私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

John Pilger (ジョン・ピルジャー)

2017-08-12 21:49:50 | 日記・エッセイ・コラム
前回はPaul Craig Roberts を私が最も信頼する論客の一人として紹介しました。今回はJohn Pilger (ジョン・ピルジャー)の最近の論考を紹介します:

http://johnpilger.com/articles/on-the-beach-2017-the-beckoning-of-nuclear-war

ポール・クレイグ・ロバーツもジョン・ピルジャーも、今更、私が紹介する必要のない名前ですが、前回のポール・クレイグ・ロバーツの文章に勝るとも劣らず、今回のジョン・ピルジャーの文章の筆鋒の鋭さはあまりにも見事なので是非一読をお勧めしたいと思った次第です。
 ここまで書いた所で他事にかまけて筆を止めていましたら、『マスコミに載らない海外記事』に訳出されました:

http://eigokiji.cocolog-nifty.com/blog/2017/08/2017-k-c3bc.html

迫り来る核戦争が主題ですが、先ずは、オバマ大統領についてのジョン・ピルジャーの評価に注目しましょう:
「オバマが大統領の座を去った際、彼はアメリカ最長の戦争や、裁判なしの殺害、無人機による殺人という未曾有の作戦を含め記録的な七つの戦争を統轄していた。
任期最後の年、外交問題評議会の研究によれば“不本意なリベラル戦士”オバマは26,171発の爆弾、一日24時間、一時間に三発投下した。核兵器を“世界から無くす”ようにすると誓ったノーベル平和賞受賞者は、冷戦以来どの大統領より多くの核弾頭を製造した。
それと比較すればトランプは意気地なしだ。現代国家としてのリビアを破壊し、ヨーロッパへの人々の殺到を起動したのは、ヒラリー・クリントン国務長官を従えたオバマだった。彼はアメリカ国内では、移民団体には“強制送還最高司令官”として知られている。
大統領としてのオバマ最後の行動の一つは、アメリカ合州国支配におけるファシスト軍国主義の圧倒的優位を反映した、記録的な6180億ドルをペンタゴンに与える法案の署名だった。」

