3)放電モードによる違い。
N2を添加してスパッタリングを行っている場合に、2つの放電状態が存在します。
a) ターゲット表面がTiの場合:
Ar+ N2+ イオンがターゲットに衝突し、スパッタリングが行われていますが、ターゲットからは、TiNよりもTiが多く飛び出します。プラズマの色は、Tiのスパッタリングと同じで青白い色です。
基盤(の表面)温度が低く保たれている場合には、見た目Tiと同じ金属色ですが、Tiの中にNが固溶している状態の膜が生成されます。この場合でも(N2+H2ガス雰囲気の炉で)高温でアニールすればTiNと同じ黄金色になります。
基盤(の表面)温度が高い場合は基盤表面で反応が起こり、TiN,Ti2Nの混合膜が形成されますが、TiNにくらべ、Nが不足した状態です。ただし、目視では、黄金色に見え、TiNとの区別はつきません。
この様にして生成したTiNはNが不足状態なので、バリアとして使う場合には注意が必要です。
b) ターゲット表面がTiNの場合:
十分なN2+ がターゲットに供給される場合、ターゲットからは、TiN,TiN2,Ti が飛び出しますが、十分な量のTiNが基盤に供給されます。この条件でせい幕したTiNは、RBS分析の結果からは、ほぼTi:N=1:1の膜が形成されていました。(ほんの少し偏りがありましたが、データが残っていません。TiN結晶の粒界の存在がズレの原因と推定。)
ただし、この条件でも、基盤をガス冷却し低温に保った場合や、T/S(ターゲット-ウエハ)距離が長い場合は、Ti色の膜となります。基盤の表面温度が低いと、NaCl構造のTiNが形成されず、Ti,Nの混合膜になります。
TiNのスパッタリングでは、ターゲットから供給されるエネルギーが重要な役割を果たしています。
これに関連して、次回は、低抵抗のTiNを形成する条件について述べます。
(次回)低抵抗のTiNを成膜する方法:
(次回以降)高密度のTiNがなぜAl-Si間のバリアとなるのか。: