熊本地震:いつまで経っても2次元的水平思考の震災対応 3次元的垂直思考へと転換すべきではないか

2016-04-28 11:44:26 | Weblog


 大震災後の避難所生活で常に問題となるのはプライバシーである。これも被災者にとって定番化している不都合なのだが、災害のたびに不都合を繰返し、繰返させている。

 熊本地震10日後の4月24日になって避難所となっている熊本市中央区帯山西小学校体育館に世界的な日本人建築家が紙筒製高さ2メートル、直径は10センチ程度なのか、円形の支柱を立てて、支柱の頭近くに空けた横穴に同じ紙製のより直径の小さな棒を差し込み、支柱と支柱の間に渡して、それぞれの渡し棒に布のカーテンを張って個室に仕立てたと、4月24日付「NHK NEWS WEB」が伝えている。

 記事は、〈この避難所では、教室や運動場で避難生活を送る人たちの一部を、今月28日以降、間仕切りを設けた体育館に移すことにしています。〉と解説しているが、間仕切りした個室に移すのか、間仕切りの個室には既に体育館内に避難していた被災者に“入居”して貰って、移動により空いたスペースに教室や運動場への避難者を受け入れるのかは記事の文章のみでは判断はつかない。

 作り出した個室は2メートル四方60室。畳2帖に少し余裕を持たせた広さとなるから、家族であるなら、2人入れることになる。占めて120人。「西日本新聞」が4月23日現在の帯山西小学校体育館避難者数を約200人と伝えているから、かなりの収容率と言うことになる。
 
 確かに周囲の視線を遮ってくれて、気にしなくても済む。だが、あくまでも2次元的水平方向の活用に過ぎない。コミュニティ体育館の有効天井高は7メートルが標準だそうだが、避難所が小学校と言えども体育館である以上、垂直方向の天井までの有り余る空間を有効活用の対象にしていないことになる。

 上を見ると、だだっ広くガランとしていて、下を見ると避難者がひしめき合い、雑然としていて、奇妙なコントラストを描いている。

 他の避難所でもダンボールやカーテンを利用して間仕切りとしたスペースを設けている場所もあるようだが、ほんの一部であり、どれも2次元的な水平方向の空間利用でしかないようだ。

 何日か前のブログで2004年11月2日に当時自身のホームページに載せたものの、許可容量の関係で現在は削除状態にある「市民ひとりひとり」、《第71弾 井戸の活用による地震後の避難生活の改善》を参考にして震災発生時の避難生活での井戸の活用を取り上げたが、避難所生活での複数段ベッドを用いた3次元的垂直方向の空間利用についても書いている。

 〈戦前・戦後から建て替えなしの住いならともかく、経済大国下に建造された住居は住人それぞれのプライバシーを保護できる密閉可能な部屋を個別に持ち、そういった建築が主流となって久しいが、そのことから比べると、体育館といった避難場所は隅から隅まで仕切りは一切ない広々とした1つの空間に雑魚寝同然にひしめき合った状態でそれぞれが居場所を確保しているのみで、プライバシーを守る道具立ては何もない。自分の居場所示す目印は敷き放しの布団であり、家族同士が布団を寄せ合って一家の敷地替りとし、その上に柱も壁もないごく限られた空間を住居の代用として、寝起きの用を足す不便・不自由の我慢を簡易住宅が建設されるまで強いられている。

 このお馴染みの光景を改善して、プライバシーを少しでも確保するには、体育館等の避難空間を従来どおりに二次元的にではなく、組立て式の複数段ベッドを組立て、設置する、三次元的な利用方法を用いたらどうだろうか。5人家族なら、5段ベッド、3人家族なら、3段ベッドというふうに、家族ごとに段数を構成すれば、家族の一体感がかなり守られるし、ベッドの手摺り部分にカーテンを取付けることができるようにしておけば、それぞれのプライバシーもそれなりに保護することができる。

 二次元から三次元に利用方法を変更することによって、従来以上の避難住民を引受けることができるのではないか。もしそれが可能となったなら、狭い車の中で避難生活を余儀なくされている住民を少なくすることもできる。ベッドは余震で倒れないように固定しておかなければならないが、それは技術的には難しいことではない。

地震は日本のどこでも発生すると考え、すべての地方公共団体が事後の対策を準備しておかなければならない。複数段ベッドは避難場所に予定されているすべての学校、及びすべての地方公共団体が所有するすべての体育館、その他に備えておくこととする。予算は、役人どもが税金を誤魔化して呑んだり食ったりの裏金作りをやめ、政治家が税金を使った公共事業を利用して私腹を肥やす乞食行為を改めたなら、そのカネを複数段ベッドの購入に振り向けたとしても、莫大なお釣りが返ってくるはずである。〉――

