環境の世紀

環境に関す記事や情報の整理・保存のため作成されたブログです。

冷める環境意識 進む気候変動

2010年07月02日 | 地球温暖化

 今日も、関東甲信越から東北にかけて、局所的に激しい雨が降っているらしい。こういった気候の異常な変動は、地球温暖化のためと言われ、待ったなしの対応が迫られている。ところが、ここのところ、環境問題に対する冷めたニュースが続いているのだ。これまでも、地球温暖化懐疑派と社会情勢から取り組みが大きく揺れることが度々あった。しかし、こういった揺れは、無いに越したことはない。それどころか、環境を主軸に据えた経済構造の構築を世界に先駆けて進めなければ、過酷な未来が待っていることは間違いない。

 例としてふさわしいかわからないが、ワールドカップでの日本代表の活躍は、己を知り、できることを総員が尽くした結果であると思うが、もうひとつ、大きな要因がそこにはあったと考える。私見だが、それは、「世界を驚かす強い日本」ではなく、「逆境でも負けない日本」へとチームのコンセプトを変えるという現実的な路線変更であった。

 先日、楽天やユニクロが、社員の公用語をすべて英語として世界進出を図ろうとしているという経営戦略についてNHKが報道していた。同様に、ゲームキャプテンの長谷部選手をはじめ日本代表の多くも、日本語以外の言語を駆使して外国人審判に抗議することができるまでに国際感覚を磨くといった点でも日本はW杯に向けた準備を進めていたのだ。これは、サッカー協会の強化策が妥当であったことを示している。世界を相手としていくためには、こういった一見無意味で地道な準備すら積み上げていくことが大切であるということだ。それは、日本の政治経済であっても同様だと思う。先を見越した地道な準備があってこそ好結果をもたらすのだ。ところが、先日カナダで行われていたG8での話し合いについて6月25日付の毎日新聞は、次のようにまとめている。

・・・カナダで25~27日に開かれる主要8カ国(G8)、主要20カ国・地域(G20)首脳会議。欧州の信用不安が焦点となる一方で、昨年のイタリア・ラクイラサミットで主要テーマだった貿易自由化交渉と地球温暖化対策への熱気は冷め切っている。先進国と途上国の対立が解消しないほか、各国とも足元の経済環境への対応で手いっぱいなためだ。・・・温暖化対策の進展は期待できそうもない。・・・オオカミ少年と言われたくないから、新たな期限を設けることもないだろう。11月のソウルG20に向け、今後の進め方に触れる程度ではないか」とあきらめたよう・・・地球温暖化対策も、昨年7月のラクイラサミットG8首脳宣言で「50年までに世界全体で温室効果ガスの排出量50%削減を前提に、先進国全体で80%以上削減」などの長期目標が盛り込まれた。同年末にコペンハーゲンでの国連気候変動枠組み条約第15回締約国会議(COP15)開催を控え、踏み込んだ内容となった。 しかし、COP15では排出抑制・削減の目標設定に反発する中国やインドなど新興国が強硬に抵抗。決裂寸前で何とか数値目標を盛り込まないコペンハーゲン合意を取り付けるにとどまった。オバマ米大統領は就任当初、温暖化対策に積極的姿勢を示していたが、新興国の抵抗の強さを目の当たりにし、その後はトーンダウン。国内では、中間選挙を控えた議会で温暖化対策についての議論は進まず、「国際会議で協議できる状況ではない」(米メディア)。また、積極姿勢だった欧州も、足元の金融不安や財政危機の影響で議論はストップしている。温暖化問題をG20で議題に取り上げること自体に中国など新興国は反発しており、身の回りの火消しに追われる先進国が議論を挑める状況ではなくなっている。鳩山政権で「2020年までに温室効果ガスを90年比で25%削減」と提唱した日本でも、その内容を中期目標に盛り込んだ温暖化対策基本法案が通常国会で廃案になり、議論は停滞・・・米ホワイトハウス高官の一人は「今年1月以降、大統領の演説原稿から自由貿易と(温室効果ガスの排出量取引の方式の一つである)キャップアンドトレードの文字が消えた」と打ち明ける。また、カナダ首相府のリーダス報道官は、トロントで23日に開かれた記者会見で、「貿易自由化や地球温暖化の問題は主要議題にはならない」と明言。・・・・

つまり、温暖化阻止に対する各国間の意識は完全に冷めきった状況だというのだ。「オオカミ少年」というならば、ビッグマウスで知られる本田選手や「ベスト4」を目標とした岡田ジャパンは、まさにオオカミ少年の群れだと言えなくもない。しかし、そういったビッグマウスを現実化する高い意識が、日本をベスト16まで推し進めたと言えないだろうか。それなのに日本の温暖化対策は、批判を恐れて大幅な後退をするのではないかという懸念が見え隠れするので、残念でならない。

 折も折、温暖化による国家の存亡を訴えていたツバルの報道に異議を唱える記事が出てきた。こういった時期にネガティブキャンペーンのようなこういった記事を載せるのは、温暖化対策推進派に大きなダメージとなるだろう。6月18日のBusiness Media 誠によれば、

