スズずきんちゃん ミチシゲイレブンcold～寒波ふたたびの巻～ ﾉﾘ*´ｰ´ﾘ＜その１５じゃ！

誰も覚えてないだろうけど、前回→http://blog.goo.ne.jp/googoma_1973/e/9f26f0935f7e381c91493703126958a1/?cid=92f0900d97f8ed321d1fd16e0e554a77&st=0

強風に吹き飛ばされそうになりながらも、レーナさんは踏ん張ってマリアさんを腕の中にかばいます。
「ママー！」
マリアさんが泣き叫ぶと、
「じっとしとり・・・きっと助かるけん」
レーナさんがつらそうに言い聞かせます。
「Maria!You can do it!」
「マリアちゃん、もうちょっとやから頑張り！」
「おやきー！」
マリアさんの友達が様々な励ましやそうでないものを送る中、
「タナカッち！」
ガキさんが風に飛ばされそうになりながら、顔を背けて、こちらにやって来ます。
「ガキさん！いま来たらいけん！」
レーナさんがそれに気づいて叫びます。
レーナさんが叫ぶと、更にそこへ強風が吹き込んでマリアさんが悲鳴を上げます。

ガキさんは、キッと顔を上げました。
東の空に向かい、
「ちょっと！そこの風起こしてるヤツ！
いや寒波？なんでもいいわ！ここんとこの異常気象起こしてるヤツ！」
大声で叫びます。
「何がやりたいの！
こんな小さな子どもまで怯えさせてさ！
ハッ！弱い者いじめ？
こんなちっさい村相手にさ、ちゃんちゃらおかしいわ！」
風が、少し勢いを弱めます。


オマエニハ、ワカラヌ

風の中、そんな声が聞こえます。

「な、何が？」
ガキさんがはっと我に返ると、竜巻が方角を変え、山の方に向かいました。
「ひゃあ！」
「わあ！」
マリアさんをかばいながら、レーナさんはグラウンドに倒れました。
「・・・タナカッち！」
慌てて、ガキさんが駆けつけます。
「あたた・・・レナは大丈夫やし。
この子、ちょっとケガないか見たって」
体を起こしながら、レーナさんはガキさんに頼みます。
「ニーガキせんせい！
マリアはぜんぜん大丈夫です！
レーナさんの顔が！顔が！」
マリアさんはぼろぼろ泣きながら、ガキさんの腕を掴みます。
「・・・タナカッち。
血・・・」
マリアさんの必死の訴えに、ガキさんはレーナさんの顔を見ます。
「ああ、これ？
ちょっと痛いけど、大丈夫やし」
「来て」
ガキさんはレーナさんの腕を掴んで、
「傷、見るから」
歩き出しました。



「ひゃあ！」
急に吹いてきた強風に、リホずきんちゃんは転びそうになります。
「しっかり！」
カメーさんが腕を掴んでやり、事なきを得ます。
丘の上では、相変わらず大きな悪いミチシゲが一心不乱に祈りを捧げてます。
風などものともせず、むしろ全身全霊捧げるように、祈っています。
「・・・ミッシゲさん！」
リホずきんちゃんが悲鳴を上げます。
大きな悪いミチシゲの背後から、竜巻が襲ってきたのです。
間一髪で避けられましたが、挑発するように竜巻は次のタイミングを図っています。
「リホリホ・・・」
大きな悪いミチシゲが、振り返ります。
「エリ、ちゃんとリホリホを止めてよ」
「わりィ」
カメーさんは、バツが悪そうに笑います。
「ミッシゲさん！ミッシゲさん！」
リホずきんちゃんがわあわあ泣きながら、大きな悪いミチシゲのもとに走ってすがりつきます。
「リホリホ・・・」
大きな悪いミチシゲはそれをなだめながら、
「リホリホ、よく聞いて。
これは、サユミにしか止められないの。
いい子だから、安全な場所にエリと避難して」
サユミの言うこと聞いて、と大きな悪いミチシゲは、泣きじゃくるリホずきんちゃんの頬を両手で挟みます。
リホずきんちゃんはぐいっと手の甲で目をこすり、首を振ります。
「うちなんか悪い子でいいんじゃ！
ミッシゲさん、行っちゃイヤじゃ！」
「リホリホ・・・」
そのとき、大きな悪いミチシゲは一瞬泣きそうな顔をしました。

なにか唇にやーらかいものがふれた。
リホずきんちゃんがそう思ってると、やわらかいものがふっと離れました。
「ばいばい」
そう言って、大きな悪いミチシゲは今まで見たことのないような柔らかな笑顔で。
竜巻に、ひとり呑まれていきました。


つづけ