安倍晋三の「世界女性サミット」挨拶は経済政策限定の「女性が輝く社会」、真の女性解放宣言とはなっていない

2017-05-13 12:30:54 | 政治

 安倍晋三が2017年5月11日に都内開催の「グローバル・サミット・オブ・ウィメン2017」(世界女性サミット)開会式に出席、スピーチ首相官邸/2017年5月11日)している      

 先ず安倍晋三は「グローバル・ウィメンズ・リーダーシップ・アワード2017」なる名の賞を貰っている。開催国の首相ということで、首相であれば貰えるという名誉賞的なものだろうが、安倍晋三に限っては違うようだ。
 
 それは非の打ち所が一点もない見事なスピーチに現れている。スピーチを聞くか、読みさえすれば、安倍晋三こそが「グローバル・ウィメンズ・リーダーシップ・アワード2017」なる賞に相応しい人物だと思うに違いない。その栄光はハリウッドのアカデミー賞主演賞を受けた俳優に与えられる栄光以上のものがあるに違いない。

 見事なスピーチは安倍晋三の着々と成果を上げている女性政策に裏打ちされている。成果を裏打ちしないスピーチはいくら美しい言葉を並べ立てようと、空疎な響きしか与えることができない。

 では、安倍晋三の女性政策に裏打ちされたスピーチの素晴らしい個所を羅列してみる。

 「アベノミクスは、ウィメノミクス。安倍政権が目指す全ての女性が輝く社会は、あらゆる人が様々な制約を乗り越えて自分らしく活躍できる社会です」

 要するに男女区別なく「あらゆる人が様々な制約を乗り越えて自分らしく活躍できる社会」実現の要件は「全ての女性が輝く社会」だと意義づけている。

 「安倍政権の4年で女性の就業者数は150万人増えました。第一子が生まれた後も働き続ける女性の割合が、初めて5割を超えました。上場企業の女性役員も倍増しました。先ほど申し上げましたように上場企業は少なくとも1人の女性を役員にするように、企業の皆さんにお願いをしております。この女性の役員は、必ずしも日本人でなくても結構でございます。どうかここにいる皆さん、私がと思う方は立候補していただきたいと、このように思います」  

 「4年で女性の就業者数は150万人の増加」。その殆どが非正規雇用だなどと、その実態を暴き立てることはしないが、「上場企業の女性役員倍増」は「上場企業は少なくとも1人の女性を役員にするように、企業の皆さんにお願いをしております」と言っているように“官製役員”、いわば企業自身の自律性に則った女性の役員登用ではなく、政府要請という他律性に頼った登用である点を留意しなければならない。

 なぜなら企業の自律性(他からの支配や助力を受けずに自分の行動を自分の立てた規律に従って正しく規制する性質のこと)は構成員個々の自律性の上に成り立つからだ。

 と言うことは、企業の個々の従業員が自律性を獲得していないことになる。このことは日本の労働生産性が主要7か国中の最下位ということと無関係ではない。他からの支配や助力を受けずに自分の行動を自分の立てた規律に従って正しく規制する自律性なくして個々の生産性を上げることはできないゆえに、全体の生産性も上がらない。

 男女関係なく自律性なき集団内の他律性に頼った女性登用であり、相互に自律性という力学が働いていなければ、生き生きとした真の労働を望むことはできない、それゆえの生産性の低さでもあるはずだ。

 自律性の対義語である他律性は自分の意志によるのではなく、他からの命令や束縛によって行動する性質のことを言う。これは地位が上の者や力ある者に下が従う権威主義性とほぼ同義と成す。

 だから、企業が政府の要請に従う構造が生まれるのだが、この権威主義性は日本人の場合は否応もなしに男女間にも働いていて、男を上に見、女を下に見る、それぞれの地位と力に格差を置く男性上位・女性下位の構造を取っている。戦前程ではなくなったものの男尊女卑の名残として残っている男女格差である。   

