橋下徹大阪市長の“普天間県外”、前回同様言うだけ番長で終わらないことを望む

2012-02-24 12:52:41 | Weblog

 言うだけ番長の前原誠司民主党政調会長が昨2月23日(2012年)、産経新聞が前原を「言うだけ番長」と呼び習わしていることにペンの暴力だと抗議、自身の記者会見に産経新聞の記者の入室を拒否したという。

 勿論、「言うだけ番長」は前原誠司に対する蔑称である。尊称であるはずがない。記者会見の場に入室を断ったということはそれだけ苛立っていたことの証明となる。我慢できなくなったことに対する報復行為が記者会見出入り禁止というわけである。

 本人は「言うだけ番長」の蔑称に実体はないと見たから、報復行動に出た。実体があると見たなら、とても恥ずかしくなって政治家をやっていられなくなるに違いない。

 だが、2011年民主党代表選では世論支持はダントツの1位だったが、その高支持率に反して1回目投票で極貧支持率の野田候補の下につけて3位。野田・前原連合、野田勝利でやっと生き残ることができた経緯は「言うだけ番長」を実体と見做している勢力が党内に存在していたことの証明であり、そのことも影響したはずだ。

 「言うだけ番長」とは言葉通りには行動しない有言不実行、あるいは言いっ放しの有言放置を正体とする。2009年9月民主党が政権を取り、国交相と北方担当相に就任、同年10月に北方担当相として根室を訪問、納沙布岬から対岸の北方四島を視察、次のように発言した。

 前原国交相「歴史的に見ても国際法的に見ても(北方領土は)日本固有の領土。終戦間際のどさくさにまぎれて不法占拠されたもの。やはり四島の返還を求めていかなければならない」

 だが、ロシアから「不法占拠」発言が挑発的だと抗議を受け、党内からも批判されると、「不法占拠」を封印、次のように表現を変えたことも「言うだけ番長」であることを証明している。2010年11月の衆院外務委員会での発言。

 前原国交相「北方領土は我が国固有の領土であるけれども、管轄権を事実上行使できない状況が続いている」

 「不法占拠」だと大筒の花火を勇ましく打ち上げたものの、大空にヒュルヒュルと炎の尾を引いて上がりはしたが、期待に反して空の闇を照らさないままに暗い虚空に飲み込まれて、自身の発言自体を自ら空虚なものとした。

 正真正銘の言うだけ番長を演じたのである。

 橋下徹大阪市長が代表を務める地域政党大阪維新の会が次期衆院選の公約にあたる維新版「船中八策」に米軍普天間飛行場の県外移設を盛り込む方針を固めたと、《橋下市長の維新の会「普天間県外移設」を公約に》YOMIURI ONLINE/2012年2月23日14時38分)が伝えている。

 維新の会2月14日公表の総選挙用公約に当たる「維新版・船中八策」たたき台の「外交・防衛」分野の政策のうち普天間移設問題は、普天間飛行場代替施設を辺野古岬とその隣接地域に移設するとした「2006年在日米軍再編ロードマップの履行」及び「同時に日本全体で沖縄負担の軽減を図る更なるロードマップの作成着手」となっている。

 いわば現在の民主党の日米合意に基づく普天間の辺野古移設と沖縄の負担軽減と同じスタンスを取る。

 だが、これを改めて、「米軍再編のロードマップの履行」を削除、「普天間は県外で分散移設」との文言を加える方向で検討していると記事は書いている。

 2月23日の大阪市役所での報道陣向け発言。

 橋下市長「維新の会が基地問題に見解を出すのなら、礼儀として沖縄県にあいさつにいかないといけない」

 2月26日までの纏める予定の「船中八策」の骨子は意見集約に時間がかかることから3月上旬にずれ込む見通しを述べた上で、骨子がまとまって時点で橋下市長と幹事長の松井一郎大阪府知事が沖縄県を訪問し、県側に伝える方針だという。

 記事は2月14日公表からほぼ10日して普天間県内移設から県外移設へと政策転換した理由は書いてないが、橋下氏は2年3カ月前の大阪府知事時代に普天間県外移設に関しては一度「言うだけ番長」を決め込む前科を犯している。

 2009年11月30日朝、記者団に普天間飛行場の移設先として関西国際空港への受入れを検討することを表明、次のように発言している。《在日米軍再編:普天間移設 移設先「関空も検討」 橋下・大阪府知事「個人的見解」》毎日jp/2009年11月30日)

 橋下大阪府知事「あくまで個人的な意見だが、政府から正式に話があれば、基本的に(議論を)受け入れる方向で検討していきたい」

 記事。〈政府からの要請は「正式にはない」としながらも、嘉手納基地の騒音軽減対策としての訓練の一部受け入れも視野に、関空の軍民共用化や神戸空港の活用も検討事項に挙げた。〉・・・・・

 基地問題にしても原子力発電所設置・稼働・再稼働等の問題にしても首長たる知事が都道府県民の意向をリード、その全体的意向に基づいて最終判断する義務と責任を負う。当然、「個人的意見」で済ますことは許されないはずであるし、政府から正式に話がなくても、適地かどうか判断した上で自分から提案してもいいはずだ。

 当然、「大阪府知事として受入れることを検討したい。受入れに向けて府民を説得したい」と言うべきだったろう。

 当時鳩山首相は普天間の「国外最低でも県外」を模索して四苦八苦と迷走を繰返していた。対して橋下府知事は関空受入れは政府からの要請が前提だとする姿勢を崩さなかった。

 いわば言葉を発するものの、自分から手を上げることはしなかった。しかも自らの権限が及ばない神戸空港に話を通してあるわけでもないのに負担を負わせる仲間に勝手に引きずり込もうとしたのは大阪府のみの問題とする覚悟がなかったからではなかったか。

