神保町わくわく彷書日記

東京神田神保町を、今日はどんな本に出会えるかと、期待に胸ふくらませて歩くおじさんの日記

小瀬本國雄『艦爆一代』読了

2008-08-30 13:18:12 | Weblog
一昨日、『艦爆一代』読了。
真珠湾以来の艦爆乗りとして奇跡的に生き残った小瀬本国雄。(国は旧字)
フィリピンでは一度特攻隊に組み込まれるが、
戦局の悪化で台湾を経て内地に戻ることになる。
そして、そこで最新鋭の攻撃機「流星」に乗るのである。
急降下爆撃も雷撃も可能な傑作機だが、しかし登場が遅すぎた。
ほどなく内地も敵の激しい空襲を受けることになり、
小瀬本は再び特攻隊「神風特別攻撃隊御楯隊」に組み込まれ、
流星をもって特攻をかけることになる。
実に、昭和20年8月15日。
僚機とわずか2機による、敵機動部隊への特攻だった。
二度と戻れぬ出撃だったが、離陸すると、
なんと愛機流星の脚が引っ込まない。
それではスピードが出せず、爆弾を抱えてよたよたと敵に
近づけば、体当たり前に撃墜されるのは火をみるより明らかだ。
やむなく出直すことを僚機に知らせ、ともに引き返そうと伝えるが、
僚機は反転せず、そのまま敵に向かっていってしまった。
もちろん僚機は帰らなかった。
小瀬本は次の出撃こそと、壮絶な決意を新たにしたところに、
玉音放送である。
運命の不思議さを感じずにはおれない。
もう少し早く玉音放送が流れていたら、あるいは僚機がともに
引き返していたら、あたら僚機搭乗員は命を失わずにすんだのである。
極限状況の中でこそ、人間はその真価が発揮されることもある。
戦争の善悪を論ずるよりも、極限状況に置かれた時、はたして
自分はどう行動するだろうかと考えながら読んでいくと、
いわゆる一代記的な面白さ以上に、懸命に戦おうとした男たちの
姿勢が胸に迫ってくる。




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