 つまり「上場企業の女性役員倍増」も、「上場企業女性役員最低限1人」も、日本社会全体がこのような権威主義性を磁場としている以上、数字のみを誇ってはいられない実態を見なければならないが、安倍晋三は後で、「いくら女性が頑張っても男性の意識が変わらなければ、女性の活躍にも限界があります」とは言っているものの、実際には日本人が抱えている権威主義性にまでは気づいていないようだ。

 もし気づいていたなら、権威主義性を忌避し、自律性を重んじる立場から、政府が企業に賃上げを要請する官製賃上げにいつまでも頼ることはせずに、こういったことは情けないことだとして、企業の主体性を求めたはずだ。

 勿論賃上げだけではなく、女性の役員登用も同じ構造を取らなければならない。

 日本が「世界で最も成功した社会主義国」と言われるのは国家を中央集権的に民間の上に置き、民間を国家の下に置く権威主義性が有効に機能したからだろう。

 安倍晋三はこの後で「女性の活躍が進むことで社会がより良くなる」と言っているが、権威主義性を取っ払わないことには、女性自身が自律的に求めていく社会進出ではなく、政策という名の強制に頼った女性の社会進出がいつまでも続くことになる。

 だが、こういったことはお構いなしに安倍晋三は話を進めていく。

 「私は、保守的な政党の中にあっても、その中でも保守派に分類をされております。その私が本気になって女性活躍の推進を始めました。これはもう日本の女性活躍の流れは後戻りしていかないことの証明ではないかと思っています。このように、安心していただいていいんだろうと思います。もしかすると今回の受賞は、そのことが、保守的な政党の中で保守派の私が取り組んだことに対する賞をいただいたのではないかなと思っております」

 そして、「待機児童ゼロを目指す」とか、「2013年には保育の受皿の整備を加速するため、2017年度末までの整備目標を40万人分とする」、「子育て世代の女性の就業率は加速的に増え、昨年には約72%に達した」、男性産休を「国家公務員の男性は、全員5日以上取得するよう強力に推進する」等々、数字を上げて自らの政策をアピールしている。

 安倍晋三はスピーチの最初の方で、「グローバル・サミット・オブ・ウィメン」の創設者であり、代表でありアイリーン・ナティビダッド女史を紹介しているが、ネットで調べてみると、彼女は現在68歳、フィリピン出身で米国籍を獲得、フィリピン系アメリカ人であり、ロングアイランド大学を経て、コロンビア大学大学院を卒業、1990年に「グローバル・サミット・オブ・ウィメン」を創設、専門はフェミニズム運動家となっている。

 日本では男女間の権威主義性のみならず、非白人系との間にも民族的な権威主義性を血としているから、もし彼女が日本の国籍を獲得、日本の大学や大学院に学んでフェミニズム運動をスタートさせたとしても、世界規模の運動に発展させる環境を与えてくれなかったかもしれない。

 このことは大学の研究の場に於ける徒弟制度に嫌気が差して、自由な研究の場を求めてアメリカ等の大学に留学、あるいは教授や助教授の職を得る日本の研究者が跡を絶たないことが一つの証明となる。

 勿論、大学でも男女格差が存在していることは2017年5月11日付の「asahi.com」記事が日本の大学の女性研究者はほかの条件が同じでも男性より教授に昇進できる確率が2~5割低いと文部科学省の科学技術・学術政策研究所の調査を伝えていることからも分かる。

 「フェニズム」とは「Wikipedia」に、「性差別を廃止し、抑圧されていた女性の権利を拡張しようとする思想・運動、性差別に反対し、女性解放を主張する思想・運動などの総称」と解説されている。

 性差別廃止も女性の権利拡張も、いわば女性解放はそれを実現させるためには男女の意識の中から男性上位・女性下位の権威主義性の払拭からスタートしなければならない。そして安倍晋三が言っている男女区別なく「あらゆる人が様々な制約を乗り越えて自分らしく活躍できる社会」は「全ての女性が輝く社会」の実現によって到達でき、そのような社会を「安倍政権が目指す」としている以上、安倍晋三は日本人の権威主義性の払拭を出発点とした、いわば男性上位・女性下位の男女格差を取り払った性差別廃止や女性の権利拡張等の女性解放の文脈で女性の社会進出を推し進めて「全ての女性が輝く社会」を実現させ、そのことが男女区別なく「あらゆる人が様々な制約を乗り越えて自分らしく活躍できる社会」になるというプロセスを取らなければならない。

