いいね~おいしいね~

食べたり買って良かったもの等を実体験に基づき厳選紹介!ぜひご利用頂きより良い人生や日本経済等活性化につながれば幸いです♪

「月給百円」サラリーマン 戦前日本の「平和」な生活(岩瀬彰)

2007年01月26日 01時00分00秒 | 
<金曜は本の紹介>

「「月給百円」サラリーマン」の購入はコチラ

 この本のテーマは、「戦前日本の”ふつうの人”の生活感覚」で、具体的には、大企業サラリーマンや軍人、女性店員の平均的給与がいくらで、それでどの程度の生活ができたのか、東京の家賃はどの程度の水準で、娘を嫁にやればどの程度の費用がかかったのかなどについて書かれたものです。

 意外と現在の感覚に似たものもあり、戦前とはいえ明るい世の中だったんだなぁということも分かります。とてもお勧めな本です!

以下はその中で私なりに面白いと思ったことがらです。

・戦後の復興のスローガンは、戦前で最も経済が安定していたとされる「昭和8年に帰ろう」だった。実際、昭和ヒトケタから昭和30年代なかごろまでの日本人の基本的ライフスタイルはほぼ同じだったといってよい。つまり、戸建ての日本家屋に住み、主に和室で生活し、ふだんの買い物は八百屋や魚屋といった個人商店ですませ、日常の足は公共交通機関に頼るという生活だ。


・昭和初期の約10年間の物価を現在と比較する場合、「およそ2千倍」という水準はいましばらく使える物差しである。たとえば、うな重は昭和初年に60銭程度だったから現在価値で1200円、天丼30銭~40銭が600円から800円、お汁粉15銭は300円という換算に鳴る。もりそばやコーヒー一杯の10銭は現在の200円相当。それほど違和感はない。ビール大瓶は1本35銭前後で現在の700円になるから今の方が安い。東京市電の料金は7銭だから現在の140円相当、地下鉄銀座線は全線10銭だったので今の200円相当、はがき1銭5厘は今の30円にあたる。

・都内の家賃は平均では月十数円で、6畳と4畳半の2間程度しか借りられなかったが、30円から40円出せば東京で二階建ての一戸建てに入居するのも可能だった。40円は現在の8万円相当になる。早稲田、慶応の大学授業料は大正末期から昭和2年頃まで年120円から160円。2006年には慶応が文科系で年約80万円、早稲田は焼く87万円。120円として2千倍なら24万円だから、凄まじい上昇である。自動車はフォードやGMの輸入車が中心で、昭和4年の日本GMの新聞広告によると、ポンティアックの5人乗りセダンが3598円、日本フォードの広告ではセダンが2450円。2千倍して約500万円から700万円という価格は相当高い。

・戦前を通じて収入のひとつの基準になっていたのは「月収100円」、または「年収1200円」だ。大正末期から昭和10年代まで、識者の発言にも新聞雑誌の記事にもひんぱんに登場する収入の目安がこれだ。単純に物価上昇を当てはめれば月収約20万円、年収で240万円である。当時は一応これで生活ができたといってよい。また年収1200円というのはもうひとつ大きな意味があった。大正15年の税制改正で、課税最低額が900円から1200円に引き上げられたからだ。戦前の税制は間接税中心で、個人所得税の免税点は高く、税率も低かった。昭和ヒトケタ当時は1200円以上か以下かは単に生活水準だけを示すのではなく、社会的地位を表す指標でもあった。納税できることは「階級」だった。

・昭和4年12月の「婦人之友」に登場している東京の警察官夫妻は月63円で生活している。家賃12円、米代6円、副食費10円、電気代は2円で済んでいるが、ガスがまだなかったようで薪炭代が3円、新聞雑誌代3円、その他毎月10円貯金し、保険も5円掛けている。夫婦二人なら50円、現在価値にして10万円強で十分生活できている。

・急速に大衆化したとはいえ、一応の社会的体面があるサラリーマンの奥さんなら多少無理をしてもある程度の品質の和服をそろえておかねばならなかった。これは婦人の和服が身分制と一体になっていた戦前の社会感覚と関係があるようだ。きものはコストの高さが家計にとって負担だっただけでなく、当時の女性も脱ぎ着が大変だったのは間違いない。

・コメについてみると、昭和4年の白米10kg(2等)の価格は2円46銭、3人で月12円消費するには50kg買っていたことになる。1人あたりにして15kg以上食べている計算だ。現在の日本人は1人月5kg、年間で60kg強しか消費していないから、戦前の人がいかに大量にコメを食べていたかがよくわかる。

・戦前の平均寿命は50歳前後。若くして結核などで亡くなる人が多かったため。

・大正4年(1915年)に、日本の義務教育就学率は98%を超えていたが、中等教育就学率は20%を切り、高等教育就学率は1%にすぎなかった。戦前の義務教育は尋常小学校までの6年制(1907年以降)で、5年制の旧制中学や高等女学校など中等以上の学校に進む人は少数だった。尋常小学校のうえに、その延長として2年制の高等小学校があり、ここまでは6割以上が進学したが、高等小学校を出ると圧倒的多数は農業など家業の手伝いや商店の小僧、徒弟などとして働きに出ていた。

