トーマス・クーン解体新書

トーマス・クーン『科学革命の構造』の徹底的批判

クワインとクーン(1)

2016年12月13日 | 日記
 このブログの2016年2月7日付けの記事で、拙著『トーマス・クーン解体新書』の原稿の目次をお目にかけました。その第2章の最初の節の見出しが「クワインとクーン」になっています。この節は、現在の形では比較的短いので、次回にでも全体をお目にかけようかと思っています。拙著の出版が幾つかの出版社から turn down されましたので、電子書籍化でも試みようかと考えているところですが、それよりも、内容的に、新しくあれこれ考える事柄が浮かび上がってきて、それを楽しんでいるのが現状です。その一つにクーンとクワインの関係があります。考えれば考えるほど面白くなってきます。
 クワインについて、晩年のクーンの興味深い発言があります。1995年10月にアテネで行われた討論会での発言です。彼の『THE ROAD SINCE STRUCTURE』(p279~p280, 佐々木訳p381) に収録されています。

A senior fellow at that time was Van Quine. And this was just –– I don’t remember the dates –– this was just about the time that his analytic-synthetic paper was coming out. And that as I said the other day had a considerable impact on me because I was wrestling already with the problem of meaning, and at lest to discover that I didn’t have to be looking for necessary and sufficient conditions was extremely important. Quine has been important to me for that piece, and for the problems that Word and Object presented me in trying to figure out why I was so sure it was wrong (outside the fact that there isn’t much of an argument), where he was going off the rails. We can come back to that later. I’ve only really been able quite recently to formulate it, in a way that I find satisfactory.
「その頃のお偉かたのフェローの一人にヴァン・クワインがいました。そして、はっきりと日付は憶えていませんが、彼の分析-総合の論文が世に出たのは丁度その頃だったのです。確かに、先日お話ししたように、あの論文から私はかなりの衝撃をうけました。それと云うのも、私はその頃すでに意味の問題と取り組んでいましたし、必要十分条件を見つける必要がないのだと云うことがわかるだけでも大変重要なことだったのです。クワインは、私にとって、あの論文の故に重要でしたし、それから又、彼の『ことばと対象』が確かに間違っていると私が感じた理由を(あの本でなされている論議はしっかりしたものでないと云う事実を別にしても)はっきりさせようとした過程で、その本が提出した諸問題の故に、私にとって、重要でした。あの本の辺りでクワインは道を踏み外して行ったのでしたが。この件には後で戻ってくることが出来るでしょう。私は、ごく最近になって、やっと自分にとって満足な形で考えをはっきりとまとめ上げることができました。」(藤永茂訳)

 このクーンの話ですと、クワインは『ことばと対象』あたりで脱線してしまったことになっていますが、この断定には、ローティの『哲学と自然の鏡』(1979)
の影も見えるような気がして、誰が道を踏み外したかは、なかなか面白そうな話題です。

藤永茂 (2016年12月13日)
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