私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

アレッポの悲劇、アメリカの悲惨

2016-10-12 22:06:22 | 日記・エッセイ・コラム
 トルコとの国境に近いアレッポは、シリア戦争の前はシリア最大の都市で、人口は200万を優に超えていましたが、現在は約150万、そのうちの六分の一、つまり、約25万が反政府軍の支配する東部地域に住んでいます。日本を含む西側の報道機関も、その気になれば、アレッポの住民の大多数が住む政府側支配地域に入って、その悲劇的な状況を取材報道できる筈ですが、マスメディアの特派員はそれを行いません。政府側支配地域の住民の大多数がアサド大統領を支持しているなどと報道すれば、没になること必定ですから。
 例えば、朝日新聞デジタルには
やまぬ空爆「包囲され逃げられない」 アレッポの現
イスタンブール=春日芳晃
2016年10月11日02時03分
http://www.asahi.com/articles/ASJB93G3HJB9UHBI003.html
というふうに出ています。白いヘルメットさんの写真もちゃんと出してあります。まるでアレッポ全体がシリア政府軍に包囲され、空爆されているかのような印象を受けます。しかし、東部アレッポの住民を閉じ込めているのは反政府軍です。国連シリア特使デミストゥラ氏は、「自分が身をもって安全を保証するから」と言って、アレッポ東部からの反政府軍の撤退を提案しましたが、反政府軍側はこれを拒否しました。
 英国のBBCの日本語版にも、同じような組み方の記事が出ています。動画もあって、日本語音声もついていますから、ご覧ください。英語でも聞いてみようという方は、ぜひそうなさることをお勧めします。国連特使は「このままではアレッポはクリスマスまでに破壊される」とは言っていません。

このままではアレッポはクリスマスまでに破壊される=国連特使
国連シリア特使のスタファン・デミストゥラ氏は6日、シリア反政府勢力が抑えているアレッポ東部へのシリア政府とロシアの空爆がこのまま続けば、あと2カ月半、クリスマスまでに旧市街は完全に破壊されてしまうと警告した。
市内には子供だけで約10万人が身動きできずにいる。
(英語記事 Syrian city of Aleppo 'faces total destruction by Christmas')
BBC日本語版
http://www.bbc.com/japanese/video-37616844
BBC英語版
http://www.bbc.com/news/world-middle-east-37580797

トルコ軍は、今や堂々とシリア北部に侵略軍を進めて、東部アレッポの反政府軍に兵力重火器を供給することができる体制を整えました。トルコ/アメリカ/NATO側が制空権(ノー・フライ・ゾーン)を確立して、「アレッポの戦い」を勝ち抜く決意を固め、国連を主な舞台としてあらゆる術策を弄することでしょう。アメリカという国の汚さは心得ていたつもりでしたが、ここまでなりふり構わず堕落腐敗するとまでは思っていませんでした。
 去る9月17日、シリア東部デリゾール(Deir al-Zor)空港の近くのシリア政府軍にアメリカ側の空軍機(多分英国空軍機)が、約一時間、熾烈な空爆攻撃を加え、シリア軍兵士90人が死亡し、100人以上が負傷しました。これは明らかにIS軍に対する援護作戦であったことが確立されています。米国政府は、単なる誤爆だと言い張り続けていますが、その一方で、その後も、ISを援護する同様の軍事行動を継続しているのです。このニュースは、「米国もその撃滅に尽力している過激な宗教的テロ組織IS」という、マスメディアやいわゆる専門家たちから聞かされる 、ISのイメージが如何に誤っているかを、我々一般の市井の人間に知らせてくれます。ISは米国の代理地上軍です。本質的に、金で集められ、金で動いている傭兵軍隊です。金が止まれば、この操り人形の動きは止まります。しかし、米国は、あくまで、この凶悪な嘘を通し続けるつもりです。今日のニューヨーク・タイムズによると、ISが巧みにドローンを使い始めたそうです。これで、また色々の嘘話と偽旗作戦ができるというものです。私は、こうした事態の展開に、米国の恐るべき狡猾さを見るよりも、むしろ、絶望的な色合いを示してきた、のっぴきならぬ米国の悲惨を想います。地獄絵巻の様相を示す大統領選挙戦も、米国の悲惨の顕現です。これは一過性の異常事態ではありません。米国という国の本質の顕現です。

藤永茂 (2016年10月12日)
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2 コメント

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ユーゴスラビアへの侵略の頃から (特命希望)
2016-10-14 13:49:13
何も成長していない、むしろ堕落し続けているんですね、アメリカと取り巻きのNATOは。
ユーゴでは中国大使館を爆撃して職員を殺し、「古い地図使いました、サーセン」とかいう下手くそな言い逃れが通じると思っていたような奴らですから。戦争で地図をはじめ、最新の情報を使わないなんて事はあり得ないでしょう。
トルコは敵か味方か (特命希望)
2016-10-14 14:10:27
>トルコ軍は、今や堂々とシリア北部に侵略軍を進めて、東部アレッポの反政府軍に兵力重火器を供給することができる体制を整えました。トルコ/アメリカ/NATO側が制空権(ノー・フライ・ゾーン)を確立して、「アレッポの戦い」を勝ち抜く決意を固め、国連を主な舞台としてあらゆる術策を弄することでしょう。
私が貴ブログとともによく見ているDEEPLY JAPANというブログでは、トルコは割と独自路線で、アメリカから距離を置いている(クーデター鎮圧がきっかけ)と見ていますが、管理人さんはどう思われますか。
http://blog.goo.ne.jp/deeplyjapan/e/1420609f70d135b517863fd0b0c55d7b

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