A Challenge To Fate

私の好きな一風変わった音楽を中心に徒然に綴ったページです。地下文化好きな方は見てやって下さいm(_ _)m  

西海岸リアル・ジャズ・シーンの中心人物レント・ロムス(Rent Romus)の素晴らしき自然派捻転ワールド

2017年12月02日 01時38分13秒 | 素晴らしき変態音楽

photo by George Thomson


Spotifyでフリージャズを聴いていて関連アーティストとして出てきたRent Romusという謎めいた名前のアーティストが気になった。さっそくモノクロの近未来風のジャケットの『Deciduous, Midwestern Edition, Vol.1』というアルバムを聴いてみた。イヤホンから流れ出したのは、ファラオ・サンダーズやアート・アンサンブル・オブ・シカゴを思わせる自然派即興ジャズ。ニューヨークやヨーロッパの即興ジャズやフリーミュージックはストイックでシリアスな都会派音楽が多いが、真逆に位置する彼らの土俗的なユルさを持った生命感のある演奏が新鮮だった。高校時代にヒューマン・アーツ・アンサンブルのレコードで初めてフリージャズを聴いたとき、森の中を彷徨うような気持ちがしたことを思い出した。集団即興は森のざわめきであり、楽器と戯れながら木々の間に隠れた謎めいた精霊や動物たちと交感するのが音楽の原初の姿だ。そう信じていた無垢な気持ちを取り戻した。


⇒JJazzToyko Disc #1464 『Rent Romus / Deciduous : Midwestern Edition Vol. 1』

このアルバムはオハイオ州でレコーディングされている。てっきり中心人物のレント・ロムスもオハイオ出身かと思ったが、調べてみるとサンフランシスコを拠点に活動していることを知った。YouTubeで検索するといろいろなライヴ動画が出てきた。貫禄のある巨漢でブロウするサックスは、メロディを吹くときは明るく艶のある音色だが、ソロになるとネジが非ぬ方向へブッ飛んだ捻転プレイに転じる。聖も俗も正統も異端もごちゃ混ぜになった自由すぎる演奏は、理性ではなく野性の本能と森羅万象の霊感に導かれているに違いない。独特のユルさが際立つ音世界は、演奏家同士の信頼と敬意に支えられている。筆者の偏愛する三大サックス奏者のうちの二人、アーサー・ブライスとフランク・ロウを彷彿する変則プレイの虜になってしまった。

BIOGRAPHY
レント・ロムス Rent Romus
フィンランド系アメリカ人の三世にあたるレント・ロムスは1968年1月6日ミシガン州ハンコック生まれの49歳。サンフランシスコのベイエリアを拠点に活動するサックス奏者・マルチ楽器奏者、作曲家、バンドリーダー、音楽プロデューサー、地域コミュニティの指導者である。

「...大胆な音、紛れもない誠実さと信念」(ダウンビート)
「猛烈」(サンフランシスコ・ウィークリー)
「西海岸の創造的音楽界の中心」(ジャズ評論家Frank Rubolino)

最初はスタン・ゲッツの門下生としてジャズを学びながら、次第にサン・ラやアルバート・アイラー、さらにアーサー・ブライス、デレク・ベイリー、メルツバウといった外の世界に惹かれて行った。

1994年からフリー・インプロヴィゼ―ション・グループLords of Outland、作曲中心のコンテンポラリー・アンサンブルLife’s Blood Ensemble、ピアニストのThollem McDonasと共にBloom Project、そして集団即興グループThe Ruminationsなどを率いて活動する。

これまでリーダー、サイドマン両方で40作を超えるアルバムで幅広く即興と作曲の可能性を探求しており、共演者にはChico Freeman, John Tchicai, Vinny Golia, Thollem McDonas, Stefan Pasborg, James Zitro, Heikki "Mike" Koskinen, and Jon Bridsongなどがいる。

Edgetone Recordsの創設者として30年以上インディペンデントな音楽制作・演奏を経験し、Outsound Presentsのエグゼクティヴ・プロデューサーとしてMusicians Union Hallでの隔週のシリーズイベントSIMMや、週ごとのLuggage Store Gallery Creative Music Series、サンフランシスコで毎夏開催される創造的音楽フェスOutsound New Music Summitをキュレイトしている。

主なユニット
●ライフス・ブラッド・アンサンブル Life’s Blood Ensemble
1999年レント・ロムスが北欧ツアー中に結成。現在はベイエリアのミュージシャン中心の布陣。オリジナル曲中心に、レントやメンバーの血の中に流れるルーツを探る幅広い音楽性を持つ。レント自身のルーツのフィンランドの要素も。
現在のメンバー:Timothy Orr•drums/percussion Safa Shokrai•double bass Max Judelson•double bass Heikki "Mike" Koskinen•e-trumpet/recorder Joshua Marshall•tenor saxophone Mark Clifford•vibraphone

Excerpts from The Otherworld Cycle by Rent Romus Lifes Blood Ensemble Gold Lion Arts


●ローズ・オブ・アウトランド Lords of Outland
1994年にレント・ロムスが志を同じくするミュージシャンと結成。ジャズ、ロック、ブルースの知識に基づいて即興、メロディ、ノイズ、サウンドアートを探求する。メンバーは流動的だが、現在は
Collette McCaslin - trumpet, no-input pedal electronics
Philip Everett - drums, percussion, electronic autoharp
Ray Schaeffer - electric basses
Rent Romus - alto, soprano, c-melody saxophones, voice, electronics, toys

4-4 Rent Romus' Lords of Outland 3-13-13


●デシデュアス Deciduous
<即興の創造的な強靭さ・歴史・一期一会を共有する人々を橋渡しする>ことを目指すプロジェクト。メンバーは流動的でアメリカ中西部のミュージシャンを中心にしている。AACMやBAGで培われた自由な音楽と聖なる大地との収穫祭と呼んでもいいだろう。

Rent Romus/ Deciduous @ Bop Stop, Cleveland,Oh



彼のレーベル「エッジトーン Edgetone」には前衛ジャズや実験音楽、アヴァンロックやノイズ、果てはハードコアパンクまで200を超えるリリースがあり、未知の音楽を掘る歓びに愛好家の血が騒ぐ。アメリカ西海岸の知られざるリアル・ジャズ・シーンの立役者レント・ロムスの活動には今後も注目していきたい。

西海岸
今ここにあるジャズ(Jazz RIght Now)
虹翔る

12/5にローズ・オブ・アウトランドのニューアルバム『In the darkness we speak a sound brightness and life(暗闇で音の明るさと人生を語る)』がリリースされる。


Bandcamp
コメント
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