・ただし、大正期に入って国民の教育熱が上がり、それに応える形で中学校が増設されたことなどから昭和5年(1930年)には中等教育就学率は36%まで上がる。

<目次>
はじめに
第1章 お金の話-基準は「月給百円」
 1 物価はいまの2千分の1
    デフレ後は物価安定期/住宅と教育費は暴騰
 2 「サラリーマン大衆」の誕生
    勤め人の生活パターンが定着/「サラリマン物語」の警告/「引合わぬサラリーマン」
 3 「月百円」の暮らし
    50銭とられて帰る詰将棋/家計調査の始まり/減俸の基準も「月百円以上」/景気回復から百円サラリーマンの消滅まで/月収百円はそのまま手取り/新婚なら月50円でも十分/子供ができると大変/大学まで行かせると最低月40円
 4 いくらあれば「裕福」だったか
    「細雪」姉妹の皮算用/年収3千円が「中流」の目安/実態は9割が年収650円以下/総理大臣の年俸9600円
 5 大格差社会-月百円も遠い暮らし
    加太こうじ少年の昭和ヒトケタ/「カード階級」から「月百円」へ/棺桶を買う金もなく/子供を使い回す乞食
第2章 戦前日本の「衣・食・住」
 1 きもの vs. 洋服
    きものでわかる身分/500円ではすまない恐怖の嫁入り費用/洋服普及運動/洋服は貧乏くさい
 2 「食」の実際-コメをめぐる戦い
    コメ消費はいまの3倍/「悲惨な農民の生活を踏み台にして」/農村は官吏の減俸支持
 3 「住」には悪戦苦闘
    婦人誌の「家賃調べ」をひもとくと/年金代わりの家賃収入/出世を見限った「恐るべきシャイロック」/家を買った方が特か?/昭和初年の不動産価格/郊外住宅の登場
 4 借金-戦前のサラリーマン金融
    悪徳高利貸し横行す/定期券購入も借金で
第3章 就職するまで
 1 学歴の断層
    中学出は高学歴/大学に比肩する専門学校/帝大は圧倒的エリート
 2 過熱する「お受験」
    「子供を実力以上の学校に入れるな」/一番人気は7年制高校/創価学会会長の「お受験塾」/「戦に比べれば何でもない」/コネと裏口
 3 就職難と知識階級の没落
    大卒就職率50%/実業学校のほうが大卒よりまし/「いまの学生はダメだ!」/「米国型教育は素晴らしい!」/就職しか考えない学生/コネと実力
 4 荒れるノンポリ大学生
    早慶戦フーリガン/就職の好転とノンポリ化/英語もHまでしか知らない
第4章 サラリーと昇進の「大格差」
 1 初任給と昇進・出世
    超一流企業の学歴別初任給/新入社員の給与はほぼ手取り/どんどん開く格差/団琢磨のボーナスは40万円!/ホワイトカラーは退職金も巨額
 2 学歴差別解消の昭和維新
    民間では次第に官私差別撤廃/官庁では圧倒的に官学優位/「判任線」の下に呻吟/「私学出は全く人ではない」/司法界に私立出身者が多かったわけ
 3 大正バブル世代と昭和ヒトケタ世代
    50円から100円へ-大正期の給与倍増/バブルで有頂天/学生の就職希望は贅沢か?/生保のセールスで月500円
 4 植民地の給与・外資の給与
    植民地手当は3割/着物は三越に注文/百円以下の月給なし/一旗組を蔑視するインテリ/軍の機密費膨張と「転向右翼」/「外資」で働くサラリーマン
第5章 ホワイトカラー以外の都市生活
 1 自立のコスト
    喫茶店開業に千円/仲見世の家賃27円/タクシー運転手は月収50円
 2 貧乏サラリーマンとしての軍人
    「貧乏少尉、やり繰り中尉、やっとこ大尉」/デーコロとピーコロ/裏長屋に住む将校/大尉になってもまだ大変/同年齢で官僚とは年収に倍の開き/軍人としてのサラリーマン
 3 女性の生活
    恐ろしく低い女性の給与/男よりさらに狭い教育機会/モダンガールの敗北/大売春王国/娼妓の前借り平均千百円/売春料金にもデフレ/戦前の「援助交際」
 4 奥様のムダ使い
    最大の敵は同性/月給百円以下で女中など使うな!/芸者のつく宴会は1回60円/争って着物を仕立てる高級官僚の妻
終章 暗黙の戦争支持
     左翼からのアジテーション/枠組み内の現実のみに目を向け/内に秘めた不満/プチブルの本能的卑怯/景気は回復、サラリーマンはさらにおとなしく/気づいたときは遅かった
おわりに
参考文献

面白かった本まとめ(2006年)
面白かった本まとめ(~2006年)

人気blogランキングアップのためクリックをお願いします!

<今日の独り言>
 スペインのおみやげにもらったお菓子がしっとりしていて、大変美味しいです!!ヨーロッパのお菓子って美味しいですよね・・・

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする