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暇なおじさん。
囲碁(四段)2013年10月取得、自炊本の作成、Excelマクロを利用したプログラム作成。

 (天声人語)狂、痴、愚の3文字

2014年01月03日 08時15分44秒 | 日記

  (天声人語)狂、痴、愚の3文字


 年の初めに今年の抱負を考えたり、目標を立てたりした方も多いだろう。当方ことさら抱負もないが、なにか新たに心に刻む言葉はないかしらと引き出しをあさったら、一枚の切り抜きが出てきた
▼漢字学の大家、白川静(しずか)さんが10年前の週刊誌に寄せた短い文章である。「私のごひいき」を三つ挙げる趣向の欄で、碩学(せきがく)は「狂(きょう)」「癡(ち)」「愚(ぐ)」の3文字を選んでいる。癡は痴の旧字。いずれも穏やかな字面ではない。なぜこれがごひいきなのか
▼狂は気がくるうことではない。好むところに溺れること、憑(つ)きものがおちないことをいう。例えば風雅に徹する人のことを風狂の徒という。それは〈世間の埒外(らちがい)に逸出しようとする志をもつもの〉であり、狂とは〈最大の讃辞(さんじ)〉だったという
▼痴の字が痴漢という忌まわしい語にもっぱら使われていることを白川さんは嘆く。本来はうつつをぬかすという意味だそうだ。ただ、狂ほどは激しくない。控えめな狂。昔の文人墨客には書痴(しょち)などと称し、みずからを誇るものがあった
▼愚の字の上の部分は、頭部の大きい爬虫類(はちゅうるい)のかたちらしい。姿はいかめしいが動きの鈍いもの、機略に乏しいものをいう。狡知(こうち)ある人からみると温和な人は往々、利口とみえない。大賢は愚なるがごとし。愚も〈甚だ高次の徳性を意味する語である〉
▼三つの文字は〈人間の至境〉を示す。とても凡夫の及ぶところではない。それでも頭の隅に置いておくことくらいは許されるだろう。書き初めにはどうかとも思うが。



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