恥ずかしい歴史教科書を作らせない会

改憲で「戦争する国」、教基法改定で「戦争する人」づくりが進められる今の政治が
将来「恥ずかしい歴史」にならぬように…

社民党の兵法

2010年06月02日 | 国会・政党・選挙
 鳩山首相が2日、辞意を表明しました。
 その裏側で何が起きていたのか、その流れを考えるとき、私は軍事ジャーナリストの神浦元彰氏が昨年暮れに書いておられた文章を思い出していました。

■ 「社民党切り」

 「今、自民党議員に対して地下で民主党からの切り崩しが進んでいるという。…それらを民主党が取り込めば社民党との連立は必要がないという考えだ。」
 「社民党は小沢幹事長の自民党切り崩し手腕の凄さを理解すべきだ。来年の参議選で民主党単独過半数獲得も十分に可能性がある。自民党が切り崩されて民主党に加わるからだ。」

 さらに神浦氏は、12月24日付けの自衛隊機関紙「朝雲新聞」の、「田村(耕太郎参院)議員の自民党離党で、来年夏の参院選を待たなくても、民主党が社民党を切れる可能性がでてきた」という記事を引用して、「戦国時代の日本史で、敵を切り崩すことが最善の勝つ戦術であった。社民党は孫子に学ばなくてはならない。」と説いていました。
 (以上引用 http://www.kamiura.com/whatsnew/continues_271.html)
 
 そしていま、全く逆のことが起きています。

■ 米国内の「切り崩し」

 確かに、神浦氏や「朝雲」の主張どおり、民主党は参院選前に社民党を切りました。
 神浦氏や自衛隊の期待どおり、日米合意を優先させ、社民党や沖縄県民を裏切ったのです。
 しかし、神浦氏が説いた「切り崩し」は、社民党の方が一枚上でした。

 「国外移設」を追求してきた社民党は、米国への「切り崩し」から始めました。
 米自治領の北マリアナ諸島では知事もテニアン市長も、単なる基地移転の歓迎ではなく「ぜひ誘致したい」と表明しました。議会は上下両院で「誘致決議」を採択しました。

■ 民主党内の「切り崩し」

 この「テニアン移設」案が、単なる「夢物語」ではないと現実味や説得力を強める中、鳩山内閣は「辺野古」移設を盛り込んだ「日米共同声明」を結び、その政府方針の閣議決定を行おうとしましたが、これに対し与党内から180名が「テニアン」を例示して、「国外移設を追及すべき」という声明文を、内閣に突きつけました。
 与党議員が「反旗」を翻す180名は、社民党議員の15倍の人数ですが、これはわずか数日で集まりました。既に民主党内にも「切り崩し」が進んでいたのです。

■ 参議院の「切り崩し」

 さらに、連立を離脱した社民党は、参議院の民主党への「切り崩し」に取り掛かりました。
 まず、あえて「選挙協力」の可能性に含みを持たせることで、「逆風」に喘ぐ改選議員を動揺させました。

 加えて、鳩山内閣への不信任・問責の決議案に「賛成」する意向を表明することで、内閣を揺さぶりました。参議院で首相に対する問責決議案が提出されれば、わずか数名の「造反」で通ります。その動揺を衆議院に持ち込めば、民主党が圧倒的多数を占める衆議院でも、不信任決議案が通る可能性は十分にありました。

■ 国民新党の「切り崩し」

 また、鳩山内閣は社民党の福島党首を「罷免」した日、同じ連立パートナーである国民新党に対しては、彼らの「一丁目一番地」である郵政改革法案を、わずか1日の審議で採決を強行しました。
 しかし、この法案は参議院の総務委員会で審議中です。25名の委員のうち民主・国民新の会派は12名、社民は1名です。社民党が他党と結束して反対すれば委員会で否決されますし、欠席すれば委員会そのものが成立しなくなります。
 「切り崩し」は、民主・国民新両党との関係にも及んでいたのです。

 もう既に「切られた」側の社民党の「切り崩し」は、「切った」側の鳩山内閣を、そこまで追い詰めていたのです。

■ 「社民党の兵法」

 さて、冒頭ご紹介した通り、神浦氏は「社民党は小沢幹事長の自民党切り崩し手腕の凄さを理解すべきだ」と説き、さらに「戦国時代の日本史で、敵を切り崩すことが最善の勝つ戦術であった。社民党は孫子に学ばなくてはならない」と説いていました。
 しかし、その小沢幹事長は、「切り崩し」に敗れた鳩山首相の「道連れ」で、幹事長職を辞任することが決まっています。
 あえて「孫子」で言うならば、「始めは処女のごとくして敵人戸を開き、後には脱兎のごとくして敵防ぐに及ばず」という「社民党の兵法」に敗れ去ったのです。

 軍事や政治を語る人々には、今回の「社民党の兵法」こそ学んでもらう必要があるように思います。

■ 「民意」

 さて、その社民党の「戦術」の強みは、決して「奇策」にあったわけではありませんでした。
 一つは「絶対に沖縄県内に新基地は作らせない」という「信念」「執念」であり、もう一つは徹底的に「筋を通す」ということでした。

 沖縄・徳之島などの「米軍基地はいらない」という「民意」を、それこそ「体を張って」守りぬく姿勢、そして「テニアンが歓迎してくれている」という強い説得力への「共感」こそが、日本の政治史を塗り替える原動力となったのです。

 もうすぐ、次の日本の首相が決まります。
 その真価は、「今度こそ『民意』を大切にしてほしい」という国民の願いに応えるのかどうか、そこで判断されるべきだと思います。


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1 コメント

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すごいですね (歌ちゃん)
2010-06-03 01:03:54
こんばんは。
何だか社民党ってすごいですね。
沖縄の基地問題の解決、早く実現してほしいですね。

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