私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

オバマ大統領、医療保険制度、ホンジュラス、コロンビア

2009-11-11 12:31:58 | 日記・エッセイ・コラム
 まず病状を報告します。11月2日、尿路結石破砕の手術を受けましたが、固い核の部分は尿路下部に残ったままです。現在の病名は重症前立腺肥大、手術を待っていますが、その日は全く未定。
 体力が落ちて、まともな記事を書くことが出来ませんが、オバマ大統領が来日したときの日本人一般の歓迎ぶりを想像すると、吐き気が催してきます。彼が稀代の「コンフィデンス・マン」、コン・マンであるという、私の信念は揺らぐどころか、ますます強くなっています。
 そこで、アメリカ専門のしっかりした学者の方々に、是非、お願いしたいことがあります。最大の国内問題である医療保険制度は間もなく大統領が法案に署名することになりますが、これまでに至る経過を、選挙戦以前の時点から今日にわたって、詳細に辿って、それを一般の日本人に分かりやすく記述し、説明して頂きたいのです。アメリカの医療保険制度について、アメリカの大多数、特に低収入階層の人々が求めた「単一支払い者制度(single-payer system)」、つまり日本やカナダや英国の制度に似た医療保険制度の政府一元化を、2006年の一時点でオバマその人も支持すると(選挙の票集めのために)明言していたのですが、大統領就任確定の頃から、単一支払い者制度を主張する声を、一貫して閉め出そうとした過程、関係閣僚の人事、議会でのノラリクラリ作戦、・・・、こうしたことを、くわしく辿ってほしいのです。その後ろに一貫して見えるのは、オバマ政権の医療保険業界との密接な関係です。アメリカでは、保険会社から医療費支払いを断られて死ぬ人が一日平均約百人は居ると考えられています。また、個人の破産の人数では医療保険に加入していないために高額の医療費を支払うことを強いられての破産が最高です。今度、オバマ政権の「チェンジ」の成功例として、大いに宣伝されるにちがいない新しい医療保険制度の本質は、医療保険業界側の、僅かばかりの、計算づくの譲歩に過ぎないと、私は考えます。これまでの制度の恐るべき欠陥から生じた死者や破産者の数は少しは減るでしょう。しかし、これまで酷い犠牲を強いられてきた低所得者層の不満は、決して解消しないと思います。それは、1年か2年のうちにはっきりするでしょう。ただ、私がここで問題としているのは、新しい医療保険制度の内容や効果そのものではありません。それが法案として長い時間をかけて審議され、署名されるまでのオバマ・チームの巧妙なノラリクラリ作戦の方に注目してほしいのです。結局のところ、オバマ政権が、当初から狙っていたものを見事に手に入れた、そのやり方です。私が、オバマ・チームを、稀代のコン・マン・チーム、詐欺師集団と呼ぶ理由はそこにあります。始めは、いつもなかなか良いことを言うのです。しかし、本当に達成したいことは別に決めているのです。
 ホンジュラスについても全く同じです。いや、オバマ政権のラテン・アメリカ政策についても、というべきでしょう。予期したとおり、アメリカはみごとにセラヤ大統領を失脚させることに成功しました。はじめオバマ・チームは、「武力で現大統領を追い出すなんて、そんな乱暴は許されない」などと、まことしやかなことを言っていたのです。専門の学者先生のかたがたに、ことの始まりから終わりまでの、オバマ・チームの狡猾極まるノラリクラリぶりを、われわれ日本の大衆のために、白日のもとに晒してくださるようお願いしたいのです。左翼的見解/右翼的見解といったことに関係ありません。事実を並べて、整理して下さればよいのです。コロンビアについても同じです。この国はいつの間にかアメリカの軍事的属領になってしまったようです。
 オバマ大統領の世界非核化宣言も、「広島、長崎を訪れることを名誉に思うだって、なかなか良いこと言うじゃない!」と日本人をうならせる始めのステージにあります。しかし、ヒロシマ・ナガサキといえば、パールハーバーと返してくるアメリカの心から、非核、反核の一体なにが期待できるでしょうか。私は、広島、長崎の人々、日本人全体が、この史上稀に見る大コン・マンに信頼(コンフィデンス)を置いて、後になってから、「ああ、やられた」と後悔することがないように、祈ってやみません。

藤永 茂 (2009年11月11日)


ジャンル:
ウェブログ
コメント (5)   トラックバック (1)   この記事についてブログを書く
この記事をはてなブックマークに追加
« オバマ大統領にノーベル平和... | トップ | なぜホンジュラスにこだわるのか »
最近の画像もっと見る

