どの世論調査も内閣支持率が上昇している。NHKが8~10日に実施した調査では、「支持する」が先月比5ポイントアップの44%、「支持しない」は7ポイントダウンの36%。
同期間の読売調査も支持率は50%と先月から8ポイント上昇し、不支持率は39%と9ポイント下がった。
いずれも支持が不支持を上回ったのは3カ月ぶり。朝日の最新調査でも支持率はアップ。先月比7ポイント減った38%の不支持率と並んだ。
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果たして安倍政権がこの1カ月間で何か国民に良いことをしたか。
従来の政策もめぼしい実績は皆無だ。
それでも支持率が上昇したのは、北朝鮮危機への国民の不安感のみである。
核・ミサイル開発の強烈な挑発を繰り返す状況に、国民の多くは「ヤバイ」と感じている。NHK調査だと、実に87%が北朝鮮の行動に「不安を感じる」と答えた。
安全保障上の危機の高まりが、安倍政権の軍事路線に頼りがいを感じさせる――。そんな調子で国民の気持ちがフッと動いたことにより、支持率は急回復したわけだ。
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安倍首相は率先して危機をあおり、政治利用しているフシもある。
露骨だったのは6回目の核実験を実施した3日。日曜にもかかわらず、首相は1日3回も記者団の前に現れ、「差し迫った脅威だ」などと神妙に語り、緊迫ムードを際立たせていた。
このような風潮が続くのは実に危うい。
既に自民党内では北朝鮮危機に便乗して、「抑止力」という名目で日本の軍事力アップを進める動きが活発化しているからだ。
次期首相のトップに名前が挙がる石破元幹事長は、非核三原則のうち「持ち込ませず」の見直しに言及。米軍の戦術核兵器の国内配備について、議論を始めるべきだと訴えている。
菅官房長官も12日付の読売のインタビューに「北朝鮮を巡る現場の実態を見ると、政権交代してから、特定秘密保護法、平和安全法制(安保関連法)の二つを成立させて本当に良かったと思う」と答えた。
さらに菅長官は「日米同盟は一層強固になり、抑止力の強化につながった」と豪語していたから、たまらない。
解釈改憲の荒業で平和憲法を踏みにじりながら、「抑止力が強まればいい」と言わんばかり。
今の自民党は憲法以上に日米同盟が最優先。この調子だと、9条見直しの流れが強まるのも時間の問題である。
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こんな軍事一辺倒の政権が、教育無償化を打ち出しているのも心配だ。国の財源で無償化を賄うようになれば、教育の方向性に関する政権の関与は強まっていく。
いずれ教科書の中身まで国が定める戦前型の教育に戻ってしまうのではないか。
この先も野党が無力なら、自民1強時代の最大の弊害が起こってしまうのではないか。つまり軍国化の流れが止まらないという不安にさいなまれているのだ。