安倍晋三はテロ集団に拘束された場合の邦人解放は米英型、あるいは仏独型で臨むのか国民に明らかにせよ

2015-02-05 11:23:31 | 政治



      『生活の党と山本太郎となかまたち』PR

       《2月3日 「生活」番組出演排除は国民の「知る権利」を侵害、NHKに抗議全文》    

 米英は自国民がテロ集団に拘束されて身代金を要求された場合、自国民の犠牲を代償としても身代金の支払いを拒否する姿勢を公表していて、仏独、その他の欧州の国は政府自身は否定していても、身代金を支払って解放の道を選択していると言われている。

 2015年2月4日の衆院予算委は経済・外交をテーマとした集中審議が行われた。細野豪志民主党議員が、2月2日参院予算委の民主党の大塚耕平同様に、「イスラム国」による2邦人拘束中の安倍晋三のエジプトでの「中東政策スピーチ」が、その拘束への影響を前以て考慮して作り上げた内容だったのかを追及した。

 安倍晋三は影響を考えてスピーチの言葉を推敲したと口では言ってはいるが、テロ集団に屈しないとする意思表明と日本の国際貢献に重点を置いた抽象的な答弁に終始して、どう考慮して、どう推敲した結果、「ISILと戦う周辺各国に、総額で2億ドル程度、支援をお約束します」といった文言となったかの具体的な説明は一切ない。

 果たして安倍晋三は2邦人の命をどう考えていたのだろうか。どう考えたかによって、邦人がテロ集団に拘束された場合の解放に向けた姿勢が決まってくる。

 ここに一つの参考となる「NHK NEWS WEB」記事がある。  

 去年8月、アメリカのNBCテレビが当時26歳のアメリカ人女性が人道支援活動中の一昨年8月に「イスラム国」に拘束されたことと、女性の解放として660万ドル(約7億7500万円)の身代金の要求とアフガニスタンでアメリカ兵を銃殺しようとした容疑で2010年にニューヨークの連邦地方裁判所で殺人未遂罪で有罪判決を受けたパキスタン人の女、アーフィア・シディキ受刑者の釈放を要求していることを伝えていて、記事解説はそれを念頭に置いた発言との推測で、アーネスト・ホワイトハウス報道官の2月3日の、オバマ大統領が拘束されているすべての人質の解放に向けて全力で取り組むよう指示したことを明らかにしたとする発言を紹介している。

 しかしアメリカはテロ集団からの身代金要求の支払いには拒否の姿勢を示している。支払わずに何人かの犠牲者を出している。今回の2邦人人質と身代金要求に対しても、1月22日の定例会見で米国務省のサキ報道官が次のように発言して、身代金の支払いに反対している。

 サキ報道官「身代金の支払いは人々を危機に陥れる。米国は実施も支持もしない。(その方針は)長年のものだ。

 支払った場合、他の人々も身代金目的の誘拐の危険にさらされ、テロ組織に資金を与えることになる」(毎日jp

 同じ内容を扱った「asahi.com」記事。

 サキ報道官「身代金の支払いはかえって人々を危険にさらすというのが米国の考えだ。我々の立場は非公式に日本政府に伝えてある」

 1月27日定例会見。

 カービー米国務省報道官「日本がどのような決断を出すとしても、日本が決めることだ。米国防総省が判断することはない」(毎日jp

 要するにアメリカは身代金支払いによる解放には反対だが、軍事作戦、その他の方法による人質解放には全力を挙げるということことなのだろう。上記「NHK NEWS WEB」記事はアーネスト・ホワイトハウス報道官が、オバマ大統領が人質解放に身代金の支払いもあり得ると方針転換したと明かしたとは一言も伝えていない。

 安倍晋三もこれに倣った。この証拠となる記事がある。

 《世耕官房副長官「後藤さん守れなかったのは政府責任」 渡航見合わせ3回要請…身代金交渉「やってない」》産経ニュース/2015.2.2 23:43)    

 2月2日夜のBSフジの番組。

 世耕官房副長官「(解放に向けたイスラム国側との接触に関して)身代金の交渉は水面下も含めて一切やっていない。

 (直接の接触はせず、関係国などを介した間接的なルートで働きかけて)今回の支援が人道支援だということを伝えたり、人質解放を要求し続けた。ISIL(イスラム国)は期限は守るといわれていた。何回か出てきた期限が延びたということは、我々の働きかけやヨルダンによる交渉も(イスラム国と)何らかの接点はあったのではないか」

 最後の言葉はいい気なものである。最後には何の予告もなく殺害されたのである。相手側が交渉で何らかの接点を見い出していたなら、最後通告ぐらいはあったはずだ。

 相手が身代金を要求しているのに対して安倍晋三のエジプトでのスピーチが「イスラム国」に対する宣戦布告となっていたことを棚に上げて、身代金の交渉は一切持ち出さず、日本の支援は人道的なものだから、解放して貰いたいというのは「イスラム国」にしたら直接的利益は一切ないのだから、虫のいい話となる。

