褒めまくる映画伝道師のブログ

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映画 コックと泥棒、その妻と愛人(1989)  芸術的な作品?

2016年05月04日 | 映画(か行)
 タイトル名だけ見ると、ただ登場人物を羅列したような何とも味気ない雰囲気が漂うが、中味はなかなかパンチの効いた映画が今回紹介するコックと泥棒、その妻と愛人マイケル・ナイマンによる音楽は素晴らしく、ジャン=ポール・ゴルチエによる衣装は華やかで、天使のような歌声は幸せな気分になり、めくるめくシーンごとにセットや衣装などの色彩が変わっていく場面転換は非常に鮮やか。それに主な舞台は高級料理店の中なので美味そうな料理が出てくる。これだけの情報量だと芸術的で優雅な気分に浸れる映画なのかと思える。
 しかし、実際に本作を観てみるとアラ、ビックリ!暴力、残酷、罵声、エロ、グロのオンパレード。美と醜悪の対比する要素が取り入れられているのだが、鑑賞中も見終わった後も印象に残るのは醜悪の方ばかり。そりゃ~、そうだ、最高の絵を制作しようと、その達人を10人集めて描かさせようとしても、その中に1人でもド下手が存在するとロクな絵が完成するように思えないのと一緒のこと。まあ、多くの人が本作を見終えた後は、もう二度とこんな映画を見るものかと思ってしまうだろう。
 ならば観る者に不快感を与えるだけの内容の映画かと思いきや、これが現在の我々の身近でも思い当たるような節があり、それどころか古今東西に渡って通じる奥深いテーマ性が込められているから、非常に深読みのしがいがあるのだから困ったものだ。まるで金持ちしか行けないような高級レストランを舞台にしただけなのに、人間の食に対する欲望、権力者の横暴、思惑が絡む人間関係、説明できない男女の愛など、実は哲学、政治、社会、道徳、愛など幅広く考えさせれるのだから、本作を観れば観るほど賢くなれる、って自分でも書いていてホントかよ!

 さて、いくら高級で美味い料理が出るとわかっていても、絶対にこんなレストランには行きたくないと思わせるストーリーの紹介を簡単に。
毎晩の如く、妻のジョージナ(ヘレン・ミレン)と部下を連れて、自らがオーナーを務める高級フレンチレストランにアルバート(マイケル・ガンボン)がやって来た。大泥棒であるアルバートは非常に乱暴者で身勝手な人間。ところかまわず大声を出し、気に入らない人間がいると殴る蹴るの暴行を働き、時には残忍な方法で人殺しもする。妻のジョージナは彼のことを嫌っているが、その恐ろしさのおかげで虐待を受けていても逃げることができない。高級レストランのシェフであるリチャード(リシャール・ボーランジェ)も他のお客様にとっては非常に迷惑なアルバートに対して恐れから追い払うこともできない。
 今日も夫のアルバートに連れられて高級フレンチレストランに来ていてジョージナは、常連のお客であり、いつも片隅で本を読んでいるマイケル(アラン・ハワード)と目が合う。ジョージナとマイケルはどちらから誘うともなくトイレへ直行し、エロ行為。
 それからはこの2人は高級レストランで出会うたびに、アルバートの目をこっそり盗んでは、リチャードが厨房近くの一室を貸してくれるおかげもありエロ三昧の日々。ところが2人の関係がアルバートにバレテしまい、彼の暴力を恐れた2人は高級レストランを逃げ出し、マイケルの部屋で愛し合う幸せな時を過ごすことになるのだが・・・

 冒頭から暴れまくるアルバートだが、これが自称”美食家”という、もの凄い勘違い野朗。俺の回りにも、自分で自分の事を何の根拠も無く、俺は凄いんだと言っている奴をチラホラ見かけるが、そういう奴と知り合いになると本当に迷惑すぎることこの上ない。そんな人間が権力を持ってしまった時の怖さをこの映画からは特に感じる。
 だいたい歴史上において良い意味でも悪い意味でも名を遺す人物はけっこうな愛食家が多い。そういう意味では食というのは欲望の象徴でもあるのだが、本作の食欲に対する描き方がなかなか興味深い。アルバートの残忍な人殺しの方法は食べることに対して暗喩的に描かれ、また自称”美食家”の前に出される料理は、そこら中に居るグルメと呼ばれる人も恐らく食ったことがない珍品物。他にも冷凍庫や厨房にある食材がえげつない。俺もマンマと演出家の狙い通りに一瞬食欲が失せたが、しばらくするといつも僕に美味しい料理を提供してくれる人に感謝の気持ちが芽生えてきたのは何故だろう?
 映像美を感じさせながらもグロテスクである映画コックと泥棒、その妻と愛人は、ちょっとばかり他の映画にない魅力に惹かれる珍品中の珍品である映画。ゴールデンウィーク中に見て欲しい映画として今回はこいつをお勧めしておこう

コックと泥棒、その妻と愛人 [DVD]
リシャール・ボーランジェ,マイケル・ガンボン,ヘレン・ミレン,アラン・ハワード,ティム・ロス
ジェネオン・ユニバーサル


 監督は奇才中の奇才であるピーター・グリーナウェイ。その作風は不思議な映像はもちろんですが、難解な作品が多い。個人的には今回紹介したコックと泥棒、その妻と愛人が1番のお勧めですが、他に僕が観た中ではベイビー・オブ・マコン(当時観た時はボカシが多かったですが)は良かったと思います。

 再見して驚いたのはジョージナ役が今やベテラン女優として確固たる地位を築いているヘレン・ミレンだったこと。ロバート・アルトマン監督のゴスフォード・パーク、スティーヴン・フリアーズ監督のクィーンがお勧めです。




 
 
 
 
 
 


 
 
 

 

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