 私は、バラク・オバマが米国大統領になる以前から、一貫して彼を“稀代のコン・マン(詐欺師)”と位置付けて今日に及んでいます。ジョン・ピルジャーも早い時期から同様の判断を下していました。私は、このブログの2008年2月27日付けの記事『オバマ現象/アメリカの悲劇(1)』に始まって、オバマ大統領に関する多数の記事を書いてきましたが、今の時点で振り返って、訂正すべきことはほとんどありません。ご参考までに、上掲の記事のはじめの部分をコピーします:
■今年2008年はアメリカの第44代大統領選挙の年、アメリカのメディア(したがって日本のメディア)は、民主党の候補指名をめぐって、バラク・オバマ氏の話で持ち切りです。なにしろ、米国初の黒人大統領が生まれるかもしれないのですから。
 オバマという名前が私の注意を引いたのは2004年のことでした。ハワイ出身のオバマという米国政界の新星の出現が報じられた時、私は日系人かと思いました。ハワイ出身の上院議員としてはダニエル・イノウエ氏が有名なので、井上に続いて小浜か、と思ったのでした。バラク・オバマの父はケニヤのルオ族出身の黒人、母はカンサス州出身の白人、二人はハワイの大学の学生として知り合って結婚し、1961年息子のバラク・オバマ誕生。しかし、父母は2年後に別居、やがて離婚。父親の方はハーバード大学大学院に学び、ケニヤッタ大統領統治下のケニヤに帰って政界に進出、1982年交通事故死。母親は前夫と同じく外人留学生としてインドネシアからハワイにやってきたソエトロ氏と再婚して、1967年、息子を連れてスハルト独裁下のジャカルタに移住しましたが、オバマ少年は10歳の時ハワイの母方の祖父母の下に帰って私立学校で学業に励みます。母親も1995年子宮がんで亡くなりましたが、この白人女性は、私には、マルグリッド・デュラスの小説の中にでも出てきそうな女性のように思われます。
 バラク・オバマの生い立ちのストーリーも面白そうですが、私の関心事は「オバマ現象」と呼ばれるアメリカの政治的社会的現象です。この言葉は私が自分で思い付いて使い始めたつもりだったのですが、少し調べてみると、バラク・オバマが、2004年6月、民主党全国大会で行った基調演説によって、一躍、政界の新しいスターにのし上がった直後から、アメリカのメディアで使い始められた言葉のようです。
 「オバマ現象」とは何か。政治的社会的現象としては、マスコミが騒いでいる御覧の通りの現象です。断然有利と伝えられていた白人女性候補ヒラリー・クリントンを、白人人口98%のアイオワ州やウィスコンシン州でも楽々と打ち負かして破竹の進撃を続ける黒人バラク・オバマ、テレビの映像を見ると、颯爽とマイクを握る彼のうしろにびっしりと並ぶ若い顔、中年男女、お年寄り、殆どすべては白い顔、これが「オバマ現象」です。このハンサムな黒白混血46歳の政治家のキャッチフレーズは、変化(Change)、夢(Dream)、希望(Hope)、そして、「きっとやれる(Yes, we can!)」です。この頃では、前から結構辛口の政治評論家と私が思っていた英国人までが「オバマなら、ブッシュがすっかり台無しにしてしまったアメリカを変えられるかもしれない。アメリカ人の多くがそれを望んでいるのだ」と発言するまでになっています。しかし、「オバマ現象」を前にしての私の想いは全く違います。今日のブログのタイトルを「オバマ現象/アメリカの悲劇」とした所以です。「オバマ現象」はアメリカの悲劇と呼ぶにふさわしい現象です。私にはこれを「アメリカの喜劇」あるいは「アメリカの笑劇(farce)」と呼びたい気持もありますが、それは不謹慎というもの。世界最強の国家アメリカ合衆国政府の不遜な一挙一動で、国外の何十万、何百万の人間に言い知れぬ苦難が襲いかかることになるのは、いま現在、我々がこの目で見ている事なのですから。また、私は、もしバラク・オバマがアメリカの大統領になったら、アメリカの国外、国内の政策がどのように変化(CHANGE!)するかについての予言をしようというのでもありません。今、われわれの眼前で展開している「オバマ現象」は何故起ったのか、何がその本質なのか、に就いてしっかりと考えてみたいのです。「オバマ現象」は、ごく荒っぽく捉えれば、白人アメリカの「集団ナルシシズム」と表現できるかもしれません。しかし、この表し方には、致命的な誤りがあります。神話のナルシスは水面に映る自らの美しい容姿に恋いこがれて死に至りますが、白人アメリカが本当の自分の美しい姿を映していると信じ込んでいる鏡は、実は、悪魔がかざす魔の鏡であり、そこに映っているのはアメリカの本当の姿ではありません。喩えが安っぽくなり過ぎましたが、「オバマ現象」がアメリカを死に至らしめる病となる可能性は、やはり、否めません。「オバマ現象」は白人アメリカがバラク・オバマを待ちに待ったメシアとして熱狂的に迎えている現象ではなく、黒人の男をアメリカ合衆国大統領として擁立しようと熱心に努力する自分たちの姿こそ、アメリカ白人の心の正しさ、寛容さ、美しさを映すものであるとする自己陶酔、自己欺瞞こそが「オバマ現象」の真髄である--これが私の言いたい所なのです。私の根本的な見方なのです。私には、この立場に固執し、この考えを読者に理解して頂きたいという強い思いがありますが、そう簡単に理解して下さるとは思えませんので、ゆっくりと説明することに致します。■
バラク・オバマという黒白混血の米国大統領の出現が米国の“死に至る病”の症状の一つであることはもはや明確ですが、米国はT. S. エリオットの詩の一行;Not with a bang but a whimper のようには終わってくれそうにありません。
 トランプ大統領は「米国は今までで最高の核武装をしている」と豪語しています。全くオバマのおかげです。核戦争については改めて書きます。

藤永茂(2017年8月12日)
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「1984年」的アメリカ (一読者)
2017-08-17 08:31:37
ヒラリーが大統領になっていれば、オバマはそのまま歴代最悪の大統領の一人で終わっていたはずです。トランプがオバマをリベラルの英雄に変えました。各メディアはオバマ政権末期の辛辣な論評をメモリーホールに投げ込み、突然アメリカ的価値観の擁護者として誉めそやし出したのです。あたかも共産政権崩壊後のルーマニア政府の無策が、反体制派をして「チャウシェスク、私たちはあなたが恋しい」と言わしめたように…。

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