 世耕の話の構図自体が身代金支払い拒否・他の方法による人質解放となっている。今回の2法人の場合は何の見返りもなく、単にお願いしたに過ぎない。

 日本はアメリカのように人質解放のための軍事的手段を持っているわけではないし、人質交換を解放の条件とする機会を有しているわけでもない。勢い、表面を取り繕うだけの交渉にならざるを得ない。結果的に解放に一生懸命努力していますという姿勢を国民に見せるアリバイ作り、あるいはポーズにしかならない。

 情報収集だ、各国との連携だと動き回っていた安倍政権の動きからは最初からそういった雰囲気しかなかった。

 だからだろう、細野豪志との遣り取りでもそうだが、これまでの政府側答弁は安倍晋三の強がりだけは目立つが、明確に検証しようとする熱意とは正反対の曖昧にしよとする意思、あるいは誤魔化そうとする意思しか見えてこなかった。

 一連の答弁が身代金支払いによる解放拒否を反映させた構図を取っていると見ると、よく理解できる。

 改めてこの構図を細野との遣り取りから見てみる。

  細野豪志「犯行グループがISIL(アイシル)であろうということは推定していたのか」

 岸田「ISILである可能性は否定できないが、確たる情報は得ていなかった」

 細野豪志「シリアの北部で拘束されたということだから、これはISILの支配地域だから、そういう推定が働いたのだろう。

 (後藤さん拘束後)身代金の要求がったのは事実なのか」

 岸田「奥さんとは緊密に連絡を取ってきた。できる限り(奥さんの)気持に添って対応してきた。そういう遣り取りは1月20日映像が公開されtて広く事実が公になるまでは後藤さんの安全の問題もあるので、非公開とした。その間の具体的な遣り取りについては(公表を)控えさせて貰いたい」
 
 細野豪志「この事案の検証を考えるとき、事前に身代金を要求されていたかどうかは重要なポイントだから、政府には説明責任がある」

 岸田「メールで犯人側から何らかの要求があったかは後藤さんの奥様に対する様々なメッセージがあったわけだから、政府としては明らかにするのは控えさせて頂きたい」

 「様々なメッセージ」が後藤さんと奥さんのプライバシーに触れる内容を含んでいたとしても、夫を過激派集団に拘束されたこと自体はプライバシーとすることはできないし、だから、政府にそのことを伝えたのだろうし、身代金を要求されていることを政府に伝えている以上、そのこと自体もプライバシーから離れていることになるはずだ。

 例えばある人妻が不倫をしていて、夫にバラされたくなかったら、いくらいくら支払えという恐喝は極めて高度なプライバシーであって、恐喝されていることは余程のことがない限り秘密にしておかなければならないが、こういった事例とは明らかに異なる。

 大体が身代金要求はあった・なかったの答で済むはずのことをどこがプライバシーだと言うのだろうか。だが、それさえ拒否する。

 推測するに一旦身代金の要求を認めると、その要求に対してどのような対応をしたのかの質問が次に待ち構えることになって、身代金の要求には何も対応しなかったことが明らかになった場合の不都合からの答弁拒否なのだろう。

 勿論、犯行グループがどこか分からなかったから、交渉しようがないと一旦は逃げることができるが、1月20日に犯行主体が「イスラム国」と分かってから、どのような身代金交渉をしたのかと追及される恐れが出てくる。

 百歩譲って身代金交渉はしなかったと明らかにすることができたとしても、では、それ以外の解放のためのどのような交渉をしたのかと追及された場合、それが形式的な取り繕いであったなら、いわば解放に一生懸命努力していますという姿勢を国民に見せるアリバイ作り、あるいはポーズであったなら、具体的なことは何も言えないし、下手をすると自分で自分を追い詰めることになる。から、下手に答えることができない。

 細野は2人がテロ集団に拘束され、命が危機に晒されている状況下ではエジプトでのスピーチでテロ集団について触れる場合は言葉を選ぶ必要があり、どのくらいの認識を持ってスピーチを考えたのか追及した。

 安倍晋三の答弁が如何に無責任なものか、少し詳しく文字にしてみる。

 安倍晋三「まさにISIL、残虐の行為、恐怖の支配を拡大しようとしている、この過激主義の流れを止めなければならない。日本もその責任から逃れるわけにはいかない。同時に日本はこの2人が拘束されていた、ISILかどうかは定かではなかったが、それも排除されないという分析はしていた。

 同時に世界中で多くの邦人が仕事をしている。海外旅行に出かける人もいる。そうした人たちの安全を確保しなければならない。常にそういうことを勘案しながら、我々は判断している。

 事の本質は何かと言えば、最初に言ったように今世界各国がテロの恐怖に屈せずに、このテロの恐怖を排除して、その努力をそれぞれが積み重ねている。特に多くの難民を受け入れている国々を孤立化させ、困窮化させるということはISILの思う壺になってしまう。

