私の闇の奥

藤永茂訳コンラッド著『闇の奥』の解説から始まりました

『おかめ作戦』の即刻開始を

2017-04-07 22:42:19 | 日記
 『おかめ作戦』>『オペレーション・おかめ』>『オペ・おかめ』は拙作電子本小説のタイトルで、遠隔操縦小型ロボットによる架空の要人暗殺作戦を意味します。
 小学館の国際情報誌「サピオ」の5月号の広告を見ると、
   米国の金正恩暗殺に協力するしかない  佐藤優
という記事があります。今年度の米韓合同軍事演習にはっきり謳ってありましたが、米国は金正恩暗殺を公然と目標に掲げているのです。トランプ大統領は、北朝鮮を懲罰するためには、核兵器による先制攻撃を含めて、あらゆるオプションが on the table だと明言しています。私としては、米国の暴虐行為をこれ以上許すことは出来ませんので、トランプ大統領の名前を『オペ・おかめ』の Kill List に加えなければなりません。このKill Listにはトランプ大統領の近親や政権の閣僚、ジョン・マケイン上院議員、CIAの幹部、エリック・プリンスなどの名も含まれています。リストの中には殺さなくてもよい人も含まれているでしょうが、あまり気にすることもありますまい。何しろ、米国には、コラテラル・ダメージ(collateral damage) という誠に便利な響きの言葉があって、まあやむを得ない犠牲ということで済まされます。遠隔操縦殺人ロボット機ドローンの犠牲者などに関して、皆さん先刻ご存知のことでしょう。
 トランプ大統領を『オペ・おかめ』の Kill List に加えたのは、彼が彼のリストに金正恩の名を加えたからだけではありません。4月4日のシリア北西部イドリブ県で生起した毒ガスによる大量殺人事件を口実にして、トランプ大統領が突然シリアのアサド大統領に対する政策を180度転換したことで、私は、まさに怒り心頭に発し、血圧が180を超えて、頓死の覚悟を強いられたのが、トランプ大統領を『オペ・おかめ』の暗殺対象にしたいと思った第一の理由です。

<昨夜(4月6日)ここまで書きましたが、本日、米国がシリアのアサド政権に対して直接の武力行使に踏み切ったことを知りました。>

 私の血圧が急上昇した直接の原因は、4月5日ホワイトハウスのローズガーデンでの訪問者ヨルダン国王アブドゥラ二世と共同の記者会見で、トランプ大統領が今回の毒ガス事件について語るのを聞いたことでした。初めはNHKのニュースで聞き、ワシントンポストでもっとよく聞き直しましたが、色々なサイトでも聞けると思います:

https://www.washingtonpost.com/world/national-security/trump-and-his-america-first-philosophy-face-first-moral-quandary-in-syria/2017/04/05/ec854e20-1a21-11e7-bcc2-7d1a0973e7b2_story.html?utm_term=.6b9012c1fe64&wpisrc=nl_headlines&wpmm=1