・・・米国とカナダのPETプラスチックの業界団体であるNAPCORが、長い間求められていたリサイクルPETレジンのライフサイクルインベントリー(LCI:製品の製造、輸送、使用、廃棄といったライフサイクルの各段階でどれだけの環境負荷を掛けているかの明細)データについての新しい調査結果を発表・・・ちょうど、この環境負荷削減において正しい意思決定ができるよう、科学的に地道にデータを積み上げるニュースが飛び込んできた時、それと対をなすかのようにまったく別の情報が入って・・・ 「ツバルの面積が増えている」ツバルは温暖化による海面上昇の影響で沈みゆく国とされ、政治家や芸能人が大挙して押し寄せ、「ツバルを救え!」と大号令がかかっています。そのツバルの面積が、欧州からの援助機関で運営されている研究機関SOPACの中心的研究者アーサー・ウェッブ氏によると、1984年から2003年までの20年間で17島の面積は、海岸線の移動などによりヘクタール近く(2.8%)増えているとのこと(出所:「私がツバルで見た真実」イースクエア会長木内孝氏、オルタナ18号)。 環境省職員から地球環境戦略研究機関(IGES)に出向している岡山俊直氏によると、2009年時点までのツバルの海岸侵食や内陸浸水は、地球温暖化による海面上昇以外の要因がほとんどという。ツバルにおける海岸侵食は、砂浜の砂が波によって流される自然現象であったり、第2次大戦時に米軍が埋め立てた土地が削られているだけとのこと。特に、波の作用による砂浜の侵食は、一方で島の別の場所では砂を堆積し、砂浜を広げている。つまり、海岸が侵食されているのではなく、波の作用によって、島の形が変わっているということです(面積としては上記から増えていることがうかがえる)。ツバルにおける内陸浸水は、100年前から観察されている事実。現在、浸水がひどい場所はかつて湿地だったところに、人口増加によって、そこに人が住まざるを得なくなったことが要因とのことです。 環境省もこれらの事実を把握しており、2009年にまとめられた報告書では、「問題は、決して『海面上昇による水没』という単純なものではない」「環礁州島(ツバル)の危機はグローバル・ローカル両方の環境ストレスが複合したものであり、現在発生している問題は主にローカルな要因によるものである。ローカルな要因によって、今世紀予測されている地球規模変動に対して脆弱性の高い州島になってしまっている」とまとめています(環境省地球環境研究総合推進費終了研究成果報告書:環礁州島からなる島嶼国の持続可能な国土の維持に関する研究;平成15年度~19年度、出所:「ツバル写真集・地球温暖化でツバルは沈むか?」) 簡単に言うと、ツバルの現状は決して海面上昇という「グローバルな要因」によるものではなく、人口増加やそれに伴う生活排水やゴミの投棄などの環境汚染という「ローカルな要因」が、有孔虫やサンゴなどのツバルの砂浜を形成する生物を殺してしまい、砂が生成されなくなり、海岸浸食が進みやすくなっており、将来海面上昇が進んだ場合には、その影響を受けやすくなっているということです。 つまり、ツバルの現状は、人為的な環境汚染が自らの生活を脅かす警鐘ではありますが、海面上昇による社会への影響ではないということ・・・ いくら人々の関心をひきやすいからといっても、問題を歪曲して誘導してしまうと、問題の原因や課題を誤解し、誤った解決策に右往左往するということになります。もう手遅れかもしれませんが、排水やゴミ処理の適正化や教育による人口抑制など、ローカルな要因に直接取り組むことで、より少ないコストで確実に問題を解決できていたかも・・・環境負荷の削減には異なるアプローチが提唱され、どれが本当に正しいのかなかなか判断がつきません。それどころか、環境負荷削減に対する根拠のない全面的な懐疑論までさまざまな識者から飛び出す始末です。 環境経営は個々の意思決定レベルでみると、あまりにも考えなければならない要素が多く、分からないことだらけです。 私たちは問題が大きすぎたり、難しすぎたりすると、思考停止して問題がなかったことにしてしまいますが、それで問題が消え去ることは決してありません。こうした事態から抜け出すには、誇張することなく、問題は問題と真摯(しんし)に受け止め、冷徹にその原因や課題を分析し、そこでできる最善の意思決定をしていくことと考えます。そのためには、人々が受け入れやすいよう作られた感動的なストーリーよりも、果てしない道のりですが、LCIのような環境負荷削減についての地道な科学的根拠の積み重ねの方が、環境経営やエコを進めていくには必要と考えます。事実を積み上げること、その時その時の意思決定で最善を尽くすこと。遠回りなようですが、これらが困難な問題を解決するための唯一の近道ではないでしょうか。(中ノ森清訓)・・・

事実がどこにあるかは大切なことであり、今後も議論が必要だ。しかし、あらゆる事例が温暖化とそれに伴う気候変動が始まっていることを示唆していることは紛れもない事実なのだ。たとえば、6月26日の時事通信も、パンダすら地球温暖化の影響下にあることを伝えている。

