A Challenge To Fate

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【Disc Review】ケヴィン・モービー『シティ・ミュージック』〜鏡の向こうの自分が歌う都会の唄〜

2017年07月11日 01時04分40秒 | ロッケンロール万歳!


都会に生きる悲哀を唄で表現する心優しき自作自演シンガー、などと書くと部屋に引き蘢って鬱々と音楽を作りネット配信するインドア青年を想像するかもしれないが、ケヴィン・モービーはそういうタイプではない。しかし人生をスポットライトの中で満喫するリア充でも無いことは確かだ。鏡に映った自分の姿を無表情に眺めるジャケットは、70年代の鏡の肖像とは次元の異なる存在の希薄さに霞んでいくように思える。

▼鏡ジャケ3選

リンダ・ロンシュタット『夢はひとつだけ』/シルヴァーヘッド『凶暴の美学』/ロジャー・ダルトリー『ワン・オブ・ザ・ボーイズ』


コレまでにリリースしたソロアルバム『ハーレム・リヴァー』(13)、『スティル・ライフ』(14)、『シンギング・ソー』(16)の3作に描かれたのは、20代後半の年齢に比して極めて落ち着いた内省的な世界感だった。静謐な歌い口の中に、冷静に社会を観察する冷めた精神が宿るもの哀しい表情は、ロックシンガーと言うより詩人や随筆家の風貌をたたえている。そんなケヴィンが四作目のソロ作のテーマに選んだのは「シティ=都会」の生活。

「City Music」


毎晩夕食の後、太陽が沈むと夫とふたりで近くの公園に出かけ、アイスクリームを買って食べる。公園の反対側のバーが開くと店に入る。バーではバンドが演奏している。故郷の田舎町で聴いた音楽とは違って都会の音楽はみんなエレクトリック。バーが締まるまで音楽に合わせて踊り、バンドが演奏を終えてドラムをタクシーに乗せて帰るのと一緒にふたりは公園を通ってアパートに帰る。翌朝遅めに目を覚まし、目を擦りながら夫が着替えるのを眺める。ズボン、シャツ、靴、帽子、そして最後にネクタイ。自分も着替えてコーヒーを飲む。そして同じことを繰り返す。

ニューヨークの無名者が書いた手記がジャケット裏に書いてある。ケヴィンが住むカリフォルニアでも、僕等が住む東京でも、都会の生活は似たようなものである。都会で聞こえるのは都会の音楽=シティ・ミュージック。様々な出来事や感情が音楽と共に営まれる。それをケヴィンの観察眼で描き出した11編の物語。しかしそれは他者のものではなくケヴィン自身の物語でもある。上記の手記を書いたのはケヴィン自身かもしれないし、僕かもしれない。都市生活者は無名者であるのだから。

「Aboard My Train」


無名者が自分を取り戻す為には時分自身を見つめ直すことが必要。それに適した道具は「鏡」に他ならない。化粧品で鏡に書き残された文字こそ、自分で自分にあてたメッセージ。恰も某ヒット映画で時間と空間を超えて入れ替わる見知らぬ相手に伝言を伝えたように、鏡の向こうのもうひとりの自分が、メッセージを書き残した自分と入れ替わる時が来るかもしれない。つまり『シティ・ミュージック』に収められた唄は鏡の向こうの自分にあてたメッセージソングとも言えるのである。それを聴くあなたや私が都会の鏡のあっちとこっちのどちらにいるのか、ケヴィンのサイケデリックな唄を聴きながら確かめてみるのも一興だ。



■ケヴィン・モービー・バイオグラフィー
アメリカのシンガー・ソングライター(1988.4.2生) 。フォークロック・バンド、ウッズのベー シストやザ・ベイビーズのギタリストとして知られる。ルー・リード、ボブ・ ディラン、ニール・ヤングらの影響を受け、10歳の頃からギターを始めクリーピー・エーリアンズというバンドを結成。カンサス州からブルックリンに移った のち、ウッズに加入する。ブルックリンに住んでいる間、パンク・ガールズバンド、ヴィヴィアン・ガールズのキャシー・ラモーンと親しくルームメイトであり、一緒にザ・ベイビーズを結成し2枚のアルバムをリリースしている。ソロとしては13年に1作目『ハーレム・リバー』、14年に2作目『スティル・ライフ』、16年に<Dead Oceans>移籍第一弾で3作目となる『シンギング・ソウ』を発表。このアルバムが米音楽サイトのピッチフォークでBEST NEW MUSICと8.3点の高得点を獲得し、国内外で話題をさらった。17年、4作目となる『シティ・ミュージック』を発表する。

都会の唄
通りに立って
歌いたい

▼都会のアルバム3選

エリオット・マーフィー『夜の灯』/シティ・ボーイ『リッツホテルの晩餐会』/S-KEN『魔都』


Elliott Murphy - Diamonds By The Yard


City Boy - Momma's Boy


魔都/S-KEN(1981)
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