5 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
 日本のマスメディアだけからはオバマ政権の真の... (櫻井)
2009-11-11 21:32:10
 日本のマスメディアだけからはオバマ政権の真の姿が伝わらず、藤永先生のブログと『週刊金曜日』が自分にとっては貴重な情報源です。
 本当に先生のおっしゃるとおり、左翼とか右翼とかに関係なく、事実に基づいて事の本質を伝えてほしいものです。「保険会社から医療費支払いを断られて死ぬ人が一日平均約百人」「個人の破産の人数では医療保険に加入していないために高額の医療費を支払うことを強いられての破産が最高」―。先生のこれらの文章を拝見するにつけ、このような事実を真面目に報道すれば人々の胸に迫るすばらしいルポができるのに、と思いました。ジャーナリストはなぜ動かないのでしょうか。本当に不思議でなりません。
 広島・長崎の市長がオバマ訪問を熱望し、オリンピック共同開催なども夢見ているとか。被爆地から平和に向けて取り組むべきことは他にいくらでもあると思うのですが。まずは加害と被害の歴史をいま一度、総合的に捉え返す、日本近現代史の総括がやはり最低限必要なのではと思います。
 先生、お体くれぐれもお大事になさってください。ご闘病、しばらく続きそうですが、必ずよくなりますから元気を出してください。
気力を振り絞っての御投稿で嬉しいやらお大事にな... (佐々木恭治)
2009-11-13 11:18:32
気力を振り絞っての御投稿で嬉しいやらお大事になさっていただきたいとの複雑な心境です。

この二三日前から東京では駅周辺に警官がオバマのためか天皇のためか知りませんが警棒持ってうろちょろしており見苦しい光景です。
オバマの支持率が落ち続けているのは化けの皮がはがれつつある証拠で、アメリカ国民もアホですが少しはオバマには信頼は自分たちの味方で無いことことが判ってきたようです。
先生がご指摘のように詐欺師オバマの真の正体を今のところどの報道機関も報道していません。支持率落ちたオバマを助けてやれとか面子をつぶさないよう対応してやれの報道ばかりでいやになります。
日本の報道機関は総じて肝腎な真実を報道しないので一般市民はイラク・アフガン・ホンジュラス・ジンバブエなどで何が起きているのか殆んど知りません。
酒井典子がどうしたとか朝鮮人の日本国籍のない市橋達也のことばかりに血道をあけているのですからマスゴミそのものです。
今度の来日に際しての日本政府の対応もなめられぱなしで終わることでしょう。

快癒されることを祈っています。

佐々木恭治


藤永先生 (高橋)
2009-11-14 06:32:07
藤永先生

DRCの紛争について勉強し始めたときに、藤永先生の著書「『闇の奥』の奥」を読み、衝撃を受けました。それまで国連の報告書や断片的に入る紛争経済の情報など、現在の状況をわずかながら理解しておりましたが、歴史をX線で透視するような先生の著書の切り口からまったく新しい見方が生れ、この本との出会いに感謝しました。先生がブログをもっていらっしゃることを知ってから毎週記事を拝読させて頂いておりました。
自戒も含めて、自分の考えと、その基になる情報収集・分析力を持たず、「雰囲気」に流されていく傾向があるなかで、先生のブログの内容のみならず、その視点の置き方は今の社会の中で、私にとっては灯火のような存在です。
毎週きっちりと水曜日に記事をアップされていたのがここのところ止まっていたのでどうしたのかと案じておりましたところ、闘病のことを最近の記事から存じ上げました。
先生の快癒を心からお祈り申し上げます。
オバマの来日演説からは何の感銘も建設的な意見も... (佐々木恭治)
2009-11-14 12:03:18
オバマの来日演説からは何の感銘も建設的な意見も聴けませんでした。
アジア重視、日米同盟重視をや日米対等などリップサービスで誤魔化しました。
核兵器は減らすようにすると言いながら死んでも無くすとは言わないのです。
何十回も人類を死滅させるほどある核兵器がたとえ十分の一になってもまだ人類絶滅には十分な量あるではないですか!
なんならもっともっと水爆を作りなさいと言いたいです。
山ほど核爆弾をつくればどんなことになるか被爆者は想像できますが大半の米国人には想像出来ないでしょう。
そうすればアメリカで核による事故が必ず起こり少しは核の恐ろしさが米国人にも分かることになるでしょう。

オバマは広島長崎には永久に行かないでしょう。
慰霊碑に献花して平和の祈りなどオバマには出来ません。
行こうと思えばすぐいけるのですから。専用機があるからいまから二時間後に広島原爆ドームに着くことも可能です。
核兵器を減らすと言ったからノーベル賞とは本当にマンガ以下のお笑いで腹が立ちます。
鳩山首相もバカです。
4500億円もアフガンにやるというのです。
日本にはもう金がないというのに、インド洋で油を只配りしていたほうが安上がりなのです。
ベシャワル会の中村哲先生に450億円預けて医療と潅漑、学校などに使いなさいと言ったらどれほど平和に貢献するかと思います。
中村哲さんのような方こそ平和賞に値する人です。
米軍が撤退して、中村哲先生に4500億円預けるなら中村哲さんはアフガニスタンの大統領になれるかもしれません。
しかし残念ながら米軍は撤退しませんね。
アフガニスタンの罌粟畑を失えばCIAの資金源がなくなるのですから。
幻影(イメージ)と忖度の時代 (海坊主)
2016-12-29 22:34:06
いろいろと悩みましたが、こちらの記事にコメントさせて頂きます。

