インターネット業界ではソーシャルが注目を集めている。その陰に隠れてはいるが、広告分野も以前と変わらぬ速さで革新が進んでおり、アメリカでは広告技術の取得を目的とした数十億円単位の M&A も頻繁に行われている。
弊社は創業以来一貫してインターネットマーケティングサービスを提供しており、SEM やアドネットワークなどの商材を取り扱っている。弊社からクライアントに提供しているマーケティングサービスの特色はなに? と尋ねられた場合には、その先進性を謳うことも多い。
インターネットマーケティングというフィールドでビジネスに携わる以上、先進的な広告手法の開発や取り組みが求められるのは弊社に限られたことではもちろんなく、広告媒体は新たな広告商材の開発を続けており、クライアントの担当者は売上拡大の新たな手法を探求している。
近年、特にこの1年くらいの広告手法の進歩はその複雑化・多様化に拍車がかかっているように思われる。ようやく定着した感のある3文字略語の SEM や CPA に加えて、業界内では SSP・DSP・RTB といった新たな略語の登場頻度が増加し、社内のコミュニケーションで
すら新たな用語の概念定義から始めなくてはならない状況となっている。
新たな広告技術の登場はインターネット広告が進化を遂げている現れだ、と言ってしまえばそれまでなのではあるが、どうもクライアントの真のニーズ、ひいてはマーケティングの対象となっている一般消費者の行動様式とは乖離が大きくなりつつあるのではないか、という懸念が同時に頭をもたげてくるようになったのが、正直な感覚だ。
先日採用面接を行った際の話である。応募者の方に Web 活用方法を聞いてみた。
「はい、ネットショッピングはよく行います。価格.com や楽天で買い物をすることが多いです。」
「はい、ブックマークから行きます」「他にはアマゾンで本を買うこともあります。」「はい、ヤフーで『本』と検索したら一番上に表示されていたので使うようになりました。」
応募者は20代であり、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる若齢から Web に触れていた世代の実生活である。業界に長くいる者としては、「価格.com では買い物は完了しないでしょ?」だとか、「ブックマークより検索するほうが早くアクセスできない?」とか突っ込みを入れたい点が多くあるのだが、おそらく、多くの消費者の Web 上での行動様式は同様なのではないだろうか。
我々が新たなマーケティング手法を開拓するときには、「消費者の多様化」や「情報活用の変化」など、対象の変化が著しいという前提がある。実際、ある側面、特定の要素においては真なのだと思う。
しかし、これだけ Web が浸透しているなかでも、テレビ番組のコンテンツがいまだに検索ワードのトレンドとなっていることもまた確かである。大部分の消費者の情報利用や判断材料の変化のスピードは、業界の期待するほど求めるほどには劇的ではなく、また想像を絶するスピードでもない、という点もまた真なのではないだろうか。
マーケッターは消費者を先回りするもの、消費者の変化はそれ以上に速いもの、両者の競争の中でマーケティングは進化しているという議論も確かに存在する。そのこと自体を否定しようとは思わない。
ただ、革新的な広告手法が生まれ、高度な広告技術が開発されたからと言ってそれは消費者の動向を直接的に変革するものではない。新たな手法や技術がクライアントの興味を引き、営業マンの話のネタになりやすいのは事実であるが。
新たな技術や概念枠組みを吸収し先進的な取り組みを行いつつも、消費者の一般的な動向から目を離してしまうことがないようにしたいと自戒を込めたい。新たな商材であれば何でも、といった売り込みを続けることではなく、クライアントニーズの一歩先を満たす目利きと提案こそがマーケティング会社の大きな存在意義である。
大局観を失わず、基本に忠実なマーケティング会社が今こそ求められていると思う。
(執筆:花房 智行)
記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ
業界の話題、問題、掘り出し物、ちょっとしたニュース配信中。
弊社は創業以来一貫してインターネットマーケティングサービスを提供しており、SEM やアドネットワークなどの商材を取り扱っている。弊社からクライアントに提供しているマーケティングサービスの特色はなに? と尋ねられた場合には、その先進性を謳うことも多い。
インターネットマーケティングというフィールドでビジネスに携わる以上、先進的な広告手法の開発や取り組みが求められるのは弊社に限られたことではもちろんなく、広告媒体は新たな広告商材の開発を続けており、クライアントの担当者は売上拡大の新たな手法を探求している。
近年、特にこの1年くらいの広告手法の進歩はその複雑化・多様化に拍車がかかっているように思われる。ようやく定着した感のある3文字略語の SEM や CPA に加えて、業界内では SSP・DSP・RTB といった新たな略語の登場頻度が増加し、社内のコミュニケーションで
すら新たな用語の概念定義から始めなくてはならない状況となっている。
新たな広告技術の登場はインターネット広告が進化を遂げている現れだ、と言ってしまえばそれまでなのではあるが、どうもクライアントの真のニーズ、ひいてはマーケティングの対象となっている一般消費者の行動様式とは乖離が大きくなりつつあるのではないか、という懸念が同時に頭をもたげてくるようになったのが、正直な感覚だ。
先日採用面接を行った際の話である。応募者の方に Web 活用方法を聞いてみた。
「はい、ネットショッピングはよく行います。価格.com や楽天で買い物をすることが多いです。」
「はい、ブックマークから行きます」「他にはアマゾンで本を買うこともあります。」「はい、ヤフーで『本』と検索したら一番上に表示されていたので使うようになりました。」
応募者は20代であり、いわゆるデジタルネイティブと呼ばれる若齢から Web に触れていた世代の実生活である。業界に長くいる者としては、「価格.com では買い物は完了しないでしょ?」だとか、「ブックマークより検索するほうが早くアクセスできない?」とか突っ込みを入れたい点が多くあるのだが、おそらく、多くの消費者の Web 上での行動様式は同様なのではないだろうか。
我々が新たなマーケティング手法を開拓するときには、「消費者の多様化」や「情報活用の変化」など、対象の変化が著しいという前提がある。実際、ある側面、特定の要素においては真なのだと思う。
しかし、これだけ Web が浸透しているなかでも、テレビ番組のコンテンツがいまだに検索ワードのトレンドとなっていることもまた確かである。大部分の消費者の情報利用や判断材料の変化のスピードは、業界の期待するほど求めるほどには劇的ではなく、また想像を絶するスピードでもない、という点もまた真なのではないだろうか。
マーケッターは消費者を先回りするもの、消費者の変化はそれ以上に速いもの、両者の競争の中でマーケティングは進化しているという議論も確かに存在する。そのこと自体を否定しようとは思わない。
ただ、革新的な広告手法が生まれ、高度な広告技術が開発されたからと言ってそれは消費者の動向を直接的に変革するものではない。新たな手法や技術がクライアントの興味を引き、営業マンの話のネタになりやすいのは事実であるが。
新たな技術や概念枠組みを吸収し先進的な取り組みを行いつつも、消費者の一般的な動向から目を離してしまうことがないようにしたいと自戒を込めたい。新たな商材であれば何でも、といった売り込みを続けることではなく、クライアントニーズの一歩先を満たす目利きと提案こそがマーケティング会社の大きな存在意義である。
大局観を失わず、基本に忠実なマーケティング会社が今こそ求められていると思う。
(執筆:花房 智行)
記事提供:株式会社ビデオリサーチインタラクティブ
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