 最初から腰の引けた「言うだけ番長」だったのかもしれない。

 なぜ鳩山首相は関空を移設検討対象としなかったのだろうか。

 橋本府知事は6日後の12月6日、ジャパンラグビートップリーグの公式戦が開かれている近鉄花園ラグビー場(東大阪市)を訪れて、観客に向かって普天間基地問題について呼びかけている。

 《橋下知事、普天間問題について「ワン・フォー・オール オール・フォー・ワン」》MSN産経/2009.12.6 20:01)

 ラグビー場訪問の初期的目的は府内の小学校の運動場を芝生化するために必要な募金を呼びかけるためだったという。

 橋下府知事「ラグビー精神で一番好きなのが、『One For All All For One』。1人はみんなのために、みんなは1人のためにとの思いで、やっていたが、『沖縄は日本のために 日本は沖縄のために』。沖縄が孤立している。全国で沖縄の基地問題を考えましょう」

 基地問題に関しては今日まで沖縄の持ち出しとなっている。「沖縄は日本のために 日本は沖縄のために」ではなく、「日本は沖縄のためにが日本のため」とすることで初めてまともなバランスに向かう取っ掛かりとなるはずだ。

 この6日後の「全国で沖縄の基地問題を考えましょう」の発言は6日以前の発言からの後退を示す。関空という地元である特定空間への受入れから「全国」という全体空間へと拡散させているからだ。

 この後退は翌7日に明らかになる。米軍普天間飛行場の一部機能の関西空港への移転可能性について報道陣に次のように発言している。《普天間移設「国の権限。僕が動くことではない」…橋下知事》YOMIURI ONLINE/2009年12月7日)

 橋下府知事「(防衛政策は)国の権限。僕が動くことではない」 

 その上で、府として具体的な検討や国への提案を行う考えがないことを明らかにしたという。

 いわば自分自身は動かないことを宣言した。

 防衛政策は国の権限であっても、仲井真沖縄県知事は普天間の県外移設に向けて自分から動いている。県知事が動く問題ではないとしたなら、防衛問題に関して県知事は国の言うがまま、国に言われるがままの支配下に置かれた存在と化す。

 橋下府知事「国から提案があれば、積極的に議論に参加したい」

 発言の経緯からすると、関空受入れに向けた具体的な議論ではなく、議論のみの積極的参加ということなのだろう。

 鳩山首相は日米合意の期限とした翌年5月末が近づくと基地そのものの県外移設を断念、せめて訓練を沖縄から県外に移すべく、5月27日(2010年)を開催日とした「沖縄の負担を分かち合う」ための全国知事会議を要請した。だが、4割近い18知事が欠席。既に鳩山首相は重さを失っていた。

 《天間移設:首相に知事冷ややか 負担分散理解は大阪のみ》毎日jp/2010年5月27日 21時58分)

 森田健作千葉県知事「なぜ、今、この時に全国の知事を招集したのか」

 鳩山首相は日米合意5月末4日前の全国知事会議開催である。4日間で何が決まるというわけなのだろう。

 鳩山首相「『将来的に訓練なら引き受けるぞ』との気持ちを示していただくことで(沖縄県名護市)辺野古(付近への普天間移設)を少しでも実施することに役立つのではないか、と思った。

 皆様方のふるさとで『ここなら可能だぞ』という話をいただければ誠にありがたい。

 (訓練県外移転を)すぐに理解いただけると思わないが、これから具体的に提案したい」

 仲井真知事「(沖縄県民は)国民として負うべき応分の負担をはるかに超えている」
 
 三村申吾青森県知事「現状を超える基地機能強化は容認できない」

 橋下大阪府知事「基地を負担してないので真っ先に汗をかかないといけない。できる限りのことはしたい」

 記事は発言した11知事の中で首相に理解を示したのは橋下知事のみだとしているが、橋下知事が言っている「できる限り」は関空を除いた「できる限り」であって、既に「言うだけ番長」と化していたのである。

 「維新版・船中八策」たたき台の今回の「米軍再編のロードマップの履行」削除、「普天間は県外で分散移設」への方針転換は「基地を負担してないので真っ先に汗をかかないといけない」という思いに再び駆られたのかもしれない。

 だが、たたき台には「関空」という文字が入っていない。たたき台の「日本全体で沖縄負担の軽減を図る更なるロードマップの作成着手」の「日本全体で」の文言と考え併せると、大阪府を除いた「日本全体で」汗をかくということなのかもしれない。

 そもそもからして普天間基地の県外移設を自ら引き受ける自治体首長は皆無だった。一地方自治体の首長が自らが統括する地域に引き受けるならともかく、他の自治体の首長に米軍基地の負担をお願いして、誰が快く引き受けるだろうか。 

 普天間問題のこの構造は県外を考える場合、自らの自治体に引き受ける首長が出てこない限り県外は実現しないことを示している。

 この構造を理解ぜずに「普天間は県外で分散移設」を公約とすることも、「日本全体で沖縄負担の軽減を図る更なるロードマップの作成着手」を公約とすることも、「言うだけ番長」を最初から宿命としていることになる。

 橋下大阪市長が「言うだけ番長」で終わらないためには関空を軍民共用として普天間の移設を引き受けるか、大阪府内に関空同様の海洋埋め立てによる新基地建設を行うかいずれかの方法しかないだろうか。

 参考までに、参考までに、2009年12月6日当ブログ記事――《橋下府知事の「公務員から厳重抗議なんて言われたくはない」の独裁性 - 『ニッポン情報解読』by手代木恕之》


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