今から59年前の5月9日に、当時のフランス外務大臣ロベール・シューマンが平和と繁栄のために欧州統合の理念を初めて提唱したのです。どうして私がこんなことを知っているかと言うと、昨日EUの方が兵庫県のある高校でEUについての出張授業を行い、その通訳に行ってきたからなんです。これは「EUがあなたの学校にやってくる」と題するイベントで、昨日60人以上のEU大使、外交官が日本各地の高校などで授業を行いました。

授業はパワーポイントを使ってのプレゼンで、大変興味深い内容でした。

例えば、EUのもとになる組織の一つに欧州石炭鉄鋼共同体がありましたが(学校の歴史で勉強しましたよね!)なぜ石炭と鉄鋼なのか?当時戦争で使う武器を作るため石炭と鉄鋼は欠かせないもので、これを共同管理することにより各国が武器を大量に作れないようにすることが狙いだったのです。そもそもEUを創立したのは戦争に明け暮れ荒廃した欧州にあって、平和の大切さを心から理解し二度と戦争をおこしてはいけないと人々が決意したからです。

そうだったんだ!学生のときは、ただ「欧州石炭鉄鋼共同体」の名前と設立の年を暗記しただけで、その背景については全然考えていませんでした(説明はあったかもしれませんが、関心がなかったのでしょう)。

また、EUのモットーは「多様性の中の統合(United in Diversity)」です。統合と調和を重んじるが同時に多様性をも尊重し、そのことを大変重要視しています。その表れの一つとして、公用語を23も定めているそうです。EU域内で23言語が話されているのではなく、公用語が、ですよ!ちなみに域内で話されている言語は150以上にも及ぶとのことでした。

これは、ものすごい労力、時間、費用を要することです。だって、会議が行われるたびに23の言語が飛び交い通訳が66人も必要なんでもの!

そこまでしてEUの体制を維持していこうとするには、よほど強い決意が必要だと思いました。逆にいえば、そんなに大変な、そしてある意味で不自然な体制をぜひとも維持しようとするその根底には、それだけの動機があるんだと感じました。

それだけに、今回のような試みを通じてEUの存在を対外的に伝えていく大切さを感じているのかもしれません。

日本は、国として均一性が高く地理的にも自然ななりたちなので、こういった努力を怠りがちなのかもしれません。でも、やはり自国のことを他国の人に積極的に伝え正しく理解してもらうことは同じように大切です。

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