・・・中国英字紙チャイナ・デーリーは26日、地球温暖化の影響でパンダの生息地が北にシフトする可能性があるという専門家の見解を伝えた。今は四川省や陝西省に生息するパンダだが、その北の甘粛省などに移ると予測している同紙によると、中国のパンダ生息数は2004年の調査で1600頭を数え、その多くは野生。森林伐採や土地開発で生息地は次第に狭まり、四川省などの230万ヘクタールとなっている。
 生息地では過去50年間、平均気温が上がり、降水量が減少している。気温の上昇や乾燥した気候は、パンダの成長だけでなく、餌となるササの生育にも打撃・・・

また、「ツバルの国土が沈むという事実はない」と報じたBusiness Media 誠は、6月22日の記事で、次のような記事も掲載している。

 ・・・「氷の河」と書いて氷河となるが、間近で見るそれはまさしく大雪原である。紺碧(こんぺき)の空、白い雪、切り立った黒い岩肌のコントラストはこの世のものとは思えぬ美しさだ しかしながらアルプスの景観を象徴するこの光景も地球温暖化によって、いつの日か消えてしまうかもしれない。ユングフラウ地方にある欧州最大の「アレッチ氷河」を題材として、氷河後退と温暖化の様子を追ってみよう●140年間で「-3000メートル」 スイス南部に位置するアレッチ氷河は長さ23.6キロメートル、総面積約120平方キロメートル、最も深い部分の氷厚は900メートル、水の総重量は270億トン。欧州のみならずユーラシア大陸西部においても最大の氷河である。 氷河を監視している研究組織「スイス・氷河計測ネットワーク」のデータによれば、スイスにある多くの氷河で縮小(後退)がはっきり現れておりアレッチ氷河も例外ではない。・・・年によって縮小量はバラついているものの、10~30年に一度大きな縮小が起き(例えば1880年代)、その発生が年代を追うごとに頻発するようになってきたことが分かる。とにかく減少傾向は一目瞭然で、線グラフが示す通りこの140年間縮小が止まったことはない。1870年代に比べ、アレッチ氷河はおよそ3000メートル縮小している。・・・IPCCは2007年に発表した第4次評価報告書の中で「気候システムの温暖化には疑いの余地がない」とし、「20世紀半ば以降に観測された世界平均気温の上昇のほとんどは、人為起源の温室効果ガスの増加によってもたらされた可能性がかなり高い」と結論付けている。 地球はこれまで大規模な気候変動を何度も繰り返してきた。古代気候の研究によれば最後の間氷期(約12万5000年前)における世界の平均海面水位は20世紀に比べて4~6メートル高かったとされる。地球公転軌道の違いにより極域の平均気温は現在より3~5度高かったようだが、人為的な影響によって20世紀ほど大きく気温が変化したことは今だかつてない。●ないとは言えない「科学情報のウソ」 それでも、温暖化の人為影響説に異を唱える研究者は少なくない。氷河の縮小にしても「本当に人間が原因なのか?」というわけだ。 そういえば2010年初頭、メディア上でICPP第4次評価報告書のミスが報じられ話題になった。「国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が2007年に出した第4次評価報告書で、ヒマラヤの氷河が『このまま地球温暖化が続くと、2035年までに消失する可能性が非常に高い』とした記述について科学的根拠がなかったと、英紙サンデー・タイムズが17日付で報じた」(朝日新聞、2010年1月19日付) このことだけで報告書の信頼性が崩れるわけではないが、憶測に基づいた不確かな内容が世界に大きな影響を与えたことに、筆者は極めて大きな危険を感じる。単なるミスならまだしも、「英紙テレグラフは、ICPPのパチャウリ議長が、温室効果ガスの排出量取引などでもうけている銀行の顧問なども務め、その報酬はパチャウリ氏が理事長を務める団体に振り込まれていると報じている」とのオマケ付き。その真相は明らかにされていないが、「科学的データ」という権威を用いた情報操作が常に起こり得ることを心に留めておくべきだろう。いずれにしろ地球温暖化の脅威が一昔前に考えられていたより遥かに早い速度で増しているのは確かだ。21世紀の最重要課題に、われわれはどう向き合えばよいのか。たとえ温暖化の原因が自然起源か人為的なものか100%の答えが出ていなくとも、人為的の可能性が大きい限り、常にグローバルな視点を抱きながら自分のできることを1つずつ実行してゆく姿勢が大切・・・

信念が揺らぎ、批判の矢面で心が折れそうになることは、誰しもある。そんな時、「志」を貫き、信じた道を力を合わせて進むことの大切さを今回のW杯日本代表は教えてくれた。監督を務めた岡田氏は、戦前は北海道で農業をして暮らす? と語っていたが、帰国後の記者会見では、まだ先のことは未定だとお茶を濁した。先のことは誰にもわからないが、目標に向かって努力することで道が開けることを教えてくれた今回の戦いぶりは、久しぶりに、まじめにハードワークする「日本人のよさ」を思い出させてくれたような気がした。「批判したサポーターもサポーターだ。」としてそれをバネにした若者たちに、私は大きく勇気づけられたものである。日本の環境に携わる人々には、こういった逆境でこそ力を合わせ、信じた道を貫いていってほしいと願わずにはいられない。岡田ジャパンのように・・・。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