「高知ファンクラブ」 の連載記事集1

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鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」 ・・・生命と文明の源、水と鉄に例外の性質

2010-11-24 | 鈴木朝夫の「ぷらっとウオーク」


 「ぷらっとウオーク」                  情報プラットフォーム、No.242、11(2007)
{生命と文明の源、水と鉄に例外の性質}


 「水」の温度を下げると、0℃で氷になることは誰でも知っている。この時に体積が増加する。「鉄」の温度を下げると、910℃でfcc(面心立方)固体鉄からbcc(体心立方)固体鉄へと変態し、この時に体積が増加する。温度の低下とともに、体積が減少するのが通常の物質である。

「水」と「鉄」はこの点で例外的挙動をする物質なのである。「水」は温度の低下に従って、水蒸気→水⇒氷と変態し、「鉄」は蒸気鉄→溶融鉄→bcc固体鉄→fcc固体鉄⇒bcc固体鉄と変態する。「→」は粗な構造からより密な構造への通常の変化を示し、「⇒」は前述の例外的な変化を示す。fcc固体鉄から温度の低下で再びbcc固体鉄が出現することが「鉄」の異常なのである。これは「鉄」の磁性と深く関連している。


  「水」が例外物質でなければ、氷が水に浮かないならば、氷は海底に堆積し続け、太陽に照らされる海面は沸騰しているだろう。この様な過酷な海で生命の発生があったとは考え難い。

また、地球規模の物質の大循環が起こるとは考えられない。「水」が例外的な物質だからこそ、生命が発生し、進化して来た。そして、その生命活動が今の地球環境を作り上げた。それがなければ、地球は金星のような大気のままだったに違いない。


  「鉄」に例外的な性質があるからこそ、文明が勃興し、技術の発展が可能となったのである。炭素を固溶したfcc鉄を高温から水中に急冷すれば、結晶格子がズレて過剰な炭素を含んだままでbcc鉄に変態する。

これが焼入れ硬化である。「鉄」が例外物質でなければ、硬く切れ味の良い刃物はこの世に存在せず、また人類は靱性と強さの絶妙のバランスを自在に作り出せる材料を手にすることはなかった。「鉄」が金、銀、銅のような並の金属であったならば、船も鉄道も車も、機械も、橋も高層ビルもあり得ない。文明は青銅器時代のままで止まっていただろう。


  「水」と「二酸化炭素」を原材料、太陽光をエネルギー源、葉緑素を触媒として、「炭水化物」などの栄養素を生産しているのが植物である。この光合成では、必然的に生成する「酸素」を廃棄物として放出する。また、光合成を行う葉の温度を一定に保つために「水」を水蒸気として蒸散させて廃熱している。

この地球という星に葉緑体を持つ藻類が発生して以来、大気の酸素濃度を増加させるにつれて、海水中に溶けていた鉄分は「酸化鉄」となり海底に沈殿・堆積していった。これが鉄鉱石の由来である。


  「鉄」は、溶鉱炉で「酸化鉄」を植物が生産した化石燃料の「炭素」で還元して得られる。必要とする高温は「炭素」と吹き込んだ空気中の「酸素」による燃焼で得られる。排出物は「二酸化炭素」、「鉱滓」、そして余熱の除去に使った温廃「水」である。


  「水」はこの様に熱の吸収・蓄積の能力が高く、また多種類の物質を溶かし込む許容性も大きい。これも地球を生命のゆりかごと名付けるに相応しい環境を作り出す一因になっている。多量に存在することも「水」と「鉄」の共通点であり、現代社会を構築する原動力になっている。しかし、今、その人類が、あらゆる資源を浪費して加速度的に環境を変えていることが地球・水の惑星の危機なのである。 

     
  注:佐川町で「水の国際会議」(11/26~11/30)が開かれることから、高知新聞に「水その不思議な世界」が連載されている。これは9/24掲載の(39)を基にしている。

 

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鈴木朝夫  s-tomoo@diary.ocn.ne.jp

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