功夫電影専科

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『恋はいつも嘘からはじまる』

2010-07-06 23:39:01 | 洪金寶(サモ・ハン・キンポー)
「恋はいつも嘘からはじまる」
原題:過埠新娘
英題:Paper Marriage
製作:1988年

▼デブゴンこと洪金寶(サモ・ハン・キンポー)が主演した現代アクションであるが、今回は香港返還に絡んだ移民問題を取り上げ、更には張曼玉(マギー・チャン)を呼んでジャッキー的な演出にも挑戦している。軽快なサモハン・コメディにしてはテーマ性が強いように思えるが、その原因は直前に撮られた戦争超大作『イースタン・コンドル』が関係している。
この頃、サモハンはフィリピンで一大ロケーションを敢行した『イースタン・コンドル』を発表したが、本人の思惑とは裏腹に客足は伸び悩んだ。ベトナム戦争を背景にしたハードで暗い物語は、明るく楽しい作品を求めていた香港の観客には受けなかったのである。加えて、『イースタン・コンドル』はテーマ性が希薄であり、取って付けたようなアメリカ批判で物語は締めくくられていた。本作はこれらの失敗を鑑みたサモハンが、明確なテーマと明るいコメディ描写を前面に押し出して作った「観客への返答」ともいうべき作品なのである。

■ボクサー崩れのサモハンは異郷の地でしょぼくれた生活を続けていた。同じ頃、彼氏といっしょにカナダへ移住しようとしていた張曼玉は、永住権を得るために偽装結婚をしようと計画していた。この偽装結婚のバイトに友人の紹介で乗ったサモハンであったが、彼自身は妻に逃げられた過去を持っているため、あまり張曼玉にいい印象を抱いていなかった。ところが、張曼玉の彼氏が結婚資金を持ったまま逃走してしまったことから、張曼玉は無一文で放り出されてしまう羽目に。
ただでさえ貧乏なのに、更に新しい同居人が増えてしまったとあっては家計が火の車。そこでサモハンは、再びリングに上がってボクシングの試合に参加する。手始めに高飛(コー・フェイ)を倒すと、かつての妻が再婚した男・周比利(ビリー・チョウ)との因縁の対決にも見事勝利した。ファイトマネーを手に意気揚々と帰宅したサモハンだったが、一方の張曼玉は知らないで参加した泥レスの試合で酷い目にあっていた(このシーン、私はあんまり好きじゃありません)。
 このことでサモハンと張曼玉は悶着を起こすのだが、騒ぎの中で張曼玉のバッグがマフィアの持っていたバッグと入れ替わってしまい、目も眩むような大金が2人のもとに転がりこんだ。「これで大金持ちだ!」と喜ぶサモハンと張曼玉であったが、当然マフィアが黙っているはずがない。マフィアの狄威(ディック・ウェイ)は張曼玉を連れ去ると、例の大金を持ってこいと要求してきた。サモハンは仲間たちの協力を受け、遊園地でマフィアと対決するのだが…?

▲一連のサモハン式コメディ映画としては、少々中途半端な作品である。あまり笑えるギャグも無いし、張曼玉の扱われ方も単に惨めなだけで面白くも何ともない。ストーリーも勢いで押し切っている"だけ"という感じであり、全体の評価は及第点一個下といったところだろうか(ただ、移民問題に振り回されるサモハンたちの七転八倒ぶりは、滑稽だが悲壮感を感じさせるものとなっている)。
しかし、功夫アクションとなると途端に生き生きしてくるのがサモハン映画というものである。見せ場は中盤の試合とラストの大乱闘の2つだけだが、どちらも激しいスタントとアクションで彩っていて、とりわけ周比利のキャラがとても魅力的だ。本作の周比利は寡黙なキックボクサーで、サモハンにとっては妻を奪った恋敵でもあるのだが、彼はなんとラストの決戦にも参加!昨日の敵は今日の友と言わんばかりに、次々とマフィアを蹴っ飛ばす大活躍を見せるのだ。個人的には『精武英雄』の極悪軍人藤田、『ワンチャイ/天地覇王』の馬殴り王と共に、周比利3大名演の1つとしてカウントしています(笑
 そんなわけで、アクションは満点だけどストーリーはチョメチョメという、サモハン映画の典型のような作品。お世辞にも張曼玉の魅力が発揮されたとはいえないが、周比利の魅力は存分に発揮されているので周比利ファンなら満足できるかも。…ところで、最後のアレで周比利は死んじゃったのだろうか?

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