2012年4月30日(月) 家人(かじん)と家内と妻
これまで、当ブログの記事の中で、我が妻を指す時は、“家人”と表し、料理に関することや、園芸・草花に関する事、等々で、何度も使って来ている。
先日、当ブログの下記の旅行記事
春の南伊豆の旅―雛のつるし飾り (2012/3/8)
春の南伊豆の旅―河津桜 (2012/3/21)
春の南伊豆の旅―千人風呂で (2012/3/24)
春の南伊豆の旅―食の楽しみ (2012/3/27)
のコピーを、旅行を共にした知人仲間に上げたのだが、ある知人は、その記事を、奥さんにも見せたようだ。その結果、知人の奥さんは、記事の中の、家人という表現が、大変気になり、家人という言い方が、下僕の様に低く見られている、という印象を受けたという。
後日、知人に会った時に、この事を知らされ、大いに慌てた。上記の記事の中には、この表現が、数回出て来るのだ。 自分としては、二人暮らしの我が妻の事を、むしろ親しみを込めて、多少控え目に、家人(かじん)と表現した積りでいたからである。
ここで、権威ある国語辞典と言われる 「広辞苑」を引いて見ると、
かじん 家人 a 家の内の人 妻子眷族
b 家臣 けにん
とある。即ち、この言葉の aでは、妻だけでなく、同じ屋根の下で暮らしている、親や、子供等も含んだ表現、ということだ。
一方、同じ漢字の「家人」は、上の bにもあるように、“けにん”とも読み、歴史的な使い方だが、同辞書には
けにん 家人 a諸子隷属の
b将軍譜代の臣
などと、可なり悪い、臣下以下のイメージがあり、最後にある
c家に使える従者
は、妻を含めてはいないようだが、可なり低い身分となる。
更に、同じ漢字で、読み方が異なる “いえびと”もあり
いえびと 家人 a一家内の人 家族
b家に仕える人 けにん
c家に出入りする人
との、意味となるようで、aでは、家族全員を指している。
このように、「家人」と言う言葉には、歴史的な古い使い方のイメージがあると共に、低い身分を指す意味と混同されかねない、厄介な紛らわしさがあり、元々、妻だけでなく、家族全体を指すものであるため、妻を指すものとしては、男女同権の現代には、相応しくない表現になるといえよう。
ブログの記事の中では、読み方を、はっきりと、“かじん”と言っていなかったことも、不味かったようだ。
知人の奥さんが、仮に、けにん と読んだのだとしたら、可なり悪い印象を受けたのではないか。
英語では、言うまでも無く、
1人称の自分は I
2人称の相手は You
と、男女の別は無く、基本的に一通りだけで、
3人称で呼ぶ時も He She
と、単純なのだが、日本語の場合は、色んな表現があり、可なり複雑だ。
ここで、今回話題の“夫婦関係”だけに絞った上で、日本語では、どのような呼び方や、表し方があるか、少しく調べ、概略、整理してみた。以下で、●●は姓、○○は名である。
A夫婦2人だけの時の会話で
□1人称:自分を指す時 a
男 おれ わし 僕 ○○ こっち
女 わたし あたし ○○ うち
□2人称:相手を指す(呼ぶ)時 b
男→女 おまえ 君 ○○ ○チャン そっち
女→男 あなた あんた ○○ ○さん そっち
B第3者のいる面前での夫婦の会話で
□1人称:自分を指す時 a とほぼ同じ
□2人称:相手を指す(呼ぶ)時 b とかなり同じ
男→女 おまえ 君 ○○
女→男 あなた あんた ○○ ○さん
子供の前で
男→女 ママ おかあさん
女→男 パパ おとうさん
相手を第3者に紹介する時など c (フォーマルな表現)
男→女 家内 妻 女房 (愚妻は、今や死語)
つれあい 嫁(関西など)
○○、この人の夫、
女→男 主人 夫 亭主 内の人
つれあい
○○、この人の妻
親しい友人の前等で紹介する時 d (くだけた言い方)
男→女 恋女房 ワイフ
女→男 ダンナ ハズ ダーリン 宿六
C第3者との会話で、面前に居ない相手を指す時や、言葉でなく、文章で、相手を指す時は、
□第3人称:上述の、相手を第3者に紹介する時などc、親しい友人の前等で紹介する時d と同じような表現になる。
D夫婦関係にある、他のカップルの、一方を指す時は、敬称が使われるのが普通である。
□2人称、3人称の場合とも:
男性を指す時 ご主人 御亭主 旦那様
女性を指す時 御夫人(●●夫人) 奥様 お内儀
E婚姻届等の住民登録で、戸籍上での、フォーマルな婚姻関係を表す時は
夫 ●● ○○
妻 ●● ○○
としている。夫、妻という言い方は、一種の、役割に対する呼称と言えるであろうか。
前置きで、あれこれ長談義が続いたが、それでは、これから先、自分の場合はどうするか、が重要だ。家人という表現は、妻だけを特定しない上、知人の奥さんの様な受け取り方もあるので、止める事としたい。
一方、その代わりとして、妻や、女房とするのは、自分には、やや、ストレート過ぎる感じなので、今後は、家内 にしよう、と思った。
再び「広辞苑」によれば、
かない 家内 a 一家の内
b 家族
c 自分の妻
とあり、cで、妻を特定する意もあるので、丁度いい感じの言葉のようだ。
この案について、我が“家内”に聞いた所、記事の中での表現は、余り気にしていない、という返事だったが、面白い提案をしてくれた。 ワイフの後に、妻の名のイニシャルを入れて、「ワイフK」がいい、というのだ。
似たような、家内+Kの、家内Kだと、家内という伝統的な言葉と、Kというアルファベット文字の語感が揃わない感じがあるが、ワイフ+Kの、ワイフKだと、現代的な軽い感じで、スマートさもある。
と言うことで、提案を採用し、今後の記事では、この表現を使っていくことにしたいと思っている。
余談だが、遠い昔、自分たちが結婚した時、TPOに応じ、お互いをどう呼ぶかについて、二人で話し合ったことがある。
1、二人だけの時に相手を何と呼ぶか
2、親の前や、第三者の前で、相手を何と呼ぶか
3、生まれて来る子供の前で相手を何と呼ぶか
これらの詳細については、今や記憶が定かではないので、差し控えるが、やはり、最も言いずらく、苦労したのは、2の場合である。