【資料】たまきはる1
枕詞。語義は未詳。『万葉集』において、「命」「うち」「幾代」「磯」「世」「我が」などに掛かる例を見るが、その掛かり方ははっきりしない。その後平安時代中頃まではほとんど用いられず、院政期に歌学の発達と『万葉集』の再評価の中で発掘された言葉である。たとえば『堀河百首』における「玉きはる命も知らず別れぬる人を待つべき身こそ老いぬれ」(一四八二・藤原顕仲)などである。このように「命」に掛かる例が時代を通じて最も多い。以後、「秋の月たまきはるよの七十路にあまりて物は今ぞ悲しき」(拾遺愚草・一四三五)など、藤原定家を中心に新古今歌人の間で流行を見た。「命」「我が身」「世」などに掛かるその用法は、強い自己意識を背後に抱え込んでいる。中世では、「おちまさる袖の涙の玉きはる此の身やかぎり恋は尽きせじ」(草根集・六六五〇)など、正徹が独自な使用法を見せている。(渡部泰明)
-出典:久保田淳・馬場あき子編『歌ことば歌枕大辞典』、角川書店、p.533f。
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