功夫電影専科

功夫映画や海外のマーシャルアーツ映画などの感想を徒然と… (当blogはリンクフリーです)

『となりの凡人組』

2009-09-05 23:11:45 | 倉田保昭
「となりの凡人組」
製作:1993年

▼ビデオバブル期に全盛を極めたVシネ業界では、実に多くのヤクザ映画(俗に言う「ネオヤクザ」もの)が作られた。一般的にヤクザVシネのイメージといえば、暴力的・残虐性・竹内力・跡目争い・白竜・エログロ・GPミュージアム・哀川翔といったアウトローな印象が強く、とっつきにくさを感じる人も多い事だろう。そのあたりのイメージを逆手に取り、シチュエーション・ギャップを見せることで物語を綴っているヤクザVシネも少なくない。
例えば『極道ステーキ』は大卒の武術家青年がヤクザになるという話で、コミカルな部分もあって中々悪くない。他にも『FM89.3MHz』『特攻会社員』『ゾク議員』のような作品もあり(ヤクザじゃないのも混ざってるけど)、古くは『やくざ坊主』という時代劇にそのルーツが垣間見える。本作もその流れを汲んだ作品で、主人公が平凡なサラリーマン…にしか見えない伝説のヤクザという設定の作品だ。

■主人公・倉田保昭は、かつて金色の唐獅子牡丹を背負って関西を席巻した伝説のヤクザだったが、今は繁華街の片隅で小さな組の親分として暮らしている。ただし自分の身分は娘の中山忍には内緒で、娘に真実を告げるか否かで倉田は悩んでいた。そんな折、倉田らのシマに山王会氷室組という大型組織が参入し、荒貝組の菊池健一郎と共に余談を許さぬ状況となっている…が、それよりも倉田が心配なのは、中山と菊池が交際しているという事実であった。
菊池も中山には自身の身の上を言い出せずにおり、倉田は菊池に「うちの娘から手を引け!」と言う。そんな時、ふとした事から倉田と菊池の正体を知ってしまった中山は、突然現れた氷室組によって誘拐されてしまった。倉田と菊池はたった2人で敵地に向かうが…。

▲本作はのちに第3作まで作られたシリーズの第1作にあたり、かなりコメディ色の強い作品になっている。主演を飾った倉田保昭もギャップの大きい役柄を好演しており、物語にも破綻は無かった。ただ問題なのは、本作の主演が「倉田保昭である」という点だ。
李小龍(ブルース・リー)登場以前の香港に乗り込み、鋭い蹴りで現地の観客に賞賛の嵐を受け、ジャッキー・サモハン・ユンピョウらと互角の勝負を繰り広げ、本作の翌年には李連杰(ジェット・リー)を相手に死闘を展開し、今もなおバリバリ活躍中というのが倉田保昭という男である。そんな彼が伝説のヤクザなんて大層な役を演じるのだから、当然アクションに期待しない方がおかしい筈だ。
ところが本作での倉田は全く何もしない!敵の三下とバトルになりかけても、途中で邪魔が入ってやっぱり闘わない!コメディ部分は悪くないけど、とにかく全然闘わないのだ!倉田がようやく動き出すのはラストバトルを迎えてからだが、ここも随分とアッサリ目であまり面白くない。しかも最後まで大物ぶっていた敵ボスは倉田に瞬殺される始末…第2作以降がどうなっている知らないが、もし本作を倉田保昭のアクション目当てで見ようとする人がいるなら、私は敬遠したほうがいいと思います。
ところで本作で倉田と共演した中山忍、その後『レジェンド・オブ・フィスト/怒りの鉄拳』でも倉田と共演していたが、もしかして本作の縁故で出演したのだろうか?

最新の画像もっと見る

8 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
燃えよCIA日本版V (蛇形酔歩)
2009-09-08 01:02:35
こんにちは! 龍争こ門さん。
「燃えよCIA」日本版ビデオはフナイからでてたと思います。 都内ならまだレンタルもあると確認してます。
返信する
返信! (龍争こ門)
2009-09-09 02:49:21
蛇形酔歩さんこんばんは!

>「燃えよCIA」日本版ビデオはフナイからでてたと思います。
『燃えよCIA』情報、ありがとうございます!当方は山口県在住ですが、行ける範囲のレンタルショップは店舗整理によって全て味気ないDVD専門店になってしまい、レアなソフトは県外に脱出しないと見つからない陸の孤島と化しています。
出来れば東京に行ってビデオソフトの探索もしてみたいですが、いかんせん山口からは距離があるので、私にとって東京は香港と同じぐらい遠い場所であります(苦笑)。ですが、もし行く機会があれば探してみたいと思います。
返信する
初めまして! (塚原新)
2009-09-26 11:43:23
こんにちは、龍争こ門さん。初めて書き込みさせていただきます。
 このブログは、非常に力が入っていますね。功夫映画を扱っている所は多いのですが、マーシャルアーツ映画やVシネまでフォローしているのは珍しいと思います。龍争こ門さんの映画への愛が感じられますね!
 自分もこのブログに影響されて、はるか昔に見切りをつけた(笑)、ポスト・ヴァン・ダム系の映画やVシネを再びあさり始めました。
 今回ご紹介されている『となりの凡人組』も、「そういや、こんなのあったな~」とさっそく見てみました。…う~む、確かに倉田先生の殺陣が、物足りなすぎますね。これは、かなり残念ですよね。
 ただ、龍争こ門さんのが「全然闘わない」という内容紹介のおかげで、心の準備が出来ていたため(感謝!)、意外と楽しめました。Vシネとしての出来は上の方だと思います。
 お忙しいでしょうが、これからも幅広くキレのあるレビューを続けていって下さい!
返信する
返信!(3) (龍争こ門)
2009-09-28 00:42:10
塚原新さんこんばんは&初めまして!

