ロ下院議長は安倍晋三との会談でもオバマ広島謝罪なしを非難したのだろうか、した場合どう応じたのだろうか

2016-07-01 08:34:11 | Weblog

 半月も前の記事の話になるが、6月16日、プーチンの側近ナルイシキン下院議長が日本を訪問、その夜安倍晋三と会談した。マスコミは会談内容をナルイシキンと安倍晋三が9月に極東ウラジオストクで開催が予定されている日ロ首脳会談や首相が打診した地元山口県への大統領訪問に向けて調整したのではないかと憶測している。

 安倍晋三の対ロシア関係進展の一つ一つがウクライナに対するロシアの力による現状変更を容認し、米EUの対ロ制裁破りとなっている。

 こういった裏切り行為が北方四島が返還されるなら国内向けには許されもするが、返還されることはないだろう。

 プーチンは学んでいるはずだ。広大な領土と強大な国家権力を持った旧ソ連を偉大な存在と崇めて、そこへの回帰を目指す大ロシア主義に取り憑かれたプーチンがその領土的野心を満たし、ロシアの大国化を目指せばアメリカと衝突するということを。

 衝突した場合の太平洋側の軍事的備えとして、北方四島は必要不可欠な存在となっている。そのための軍事基地化の進めであり、1ヘクタールの土地を無償で提供し、5年間、農地等として使えば、正式に所有を認めるとする2016年5月2日成立の北方領土を含めた極東の土地贈与法を用いた北方領土への入植のススメであろう。

 ナルイシキンは翌6月17日、東京都内で記者会見を行った。既に記事が削除されている「NHK NEWS WEB」記事から発言等を拾ってみる。

 6月16日の安倍晋三との会談で、終戦直後にソビエト軍が広島と長崎の被爆地の状況を撮影した映像を手渡したことを明らかにしたうえで、広島を訪れたアメリカのオバマ大統領が原爆投下を謝罪しなかったことを非難したという。

 安倍晋三との会談でも、オバマの謝罪なしを非難したのだろうか。した場合、安倍晋三はどう応じたのだろうか。

 ナルイシキン「原爆投下によって数十万人が犠牲になったことは誠に遺憾だ、被爆者に謝罪しなかったことに驚いている。アメリカの軍人と政治家は犯罪の責任がある」

 この言葉はそっくりナルイシキンに返さなければならない。日本と旧ソ連との間で締結し、1941年4月から1946年3月まで5年間有効とした日ソ中立条約を一方的に破棄、1945年8月9日未明に満州に侵攻、対日参戦を敢行した。

 この戦闘による双方の死者は1万人を超えていないが、「Wikipedia」には次のような記述がある。

 〈満州からの引き揚げ者の犠牲者は日ソ戦での死亡者(筆者注:民間邦人のこと)を含めて約24万5000人にのぼり、このうち8万人近くを満蒙開拓団員が占める。満州での民間人犠牲者の数は、東京大空襲や広島への原爆投下、さらには沖縄戦を凌ぐ。〉

 犠牲者は引揚者ばかりではない。日本軍捕虜50万人のソ連内の捕虜収容所へ移送・強制労働が行われ、多くの犠牲者を出した。

 この犠牲者数についての「Wikipedia」の記述を見てみる。
 
 〈日本側の調査による死者名簿には約5万3千人が登載されている。ソ連側(現ロシア政府)はこれまでに約4万1千人分の死者名簿を作成し、日本側に引き渡している。従来死者は約6万人とされてきたが、実数については諸説ある。

 近年、ソ連崩壊後の資料公開によって実態が明らかになりつつあり、終戦時、ソ連の占領した満州・北鮮・樺太・千島には軍民あわせ約272万6千人の日本人がいたが、このうち約107万人が終戦後シベリアやソ連各地に送られ強制労働させられたと見られている。アメリカの研究者ウイリアム・ニンモ著『検証-シベリア抑留』によれば、確認済みの死者は25万4千人、行方不明・推定死亡者は9万3千名で、事実上、約34万人の日本人が死亡したという。〉――

 日本軍が満州や朝鮮在留の邦人保護を放棄したことも日本国家の犯罪だが、ソ連が中立条約を破棄して満州を侵攻したことを間接原因とした引揚げ中の民間邦人犠牲約24万5000人、シベリア抑留者軍民合わせて約34万人の犠牲は明らかにソ連による国家犯罪である。

 ロシアのエリツィン大統領が1993年10月に訪日した際、「非人間的な行為に対して謝罪の意を表する」と表明したということだが、歴代国家権力者は謝罪の意思を引き継いでいなければならない。

 当然、ナルイシキンはオバマの広島での謝罪表明がなかったことを批判するなら、旧ソ連の日ソ中立条約の一方的破棄、満州や朝鮮からの邦人引揚者の犠牲、シベリア抑留の日本軍民犠牲を旧ソ連の国家犯罪と認め、「ロシアの軍人と政治家は犯罪の責任がある」と、その責任を国家権力の立場にある者として引き継ぐ意思を示して謝罪することが前提となる。

 ナルイシキンは安倍晋三との会談で、旧ソ連の日本に対する国家犯罪を謝罪したのだろうか。謝罪せずにオバマを批判したのだろか。 

 もし謝罪せずにオバマだけを非難したなら、安倍晋三はどう応じたのだろうか。

 それともオバマ非難は17日の記者会見の中だけのことだったのだろうか。

 日米分断の意思がないわけではないから、安倍晋三に直接オバマ非難を伝えなければ意味はない。

 その非難に対して安倍晋三は大戦時の旧ソ連の日本に対する国家犯罪を引き合いに出して、「あなた方も謝罪を引継いで貰いたい」とでも穏やかに諭したのだろうか。

 諭したとしたら、安倍晋三も国家権力を引き継ぐ立場の人間として日本の戦前国家が侵略戦争を引き起こし、日本国民ばかりか、多くの外国の国民を犠牲にした日本の国家犯罪を謝罪する意思を受け継がなければならないことになる。

 だが、安倍晋三は侵略戦争と認めていないのだから、謝罪する意思を受け継ぐべくもない。

 かつての満州の日本軍は邦人保護を放棄して、多くの犠牲者を出した。現在の自衛隊にしても、窮地に陥ったなら、邦人保護を放棄しない保証はない。邦人保護のために自衛隊が更に窮地に陥る事態を覚悟して保護できるか、自分たちだけが窮地を脱することを選択するのか、どうも戦前同様に後者に見えてくる。

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