SEからコンサルタントへの華麗な転身

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企業における効果的なIT投資 第1回外注管理

2008-07-09 | コンサルタント養成講座
    『企業における効果的なIT投資 第1回外注管理』
 


今回から「企業における効果的なIT投資」を取り上げたいと思っております。

プロジェクトの短期化・低予算化に加えて、プロジェクトを取り巻く環境の不確実性が
増してきており、計画通りにプロジェクトを運営することが困難になってきています。

このような中で、よく「 ITプロジェクト失敗の原因」として、

 1. 顧客ニーズの把握が十分でない
 2. 仕様が不明確のまま提案・見積りを実施
 3. 営業・開発の役割分担が不明確
 4. プロジェクト実施計画がないため、プロジェクト遂行方針ないし枠組みが不明確
 5. コミュニケーション不足(特に、営業と開発、メンバー間)
 6. プロジェクト実行管理の不備(管理能力・経験不足)
 7. 開発に必要な体制となっていない
      ※ 書籍「PMBOKによるITプロジェクトマネジメント実践法」より抜粋

などがあげられていることをご存知でしょうか。

確かに「ユーザー企業」側に原因があると言われてもしょうがないないものもあります。
ただ、失敗の原因を事前に把握しておくことで、コントロールできるとと思っています。
事前に把握することができない、よってコントロールできないので、「システム開発業者」
とトラブルとなり失敗しているのではないでしょうか。

よく公開されている失敗の原因は、ほとんど「システム開発業者」側から見たものが多く、
失敗事例から「発注元」が学ぶことは難しいのではないでしょうか。
「ユーザー企業」も何度もシステム開発を行うことがないので、同じような失敗を繰り
返しているのが現状ではないでしょうか。

今回は第1回目として、基本的ではありますが「外注管理」を取り上げます。
元々、弊社が「ユーザー企業」様向けに行っている研修内容のなかで、
特に「ユーザー企業」様で押さえておいていただきたい内容を中心に取り上げます。


●外注管理

 一般的に外注管理の目的とは、「適格な外注先を選定して、効果的に管理する」
 ことであると言われています。

   ・ 「ユーザー企業」は、適格な「システム開発業者」を選定している。
   ・ 「ユーザー企業」と「システム開発業者」は、双方のコミットメントに
ついて合意している。
   ・ 「ユーザー企業」と「システム開発業者」は、継続的に連絡を取り合っ
ている。
   ・ 「ユーザー企業」は、コミットメントに照らし、実際の結果と行動の進
捗を確認している。


●外注との契約形態

 外注管理には法令遵守事項が多いので、外注目的を明確にして、
 安易な外注は避ける必要があります。
 しかし、ITに関しては利用するケースが多いのではないでしょうか。

 外注の種類には、派遣と請負があるのはご存知でしょうか。
   ・派遣 = 雇用主と指揮命令者が異なるので法規制を受けます。
   ・請負 = 雇用主の指揮命令のもと、単に作業しているだけなので、
         法規制は受けません。

 請負契約のもとで作業をしている場合、「ユーザー企業」は直接、
 「システム開発業者の請負社員」に対して、作業指示をすることはできません。

   ・担当者に直接質問して、求めた回答で、仕様に関して変更などを指示する。
   ・責任者を通さず、担当者に直接仕様の変更などを伝える。
   ・作業分担を指示する。
   ・作業体制の変更を要求する。
   ・担当者ごとに作業報告を求める。
   ・作業実態を元に残業時間などを指示する。

 このように「システム開発業者の請負社員」に対して、請負要件を満たしていないと、
 派遣とみなされ、法規制を受けます。

 仮に直接指示を行っていなくても、「ユーザー企業」と同じ場所で作業する場合は、
 直接作業指示しているとみなされます。
 対策としては、作業場所を分離する必要があります。

   ・部屋を分離する。
   ・もし、同じ部屋の場合は、机の島を分ける。
   ・もし、机の島が同じ場合は、壁などで区切る。

 自社の環境を使って作業をおこう場合などは十分注意が必要です。
 最近、「偽装請負」などと言う言葉をお聞きになったことはありますでしょうか。
 「偽装請負」とは、契約上は請負なのですが、直接指示をして作業をさせるので、
  実質は派遣とみなされます。「一人請負」=「派遣」も同様です。


●外注との契約内容

 外注することは、会社間の取引であり、契約行為です。
 基本契約で、知財権、守秘義務、瑕疵担保、法令遵守等の共通事項を押え、
 個別契約で、注文仕様、納期、価格等を決めます。

 契約の中で「知的所有権の帰属」などを意識されていますか。

 表計算ソフトなど、第三者が保有する汎用的なソフトウェアを勝手に
 頒布(はんぶ:配って広く行きわたらせること)することは違法行為です。
 しかし、「ユーザー企業」側がお金を払って、投資したシステムであれば、
 頒布(はんぶ)しても問題ないと思っていませんか。

 「知的所有権の帰属」に関して、契約書に明記していなければ、基本的に
 頒布(はんぶ)はできません。
 基本的に、「システム開発業者」が自ら持ってくる契約書には明記されていません。
 よって、勝手に頒布(はんぶ)しようとすると、必ずトラブルになります。

 では、どのように「知的所有権の帰属」に関して契約書に明記すればいいのでしょうか。

 開発するシステムの構成、開発対象となる機能などが、不明確な段階における契約で、
 開発後にシステムの頒布(はんぶ)、頒布を前提とした複製、複製の貸与、改造後の
 頒布・貸与等が行えるようにするためには、包括的に知的所有権の帰属を記述します。

   記述例:
     本件プログラムに関する権利(著作権第21条から第28条に定める
     全ての権利を含む)及び成果物の所有権は、甲より乙に委託料が
     完済されたとき乙から甲に移転する。


今回は、「効果的なIT投資」を行う上で、前提となる内容を取り上げました。
今回取り上げた内容を押さえた上で、今後外注管理を行っていただければ幸いです。

次回は、「システム開発業者」と契約を行う上で、「システム開発業者」が見積ってきた
見積り金額の妥当性を見極める方法などを取り上げたいと思っています。

また、「ユーザー企業」様での、プロジェクトマネジメント支援、見積りの前提となる
「提案依頼書」に関しては次回以降取り上げる予定です。

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