 果たして安倍晋三はそのような社会実現に向けて言行一致させているのだろうか。

 安倍晋三は2015年2月18日の参院本会議で同性婚と事実婚について答弁している。文飾は当方。

 安倍晋三「同性カップルの保護と憲法24条との関係についてのお尋ねがありました。

 憲法24条は、婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立すると定めており、現行憲法の下では、同性カップルに婚姻の成立を認めることは想定されておりません。同性婚を認めるために憲法改正を検討すべきか否かは、我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えております。

 事実婚に対する法的保護についてお尋ねがありました。

 我が国においては、法律婚を尊重する意識が国民の間に幅広く浸透しております。事実婚にどのような法的保護を与えるべきかは、このような国民意識を踏まえつつ、それぞれの法律の趣旨や目的等に照らして検討すべきであり、これを一概に論ずるのは相当でないと考えております」

 同性婚に関しては、「我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題であり、極めて慎重な検討を要するものと考えております」という文言で伝統的な家族制度を優先させる考え方を示して同性婚を排除し、事実婚に関しては、「法律婚を尊重する意識が国民の間に幅広く浸透しております」という文言でやはり伝統的な家族制度優先の考え方を示して、事実婚の制度化を排除している。

 憲法への自衛隊明記の改正には熱心でも、女性解放の観点から憲法に同性婚をはっきりと明記する改正にも、事実婚をはっきりと明記する改正にも一切意欲を見せていない。

 安倍晋三はまた2010月の月刊誌「WiLL」(ワック)での対談で「夫婦別姓は家族の解体を意味する。家族の解体が最終目標であって、家族から解放されなければ人間として自由になれないという左翼的かつ共産主義のドグマだ」と述べたとネットで紹介されていて、やはり日本の伝統的な家族制度を優先させる男女意識を露骨にしている。

 要するに安倍晋三の5月11日の「グローバル・サミット・オブ・ウィメン2017」の開会式スピーチは日本人の権威主義性の払拭と連動させた形で男女格差を取り払った性差別廃止や女性の権利拡張等の女性解放の文脈で女性の社会進出を語っているわけではない。

 この答は最初から分かっていたことだが、「アベノミクスは、ウィメノミクス」と言っているところにある。「アベノミクス」はつまるところ、経済回復政策である。当然、「アベノミクスは、ウィメノミクス」と等式の関係に置いている以上、「ウィメノミクス」も経済政策に過ぎない。確認のためにネットで調べたら、「女性の社会進出が経済を成長させるという考え」だと「Weblio辞書」に出ていた。

 つまり安倍晋三はスピーチを「ウィメノミクス」の文脈で行っていた。経済回復の線上で述べた「女性が輝く社会」であり、「4年で女性の就業者数は150万人増えました」、あるいは「保育の受皿の整備」その他その他に過ぎないということである。

 経済の回復に役立てるための経済政策の観点からの女性の社会進出「女性が輝く社会」だから、そのような社会から同性婚や事実婚、夫婦別姓を望む男女を排除していても、女性が社会に輝くことによって男女区別なく「あらゆる人が様々な制約を乗り越えて自分らしく活躍できる社会」が実現できるとする壮大な絵を描いたとしても、何に一つ矛盾を感じないで済む。

 一見、非の打ち所が一点もない見事なスピーチに見えても、その程度の発言で、真の女性解放の宣言となっていない以上、「いくら女性が頑張っても男性の意識が変わらなければ、女性の活躍にも限界があります」と言っていることにしても、安倍晋三の姿勢が影響することになる政策も初めから限界を抱えていることになる。

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