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桐野夏生 『夜の谷を行く』 連合赤軍事件

2017-05-11 09:44:51 | Weblog

先日、20数年ぶりに当時仲間だった人の一部で「再開の夕べ」を催した。懐かしさ、お互いの現状報告、姿は年を取ったが、中身は相変わらずだなあと。でも後始末もしないでいなくなりやがってという思い。僕などは、変わり身早く巧くやりやがってと思われているのだろうなあ。

 

『夜の谷を行く』(桐野夏生著 文芸春秋 2017年刊)

さすがは、桐野夏生、最後までグイグイと一気に読ませる。★★★★★!

ストーリーは、1972年連合赤軍、あさま山荘事件から40年後、2011年永田洋子の獄死が報じられたところから始まる。追い打ちするように3.11東日本大震災、ひとつの時代が終るのか。それまで名前を変え社会の片隅でひっそりと生きてきた事件の関係者たちがおのれの人生の終盤を迎えて動き始めた。

登場人物たちは、何らかの形でこの連赤事件に関係しており、それぞれが心の奥底で引きづっているものがある。現在を目立つことなく平凡に生きようとしている自分。しかし、ひとたび40年前に時間を引き戻されると、その頃の自分がにわかに持ち上がってきて、わだかまりとして残っている他者に対する鋭い批判、自己に対する悔悟が噴出する。

配置された登場人物たちの距離感が読みどころ。何らかの意図をもって自分に接近してきているのかと疑心暗鬼に囚われるが、実は無関係、自己の中で作り出した幻想。中々正体がわからず自分との関係性が見えなかった人物が実は・・・最後の最後に見事な謎解き。

 

僕は、東日本大震災で時代が変わったとか、思想に変化が起きたなどと言う人を信用しない。一時的に反原発で盛り上がっていた人たちも案の定持続力が切れてきているように感じる。そういう輩は、他国からのミサイル一発で今度は排外主義を声高に叫ぶのだろうから。

僕の連赤事件に対する問題意識は、左翼組織の病理解明だ。親がソ連共産党であれば、その子は日共、その孫は新左翼、その中に連合赤軍がいる。連綿と引き継がれたDNAの解析だ。桐野氏は、それを完全に私的物語にしてしまった。でも見事なものである。

なお、連赤関係についてはこのブログで、2008.4.29に『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』(若松孝二監督 若松プロダクション・スコーレ株式会社製作 2007年作品)、2014.4.30から2014.7.10まで5回にわたり『レッド Red 1969-1972 1から8』(山本直樹著 講談社イブニングKCDX 2007年から2014年刊)、2014.6.14に『落ちたって、いいじゃん! 逆転発想にこそ南関中学合格のカギがある』(金廣志著 角川書店 2009年刊)を書いた。

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