ウェザーコック風見鶏(VOICE FROM KOBE)

風の向くまま、気の向くままに……

ロイヤル・タイラー教授の「源氏物語感」

2007-10-25 08:06:25 | 文化・学術

 
    (ロイヤル・タイラー教授)

 日本経済新聞10月20日付最終面「文化欄」で、源氏物語に関して大きく報じられている。タイトルは、「『源氏物語』色あせぬ魅力」で、サブタイトルは「日本文学の頂点、来年で『千年紀』」である。
 記事は東京での二つの取り組みを紹介している。
 ひとつは、9月22日東京の立川市民会館で開催されたシンポジウム「一千年目の源氏物語」(国文学研究資料館主催)、二つ目は10月5日東京大学本郷で開催されたロイヤル・タイラー教授の講演会「『源氏物語』とThe Tale of Genji」で、双方とも会場に入りきれないほどの盛況振りだったようである。

 興味を引いたのは、タイラー教授の講演会の記事である。
 タイトルが「『源氏物語』とThe Tale of Genji」である。何故、「源氏物語」とその英訳である「The Tale of Genji」を比較対照するのか、という点である。
 わざわざ、このようにタイトル設定する限りにおいて、「英訳本の視点」と日本における「源氏物語に関する視点」との相違等につき、言及していることが想定される。
 タイラー教授は、2001年にウェイリーやサイデンステッカーに次いで「源氏」を英訳し、今年の国際基金賞を受賞したとのこと。

 講演会の中味に関し、記事では、「タイラー教授は、『源氏』は1930年代にウェイリーや作家のバージニア・ウルフによって偉大な世界文学となったが、今は『もののけとプレイボーイの物語』というステレオタイプに成り下がったと嘆いた。…『夕顔』の一章に運命的ともいえる時間の流れと、流麗な文体を見出したウルフの深い読み方とは対照的と批判」しているとのこと。
 記事は続けて、「『源氏』の主題は恋や情事だけではない。皇室の正式な系統を断ち切る王権の問題から権力闘争まで血が流れている。おぞましきもの、あさましきもの、機知に富むユーモアもある。ホメロスやシェイクスピアと並ぶ壮大な文学だ」とタイラー教授が述べたとしている。

 古典国文学も含め、日本文学に深く関わる外国人教授の目で見た「源氏」、「一部の人たちの源氏の最近の捉え方に対する批判」、「ホメロスやシェイクスピアとの比較対照」という観点から、講演の内容がおぼろげながら、想定され、非常に面白い講演会ではなかったかと感じる。
 しかも、「運命的ともいえる時間の流れと、流麗な文体を見出したウルフの深い読み方」と指摘している点との関係で、英訳された源氏物語と、源氏の原本との比較対照を行い、どのような英語文体に変換されているのか興味が沸くところである。

 サイデンステッカー氏死去の報道について、このブログで取り上げたことがある。その中で、「これほどの作品を生み出した国が、いやしくも下らない国であるはずがない…」と指摘していたとのことであるが、サイデンステッカー氏も、ウルフと同じような感性で、「源氏物語の文化性」を認識していたのかもしれない。。。
 ちなみに、その記事のタイトル「サイデンステッカー氏死去」にリンクを張っておくので、興味のある方はチェックしてみるとよい。
 Written by Tatsuro Satoh on 25th Oct., 2007

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