 そこで日本のできる支援をする、日本は連帯を表明する。その場所で連帯を表明することは、極めて大切だと考えた。2人がこのような結果になったのは大変残念だ。日本人の生命、すべからく国の最高責任者である私に責任はある。その責任を受けることは当然のことだと思う。

 同時に国際社会の中に於いて日本もその責任を果たしていかなければならない。その責任を果たしていかなければ、結果として海外で仕事をしている人々、海外へ出かける日本人の生命が危うくなる可能性もあると考えている」

 細野「私の質問に答えていない。2人の命が危機に曝されているリスクについて外務省の説明がされている中で言葉を選ぶ必要があったのではないか。メールで身代金要求があったと思うが、このことを把握していたのか」

 安倍晋三「外務省とは情報を共有している。特に中東地域への訪問については外務省と官邸と一体となって訪問先を決め、そこで行うスピーチも推敲の段階から一緒に作業を行う。

 そこでどういう発言をするか。これも我々は言葉を推敲している。そこでISILの気持を忖度することは、彼らの意向に添うスピーチをするつもりは、(ヤジ)少し静かにしてくださいよ。(ほんのしばらく待ってから)よろしいですか。答弁拒否ではなく、妨害はやめてもらいたい。(ざわめき、また待つ)

 よろしいでしょうか。そこでスピーチの盛り込む言葉を様々な観点から選んでいる。その中で私たちが選んだ言葉が不適切であったとは考えていないということを申し上げておきたい。

 大切なことはこの過激主義、ISILを中心とする過激主義と多くお国々が戦っているのだから、彼らに対して明確にその支援をしていく。そして日本は人道支援をしていく。そのメッセージを発していくのは、当然日本の役割だと考えている」

 細野「テロリストの思いを忖度するなど論外。そんなことは一言も言っていない。目の前に拘束されている2人がいて、その生命がどうなるかというのは、国民の命を守る政治の役割だから、それを考えた上でスピーチをするのは当然」

 安倍晋三「今、細野委員は私が2人の命、海外で活躍している日本人の命を考えていないか如くの発言をしたが、全く間違いだ。先程の答弁の中で明確に申し上げた。

 (ヤジ、委員長に)すみません。もう少しヤジを抑えて頂きませんか。静かにしてくださいよ。

 先程申し上げたように2人の命について考えるのは当然のことであり、更に海外で仕事をしている多くの人たちの命を考えるのは当然のことであり、そして結果に対してもその責任を負っている。このように申し仕上げた。

 そこに全く思いを致していないかの如くの批判は当たらないと申し上げておきたい」(以上)

 安倍晋三は自分が質問に添った答弁をしなかったり、勘違いの発言をしてヤジを受けると、ヤジを批判することでヤジ自体を悪者とし、自身の答弁をさも正しく見せる狡猾さを巧まずして備えている。

 安倍晋三は国家の最高責任者としてテロ集団に拘束された2人の命を考えることと海外で仕事をしている多くの日本人たちの命を考えることを同列に置いている。

 前者は切羽詰まった危機的状況に立たされていて、解放という具体的な行動を一刻も早く必要としている命であり、後者は自国民であるという立場上、一般論として安全を確保しなければならない命であって、一刻も早い解放を必要とする危機的状況に立たされているわけではない。いわば前者に対する国家の危機管理と後者に対する国家の危機管理は切迫感の点に於いてもそれぞれが置かれた状況、あるいは境遇に於いても明らかに異なる。

 それを同列に扱う。当然、実際には2人への影響を考えてスピーチを推敲したは真っ赤なウソとなる。逆であるなら、決して同列に置くこともないし、答弁に海外で働いていたり海外に旅行する邦人を持ち出すことはない。事の問題自体が違う。

 如何に前者の命に対して酷薄であるかが理解できる。

 この酷薄さは2人の解放に身代金の支払いを手段とする考えが最初からなく、その場を取り繕う交渉に終始したことの反映としてある姿勢の現れであろう。

 当然、エジプトでの「中東政策スピーチ」にしても、日本人が拘束されても身代金を支払わない強硬姿勢で対峙する予定行動でいたから、拘束への影響を前以て考慮もせず、大塚耕平の言葉を借りると、ケーススタディすることもなく、「ISILと戦う周辺各国に総額で2億ドル程度、支援をお約束します」といった宣戦布告ともなる挑戦的な言葉となったのだろう。

 それはそれでいい。安倍政権としてテロ集団に拘束された場合の邦人解放は米英型とするのか、仏独型とするのか、国民の前に明らかにして、拘束された場合の交渉に当たるべきである。

 そうしてこそ、安倍政権は国民の前に正直な姿を曝すことができる。

 明らかにしていないから、「今、細野委員は私が2人の命、海外で活躍している日本人の命を考えていないか如くの発言をした」といった、ヤジを受けることになる理解違いの発言をしたり、言抜けやゴマカシを蔓延らせることになる。

 あるいはテロに屈したり、テロの気持を忖度したりしているわけではないにも関わらず、テロに屈するのはいけないとか、忖度してはいけないといった関係のない発言を延々と続けることになる。

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