 後で組立て式の複数段ベッドだと未使用時の保管場所のスペースが広くなり過ぎるし、使用時間より未使用時間の方が圧倒的に長期に亘るから、保管場所の確保その他で効率の悪い利用方法であることに気づいた。

 だが、体育館といった天井の高い空間上部を利用せずに天井近辺から見たら下界さながらの床部分のみで避難者が肩身狭くひしめき合っているのは、例え止むを得ない事情からであったとしても、人間としての存在をあるべき状態から損なわせていることに変わりはないはずだ。

 だからこそ、紙の筒で作った支柱と渡し棒とカーテンで作った個室を用意することになったのであり、そうすることで人間的存在としてのあるべき状態に少しでも戻そうとしたのだろう。

 惜しむらくはそれが2次元的な水平方向の空間利用にとどまっていて、より多くの被災避難者を一個所の避難所に収容し、なおかつそれぞれに心身の余裕を与えることが可能となる3次元的垂直方向の空間利用にまで進んでいないことである。

 勿論、可能かどうかの問題が生じるが、定番化させたままプライバシーの問題を繰返すのか、可能性に挑戦して、少しでも問題解決に向けて努力するかである。

 組立て式の複数段ベッドに替えてストックの手間を省くことができ、3次元的垂直方向の空間利用を可能とするより簡便な方法として建設現場で使うレンタルの組み立て式の二側足場(ふたかわあしば)の利用を思いついた。

 すべての部材が規格化されていて、それぞれの部材のはめ込む位置さえ覚えることができ、高所作業に不便を感じなければ、誰でも組み立てることができる。ネット上から画像を探し出してきて貼り付けておいたが、横幅が1524ミリあるから、二人並んで寝転がることができるし、高さがつなぎの重なる長さを除くと150センチ程になって立つと頭を下げなければならないが、下界でひしめき合っているとき程には不自由しないはずだ。

 組立形式で、縦方向に望み通りの長さで伸ばしていくことができる。横方向は同じ足場を2列、3列と建てていくことで広げていくことができる。

 間に5~60センチ程の通路を取れば、出入りの移動がよりスムーズになるし、通路が僅かながらでも緩衝空間となってプライバシーの保護に役立つ。

 床となる足場板はスチール製だが、気候に応じて毛布なり布団なりを敷けば、不便を凌ぐことができる。枠の縦棒から縦棒に紐を渡してカーテンを取り付ければ、最低限のプライバシーは守ることができるし、何よりもエコノミークラス症候群発症を抑えることができるはずだ。

 バスケットコートの横幅は14~15メートルだそうだから、体育館の横の広さはそれ以上にあることになり、足場の横幅を1.5メートル、通路を0.5メートルと見て、合計2メートル。6列か7列は十二分に取ることができる。

 避難所の体育館がコミュニティ体育館の標準有効天井高どおりに7メートルあれば、3階建、あるいは4階建ても不可能ではない。いくつかの足場レンタル会社と契約を結んでおいて、地震発生と同時に夜中だろうが何だろうが従業員を緊急に狩り出して持間を問題とせずに配達して貰う。道路が寸断されていたなら、消防のヘリなり自衛隊のヘリなりが緊急に運搬する計画を立てていたなら、避難所に資材を持ち込みさえすれば、規格品を組み立てていくだけだから、3時間か4時間で組み立てることができるはずだ。

 レンタルだから、避難所閉鎖と同時に返却すれば、ストック場所の必要もないし、ストックにかかる費用もゼロで済む。

 どのような方法であっても、2次元的な水平方向の空間利用から3次元的垂直方向の空間利用が可能になれば、今まで以上にプライバシーを保護できる状態で一つの避難所により多くの被災者が受け入れ可能となり、その分避難所の数を減らすことができるだろうし、車中泊避難者の数も減るだろうし、一箇所により多くの避難者を集めることによって食料や飲料水等の物資支援・補給、その他の管理が今まで以上に行き届くことになる。

 避難所での寝起きの空間とそこでのプライバシーの確保の問題だけではなく、生活上の管理が行き届くことによって被災者の不便が和らげられることになれば、何よりも人間的存在としてのあるべき状態により近づけることができるはずだ。

 既に東海地震、南海地震、東南海地震、東海地震と東南海地震と南海地震連動の南海トラフ地震、そして首都直下型地震が想定されている。いずれが発生した場合でも、避難者の数は熊本地震の比ではないかもしれない。

 経済大国を誇る以上、如何なる場面に遭遇しても人間の暮らしがそれなりに追いついていくべきだし、追いついていかなければ経済大国の名に恥じることになるのだから、2次元的水平思考の震災対応はそろそろ打ち切りにして3次元的垂直思考への転換を図ることによって避難所でのプライバシー問題や生活の余裕のなさを何らかの方法で少しでも解決すべき時期に来ているはずだ。



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