「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・200億円

2010-11-21 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」

「ぷらっとウオーク」                   情報プラットフォーム、No.200、5(2004)
{200億円}

≪青色発光ダイオード≫
写真:日亜化学工業(株)
 

出典: 青色発光ダイオード(LED)」の最新記事


 特許などの知的財産権は、創作に対して期間限定の独占排他権を認める制度である。「新規性」と「進歩性」はオリジナリティ(創造性)に関わる必要条件である。

 一方、「有用性」と「開示性」は活力に溢れる社会形成に期待する十分条件と見ることができる。
 青色発光ダイオード(LED)の判決は大きな話題となった。中村修二氏が発明の対価として得た社内報奨金はあまりに低すぎるとして、東京地裁は200億円の支払いを日亜化学に命じた。文藝春秋に掲載された「200億円判決」の評論では、会社側の処遇や事業への貢献度などを勘案して、2億円が相当と試算している。副題の「リスクへの挑戦と発明の対価を混同してはならない」は特許要件の二面性を対比していることは評価できるが、両者をハカリに乗せて議論をするほど簡単な問題ではないように思う。

 まず、「大量生産される窒化ガリウム・青色LEDの製造法は最初の発明とは異なっているので、中村氏の実質的な貢献度は低い。」とする主張は成り立たない。アメリカの裁判では、請求範囲を規定する文言とは無関係に、別な製造方法であっても実質的に同じモノであれば、特許侵害と判断される場合が多いのである。同じものと見なすとする考え方を「均等論」と呼ぶ。特許権者に極めて有利な概念である。東京地裁の判断はこれに準拠したものと思われる。

  つぎに、「事業化・商品化はさまざまなリスクを伴う。社長の決断あればこそ今がある。」はそのとおりである。しかし、社員の発明に対する対価も事業化のリスクの一つであると共に、企業が特許を取得すれば有用化・事業化・製品化の社会的義務が発生すると考えるべきである。自社での事業化が決断ならば、特許流通システムに乗せて、使い手を探し出して利益を確保することも決断である。特許も、人材も、機能も、システムも、企業本体もすべてが商品であり、売買や投資の対象である。商品の値段は原価計算で決まるものではない。高値で売り抜けるのも決断である。

 日本工学アカデミーの西沢潤一会長が示した見解、「発明が0から1への挑戦ならば、その1を100倍、10億倍にする新規事業も挑戦である。0を10億倍しても0、逆に1に0を掛けても0である」は特許要件の二面性を的確に示したコメントである。

 日本もアンチパテント(特許軽視)から、プロパテント(特許重視)の時代に変わりつつある。因みに4月18日は発明の日である。

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

 高知県香美郡土佐山田町植718   Tel 0887-52-5154



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