>マーシャルアーツ映画やVシネまでフォローしているのは珍しいと思います。
どうもありがとうございます。このブログを開設した当初、マーシャルアーツ映画専門のサイトというものが少なかったので「自分でもやってみよう」と思い立ち、功夫映画とのハイブリットなブログへ落ち着きました。
また、Vシネ作品もレビューしているサイト自体あまり見かけない事もあり、格闘作品を中心に紹介している次第です。

>…う~む、確かに倉田先生の殺陣が、物足りなすぎますね。これは、かなり残念ですよね。
同時期のVシネ作品でも格闘シーンの充実した作品が存在しただけに、この作品の出来は勿体なかったですね。ただ、仰るように本作のクオリティは水準以上の出来になっていますし、硬軟織り交ぜた作風なども評価できます。
これで格闘シーンもはりきってくれたら文句なしだったんですけどねぇ(爆

>お忙しいでしょうが、これからも幅広くキレのあるレビューを続けていって下さい!
どうも!色々とアレな感想ばっかりですが、頑張っていきたいと思います!
返信する
凡人組2 (塚原新)
2009-10-17 02:03:52
 龍争こ門さん、こんばんわ。

 先日、気になって『となりの凡人組2』を見てみました(笑)
 ジャケットには名前が無かったのですが、シーザー武志が今回の敵ボス(設定・空手四段)だったので、「これは意外にイケるかも!?」と期待したのですが…

 格闘シーンは、さすがに前作と比べ物にならないぐらい増えており、ザコ十数名&シーザーとの一騎打ちで、ふんだんに見せてくれます。ですが、自分としては今ひとつパッとしない出来でした。殺陣として華が無い(メリハリやキメなどの演出)という感じです。
 また、それ以上に残念だったのが、単純に作品としての面白さが、前回よりもかなりダウンしてしまったことです。二作目の難しい所でしょうが…。
 積極的にオススメは出来ませんが、殺陣のチェックをするだけなら見てもいいかも?…といった感じの作品でしょうか。ちなみに格闘シーンはラストのみです。

 こうなったら、『3』も行ってみようと思います(笑)
返信する
返信!(3) (龍争こ門)
2009-10-18 01:43:23
塚原新さんこんばんは!

>『となりの凡人組2』
おお、ご覧になりましたか。アクション面は第1作より大分改良されているようですが、ストーリーに難有りとは致命的ですね。私としては任侠コメディを貫いて欲しいところですが、やっぱりシリアス路線にいっちゃうんだろうなぁ…(汗)。

>こうなったら、『3』も行ってみようと思います(笑)
頑張って下さい(笑
返信する
結局… (塚原新)
2009-10-28 20:16:14
 龍争こ門さん、こんばんわ。

 『となりの凡人組3』見てみました!(笑)やはり3作目ともなると、話・キャストのパワーダウンが目立ちました。倉田保昭のアクションもやはりラストだけでした。

 >私としては任侠コメディを貫いて欲しいところですが、やっぱりシリアス路線にいっちゃうんだろうなぁ…(汗)。
 するどい読みですね!龍争こ門さんのおっしゃる通り、コメディ色は減って不必要にハードな展開になっていました。

 今回の良い点は、短刀(倉田)VS槍という変わった殺陣があり、やや見所になっていた所です。まあ、それ以外は倉田保昭の魅力が、充分に発揮されているとは言えない出来ではありましたが…
 このシリーズは、自分としては…
 作品としての出来が、1>>2>3で、
 アクションは、3≧2>1といった感じでしょうか。
 う~ん誰がこの情報を必要としているんでしょうね(爆)

 もし、すご~く暇なら『3』のラストだけ見てみるのも一興かと…。まあ、それよりも『黄龍 イエロードラゴン』を見た方がいいと思いますが(笑)
返信する
返信! (龍争こ門)
2009-10-30 02:50:04
塚原新さんこんばんは!

>『となりの凡人組3』見てみました!
遂に見ましたか!予想通りの結果になってしまったのは残念ですが、コメディといっても基本は任侠モノですし、こうなったのもなるべくして成ったというところでしょうか。けど、どうせなら最後まで作品の色を守って欲しかったですね。

>作品としての出来が、1>>2>3で、
>アクションは、3≧2>1といった感じでしょうか。
情報ありがとうございます。倉田保昭はJACでさえも持て余していた逸材ですし、Vシネでこうなってしまったのは仕方がないとも言えますね。思えば『ザ・格闘王』も、振り付け次第ではもっと凄いアクションが見れたと思います。
『黄龍』は以前中古ビデオで見ましたが、ヒロインが性格悪かったのとストーリーが珍奇だったことぐらいしか覚えていません(苦笑
返信する

コメントを投稿