シリアのアサド政権が “innocent people, including women, small children and even beautiful little babies” を惨殺したと糾弾するトランプ大統領の不潔極まる語り口を聞いてみてください。吐き気を通り越して、胃の腑が煮えくりかえる思いがします。この毒ガス事件は米国側の自作自演の芝居であることは火を見るより明らかです。シリア情勢のこの時点で、アサド政権が、自分側にとって百害あって一利もない愚行を犯す理由は完全にゼロです。しかもこの芝居では多数の生身の人間が殺されました。効果を上げるために、いたいけな幼児たちまでが犠牲になりました。これは断じて許せません。
 2013年8月21日シリアの首都ダマスカスの近くの反政府軍の支配地区Ghouta で今回と酷似の毒ガス事件が起こりました。私は、10日後の8月30日『もう二度と幼い命は尊いと言うな』と題するブログ記事で問題を論じました。出来れば全体を読んでいただきたいのですが、以下には、結語の部分だけを再録します:
**********
 今回の化学兵器使用に就いて、上のFP掲載の記事にあたる「シリアの毒ガスは、実はCIA(あるいはイスラエル)が用意した」という暴露記事が出るのはいつのことでしょうか。10年後? 20年後? 間もなく降り注ぐ米欧軍のミサイルの雨に打たれて死んで行くシリアの老若男女にとって、それこそ後の祭りというものです。
 しかし、私の心に最も重くのしかかって来るのは、虚々実々の政治的暗闘への嫌悪感ではありません。今度の毒ガス使用のむごたらしい映像を見つめながら、心の底に重く重く沈殿してくるのは、この宣伝映像が幼き者たちの苦悶と死に重点を置いて編集されているという事実に対する怒りです。こうした映像を利用する政治的意図こそ、痛々しい幼き者たちの魂に対するこの上ない冒涜であります。つい二三日前のこと、あるテレビニュースでアメリカの慈善団体がシリア難民キャンプで子供たちのために学校バスを運営していることが報じられていました。文字通りの“スクールバス”で、内部の各座席に一台のパソコンが付いていて、子供たちは嬉々としてお勉強に励んでいました。What is this! と私は叫んでしまいました。なんと不必要に贅沢な学校、ここに明白にディスプレーされているのは米欧の毒々しい偽善の醜悪さであって、幼きものたちに対する愛情とは何の関係もないどころか、彼らの喜ぶイメージを自己宣伝に利用する許し難い背信行為です。もしこんなことをする金があるのなら、例えば、ハイチの子供たちにせめて安全な水道の水を飲ませてやって欲しい。川の泥水を飲んでコレラに罹って死なないように。私の脳裏には、またしても、例のマドレーン・オルブライトの発言が浮かびます。以前にもこのブログで取り上げたことがありますが、今日はウィキペディアから少し引用します。:
■1996年、60 Minutesに出演して、レスリー・ストールから対イラク経済制裁について“これまでに50万人の子どもが死んだと聞いている、ヒロシマより多いと言われる。犠牲を払う価値がある行為なのか?”と問われた際「大変難しい選択だと私は思いますが、でも、その代償、思うに、それだけの値打ちはあるのです」(“I think that is a very hard choice, but the price, we think, the price is worth it. ”)と答えた。なお、オルブライトのこの発言を腹に据え兼ねた国連の経済制裁担当要員3名(デニス・ハリデイ、ハンス・フォン・スポネック、ジュッタ・バーガート)が辞任。このうちハリデイは「私はこれまで(対イラク経済制裁について)“ジェノサイド”という言葉を使ってきた。何故なら、これはイラクの人々を殺戮することを意識的に目指した政策だからだ。私にはこれ以外の見方が出来ないのだ」とコメントを残している。■
そうなのです。幼い子供たちの苦しみを政治宣伝の具に供する狡猾さこそあれ、幼い命の尊重などは、米欧の支配権力にとって、極めて低いプライオリティしか与えられていません。彼らのプライオリティの真の序列を見据えることが我々にとって喫緊の要事です。
**********
 この有名なグータのサリン事件が反アサド勢力側の芝居(偽旗作戦)であったことは、現在では、確立されていると言えます。文献は多数ありますが、ここでは趣向を変えて、二つの興味深い事実を指摘しておきます。一つは、今回のイドリブ事件についてのおびただしい米欧の報道記事や公式的な言明で、グータ事件への言及が、主にオバマ批判の関係から、行われている場合に、よく注意して読んでみると、グータの毒ガス攻撃がアサド軍によるものであったという確言が含まれていないという事実です。偽旗作戦だったのですから当然のことですが。もう一つの事実は、私が見つけた小さな宝石です。
 ロジャバのクルド人の重要な指導者にサレフ・ムスリム・モハメド(Salih Muslim Muhammad) という人がいます。ロジャバ革命のレニングラード戦とも呼ばれるコバネの死闘を勝ち抜いた英雄の一人です。私は、偶然のことから、2013年のグータ事件の直後にサレフ・ムスリム・モハメド氏が「これはアサド側ではなく、反アサド側がやったことだ」と断言していたことを発見ました。
 ついでに、私が見つけた小さな宝石をもう一つ。4月5日ホワイトハウスのローズガーデンでの訪問者ヨルダン国王アブドゥラ二世と共同の記者会見で、トランプ大統領の無責任な発言に同調するつもりのヨルダン国王は、トランプがISISについて語った直後に“Terrorism has no border, no nationality, no religion”とうっかり本当のことを言ってしまいました。ISIS は宗教団体ではないのです。宗教信仰を悪用して若者を暗殺者に仕立てる国際的傭兵組織です。北朝鮮に与えられているような国際的制裁を与えれば、すぐにもしぼんでしまう組織です。

藤永茂 (2017年4月7日)