私は自らを世俗的で情感の強い人間と自覚していて、普段はニュースよりテレビドラマを好んで見ています。最近、不祥事を引き起こした出演者が出るシーンがカットされたり、出演回が放送されない、といった事が多いと感じます。確かに、そのような人物が公共の電波を介して国民の目に触れるのは如何なものかという意見はあります。不祥事を引き起こした者の姿を見るのは不愉快、という気持ちも分からないわけではありません。
では、そのような者が最初から居なかったかのように編集してしまう、というのもどうかと私は思います。作品に対する正当な扱いではないと思われるからです。これはその者に対する社会的制裁というのものなのでしょうか? または国民に対する忖度とでも言うのでしょうか? 旧ソ連の大量粛清期の写真ねつ造とそう変わらない印象を私に抱かせます。

前振りが長くなりました。
この「忖度」という行為が真に蔓延しているのはテレビのドラマに対してではなく現実のドラマにおいてであることはご周知の通りです。施政者にとって不都合な事実を私たち国民に正しく伝えず、真実から遠く離れた幻影(イメージ)を私たちに植え付けていると思うのです。

いや、果たして、私たちは真実を求めているのでしょうか? それとも幻影を抱いていたいのでしょうか? 数年前の調査ですが、テレビ・雑誌・新聞に対する信頼度が先進国の中で高いのが日本で、米国・英国では非常に低く、独仏では半分以下という結果が出ています。日本人は今こそ、脳に直結するブラグを自ら抜き取って真実を見るべきなるではないでしょうか?

社会実情データ図録 Honkawa Data Tribute「世界各国における組織・制度への信頼度」
http://www2.ttcn.ne.jp/~HONKAWA/5215.html

オバマ・安倍両首脳が真珠湾での慰霊後に行った演説全文を新聞で読みました。来襲当日の朝の普段通りの平和な風景、それが暗転し戦火の中での市民達が取った勇敢な行動。オバマ大統領の演説はこれらを英雄的に紡いでゆくナラティブでした。憎き敵に対しても寛容さを示し、東日本大震災では原発事故に恐れず友人たる日本を助けた米国、という訳です。そして、それを補完し誉め称えるかのように呼応した安倍首相の演説。これらを幻影というのは言い過ぎでは無いと私は思います。
彼らの言葉の後に何が残ったでしょうか? オバマ氏は核無き世界への行動が期待されてノーベル平和賞を受賞しました。しかし任期終了間近においても核兵器は無くならないどころか、古く劣化した大量の核爆弾を廃棄しそれらを全て新型に置き換えようと莫大な軍事予算を組んでいます。一方、二度と戦争を起こさないという不戦の誓いを述べた安倍氏はどうでしょうか? 集団的自衛権を拡大解釈させ、「駆けつけ警護」なる珍妙な新語を生み出して自衛隊が海外で(防衛的といっても他国領土での)武力行使を可能とし、戦端を開く口実を増やしているのではないでしょうか? これらは彼らが放つている幻影が、現在の真実からそして将来起こり得る未来から遠く隔っている証左と言えるでしょう。

マスメディアは施政者に忖度し自主検閲しているのを私たちは気づかないのでしょうか? それとも薄々気づいているが「王様の耳はロバの耳」を公言して逆鱗に触れ排除されてしまうよりは、気づかない振りをして一緒に踊り、後で被害者面して誤摩化そうとしているのでしょうか?

となると、マスメディアの忖度は施政者だけでなく国民に対しても向けられていると考えざるを得ません。今こそ理解せねばなりません。私たちは施政者と共犯関係にあるということを。

皮肉なことですが、やはり歴史は繰り返されるのでしょう。アメリカや日本はそれぞれの罪深い過去に向き合おうとしていないのですから。

コメントを投稿


コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。

あわせて読む

トラックバック

この記事のトラックバック  Ping-URL
  • 送信元の記事内容が半角英数のみのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • このブログへのリンクがない記事からのトラックバックは受け取らないよう設定されております。
  • ※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
ホンジュラス: "スマート・パワー"の勝利-Postcards from the Revolution (マスコミに載らない海外記事)
Eva Golinger 2009年11月2日 ヘンリー・キッシンジャーは、外交とは、“力を奪う技術”だと言っている。21世紀アメリカ外交政策の最も有力なイデオ