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暇なおじさん。
囲碁(四段)2013年10月取得、自炊本の作成、Excelマクロを利用したプログラム作成。

めでたさも……

2014年01月01日 06時33分05秒 | 日記

 (天声人語)平成25年12月31日・朝日新聞
 めでたさも……


 万葉集全20巻の掉尾(ちょうび)を飾るのは、元旦の祝い歌である。因幡守(いなばのかみ)だった大伴家持(おおとものやかもち)が賀宴で詠んだ。〈新(あらた)しき年の始(はじめ)の初春(はつはる)の今日降る雪のいや重(し)け吉事(よごと)〉。吉事とはよいこと、幸運なこと。そして当時、雪は豊饒(ほうじょう)のしるしとされた
▼めでたい正月にめでたい雪が降るように、よいことがますます重なりますように、という祈りだろう。この歌に昨秋、メロディーがつけられた。「千の風になって」の新井満(まん)さんに鳥取市が頼んだ。元旦だけでなく就職や入学、結婚など、色々な祝い事で歌える仕掛けにしたという
▼もっとも家持の因幡赴任には都からの左遷説があるらしい。とすれば、めでたい心境どころではなかったかもしれない。国文学者の故西郷信綱(のぶつな)さんが辛い評を書いている。〈おのが心の雪空のような落魄(らくはく)を、もっと堂々とうたえなかったであろうか〉。色々な解釈があるものである
▼2014年のわが日本も一本調子にめでたいというわけにはいかない。暮れの証券取引所は沸いたが、路上で新年を迎えた人々も少なくない。「派遣村」から5年、この年越しも各地で民間の支援団体が炊き出しをしたり弁当を配ったり、奮闘している
▼家のない人が見えにくくなっているという。屋根だけはあるネットカフェなどで夜明かしする人がどれだけいるか、実態はわからない。家があっても社会と関わらず孤独死に至るお年寄りも増える
▼なんの力にもなりはしないが、せめてと思ってつぶやいてみる。いや重け吉事、いや重け吉事。



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